【専門職がCOVID-19の偽情報を広めるときの規制当局の規律】転載/カナダ薬剤師会雑誌情報

【専門職がCOVID-19の偽情報を広めるときの規制当局の規律】転載/カナダ薬剤師会雑誌情報

【2022.07.19配信】カナダ薬剤師会雑誌「Canadian Pharmacists Journal 」(CPJ)」は、専門職がCOVID-19の偽情報を広めるときの規制当局の規律に関して論説を掲載した。同誌はカナダ薬剤師会の雑誌で内容はCPJ編集部が決定し、出版印刷をSage社が行っているとみられる。今回、同誌のInternational Editorを務める山村重雄氏(城西国際大学 薬学部 医療薬学科 教授)の協力、翻訳を得て、転載する。なお、論説コーナーは、普段は編集委員長のRoss Tsuyuki氏が主に書いているが、今回はゲストでZubin Austin氏が執筆している。氏はトロント大学の教授で社会薬学の権威。


【論説】臨床医がCOVID-19の誤解・偽情報を広めるときの規制当局の規律

 薬局の規制当局は、自主規制を行っている専門職(Self-regulating profession)として、薬剤師による偽情報の流布を阻止するために迅速に行動し、このような行動を糾弾し抑止するために断固とした制裁を加えなければなりません。

出典:カナダ薬剤師会 雑誌情報(CPJRPC:Canadian Pharmacists Journal Volume 155 Issue 2, March/April 2022)2022/2
https://journals.sagepub.com/toc/cphc/155/2

執筆者:Ai-Leng Foong-Reichert, Kelly A. Grindrod, Sherilyn K.D. Houle, Zubin Austin

 COVID-19のパンデミックは、紛れもなく薬局での業務を変え、情報過多を招き、医療における誤情報・偽情報についての話題が表面化しました(ここで、誤情報(misinformation)とは害を与えることを意図しない誤った情報、偽情報(disinformation)とは有害を引き起こすために故意に作られた誤った情報である)(訳者注:一般に誤情報とは、見出しと中身が異なることでミスリーディングを誘う情報、偽情報は虚偽の内容、捏造などをさしています)。誤情報・偽情報との戦いは新しいことではありませんが、パンデミックの観点からは前例のないことです。歴史的に見ると、専門家が規制に関する法律を制定するよう働きかけた理由のひとつは、特定の職業を他の職業よりも合法的(訳者注;その職業を法的に定義する)にすることでした。誇大広告をするようなホメオパス(ホメオパチーの提供者)、ナチュロパス(自然療法士)、カイロプラクターといった代替医療従事者を排除し、医師、外科医、歯科医、薬剤師といった科学的根拠に基づく医療従事者を優遇しようとしたのです。1870年にケベック州、1871年にオンタリオ州で薬剤師が初めて自主規制の職業(訳者注:Self-regulating profession:個人のことよりも業務を優先させる職業)となったとき、規制によって薬剤師になることが制限され、提供されるヘルスケアの質を向上させることで国民を保護するために開局要件が導入されました。今日でも、国民の保護は医療専門家規制当局の最優先の目標であり続けていますが、規制当局がCOVID-19関連の誤情報/偽情報を広める薬剤師にどのように対処しているかは不明です。

 COVID-19に関連の誤情報/偽情報が広まり続けると、深刻な被害と死亡が発生します。Lancet Commission on Vaccine Refusal, Acceptance and Demandによると、米国の特定の州におけるワクチン接種率の低さは、政治とソーシャルメディアで目立っている反ワクチン団体からの「組織的な武器化された健康コミュニケーション」によって煽られています。ワクチン接種率が低いことやCOVID-19の再流行や変異株の出現により、パンデミックはさらに進行し、「家族や地域社会に対するパンデミックの社会的・経済的影響を長引かせる」ことになるでしょう。したがって、規制当局は臨床家が誤情報/偽情報を広めることに対して明確な姿勢を示し、薬剤師やその他の臨床家が本誌の前号で述べたように誤情報/偽情報に対抗することが極めて重要です。

 本稿執筆時点では、COVID-19に関連する行為について、カナダの薬剤師に対する懲戒事例は公表されていませんが、他の国では事例があります。ユタ州の薬剤師は、COVID-19の予防接種証明書類に不正に記入し、罰金刑を受けて薬剤師を辞職しました。また、ユタ州の薬剤師は、FDAの承認を受けていない製造業者を通じて550kgのヒドロキシクロロキンとクロロキンを違法に輸入し、裁判所から判決を受け、現在は規制当局の保護観察下にあり、免許に条件が付されています。これに対し、意図せず偽情報を流したとして処分を受けた薬剤師もいます。ニュージーランドの薬剤師は、COVID-19の偽情報誌を他のパンフレットと一緒に薬局のカウンターに置いていたため、知らずに配布し、監督官庁から警告を受けています。これらの例は、意図的な悪質な違法行為がある一方で、意図しない偽情報の拡散があることを物語っています。この社説では、意図的な偽情報の拡散に焦点を当てることにします。

カナダの薬剤師の事例は公表されていませんが、医師の懲戒事例が偽情報の流布に対する規制当局の対応例として公表されています。2021年3月、オンタリオ州の小児科医が、ロックダウンやワクチンは必要ないと主張するツイートを行ったとして処分を受け、同医師は規制当局から警告を受けました。ソーシャルメディア上で偽情報を拡散していたオンタリオ州の家庭医は、COVID-19ワクチンの投与、イベルメクチンなどCOVID-19に承認されていない薬剤の処方、COVID-19検査、フェイスマスク、ワクチン接種の免除を行うことを禁じられました。規制当局の懲戒報告書によると、彼は"COVID-19の予防接種、治療、公衆衛生対策について誤解を招く、誤ったまたは扇動的な発言をした"、"彼とのコミュニケーションが十分できていない"としてさらに調査を受けています。しかし、彼のツイートによると、彼は悪びれていません。このオンタリオ州の医師は2人とも、それぞれ46,000人と124,000人のTwitterフォロワーに影響を与え続けています。ワクチンは危険であり、COVID-19はインフルエンザより悪くないと述べたブリティッシュコロンビア州の医師は、懲戒を受けてCOVID-19に関する発言を禁止されました。この医師に対する懲戒も効果がないようで、言論の自由の権利に関して規制当局と法廷闘争中です。

 カナダでは、表現の自由の権利は「権利と自由の憲章」で保護されています。しかし、表現の自由と偽情報の普及は異なります。オンタリオ州医師会(College of Physicians and Surgeons of Ontario)は、オンラインで閲覧できる懲戒報告書の中で、言論の自由を制限したり公共政策への批判を抑えたりするのではなく、ソーシャルメディアの投稿を含む医療従事者の発言は、根拠に基づくものでなければならないと明言しています。医療従事者の発言が一般市民に届くと、その責任はさらに重くなります。例えば、薬剤師が誤情報を含む記事を薬剤師専用のソーシャルメディアグループに投稿して議論を起こし、フィードバックを受け、仲間から学ぶためであれば、その文脈を考えると適切であると思われます。しかし、薬剤師が同じ記事を個人のソーシャルメディアプロフィールや薬局のFacebookページで共有した場合、医療提供者として行動しているため、誤った情報を広めることになります。これらの医師の場合、オンライン上で医師を名乗っているため、彼らが(ソーシャルメディア上で)共有した偽情報は証明されたものではないが、一般の人々には医療アドバイスとして解釈される可能性があります。この判決で、州医師会は、彼らの主張を裏付ける証拠を提示しないことで、「この発言を読んだ一般市民の一定割合が、医師の指導に基づいて行動しているという安心感からワクチンの接種を拒否することを決定したとしても、それは予想できるし考えられることだ」と強調しました。このため、医師会の委員会は、被告がパンデミックのさなかにソーシャルメディア上でこのような発言をしたことは、無責任であり、公衆衛生に対する潜在的リスクであると考えています。

 教授であり医師であるリチャード・フリードマン博士は、医師が行う助言は、誤情報/偽情報を作成することや共有することを含めて医療行為の一部であり、規制当局による調査および免許取消を含む制裁の対象となるべきだと説明しています。彼は、「医師がその専門職の言葉と権威を利用して誤った医療情報を広めるのは、単に自分の誤った意見を表明しているのではない。むしろ、言論の自由と医療行為の境界線を越えており、この例では医療過誤に近いものだ」と主張しています。薬剤師が誤情報/偽情報を信じて広めた場合、患者や社会に害を及ぼし、規制当局から求められる臨床能力の水準以下で業務を行っているとみなされる可能性があります。

 カナダの医師規制当局がメンバーを特定し、懲戒処分を行っているのは明らかですが、薬学では同様の事例があるものの懲戒処分の公表はありません。例えば、アルバータ州の医師は、患者にイベルメクチンを処方して治療したことで、アルバータ州保健サービスおよび規制当局から調査を受けています。しかし、我々の知る限り、農産物販売店からイベルメクチンを調達した薬剤師は薬局規制当局から調査を受けておらず、医師について報じたニュース記事には薬剤師への影響について触れられていません。規制当局は、誤情報/偽情報の拡散や特定の実証されていない治療法(ヒドロキシクロロキンやイベルメクチンなど)への関与を非難する声明や指導文書を発表していますが、薬局規制当局はこれ以上の行動をとっていません。

 薬局の規制当局は、自主規制を行っている専門職(Self-regulating profession)として、薬剤師による偽情報の流布を阻止するために迅速に行動し、このような行動を糾弾し抑止するために断固とした制裁を加えなければなりません。規制当局には市民を守る責任がありますが、不正な薬剤師が何の影響もなく偽情報を広めることを許せば、市民を害する可能性が現実のものとなってしまいます。薬剤師による偽情報の拡散は、医師に対するものと同じように、規制当局によって公表される必要があります。国民にはそれ以上のことをする資格はないのです。

資金提供:
Ai-Leng Foong-Reichertは、カナダ健康研究所から資金提供を受けています。

利害の対立:
著者には、宣言する利害の対立はありません。

この記事のライター

関連するキーワード


コロナ

関連する投稿


「薬局」の倒産数、コロナ禍が落ち着き減少へ/2022年度は15件/東京商工リサーチ調べ

「薬局」の倒産数、コロナ禍が落ち着き減少へ/2022年度は15件/東京商工リサーチ調べ

【2023.05.23配信】東京商工リサーチは5月23日、「調剤薬局」の倒産件数の調査結果を公表した。コロナ禍で過去最多となる23件を記録した2021年度からは減少し2022年度は15件だった。同社は「今後はオンライン化で淘汰が加速も」と分析している。


【オンライン医療相談や診察】コロナ5類後の継続意向は56.8%/内閣府調査

【オンライン医療相談や診察】コロナ5類後の継続意向は56.8%/内閣府調査

【2023.04.20配信】内閣府は4月19日、「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」を公表した。これまでにも公表しているもので前回は2022年7月22日の公表。今回は「オンライン医療相談や診察」のコロナ5類後の継続意向は56.8%だった。


【厚労省】コロナ5類移行に伴う調剤報酬の取り扱いで事務連絡発出/オンライン服薬指導の“0410通知”のコロナ特例は令和5年7月31日で終了

【厚労省】コロナ5類移行に伴う調剤報酬の取り扱いで事務連絡発出/オンライン服薬指導の“0410通知”のコロナ特例は令和5年7月31日で終了

【2023.04.03配信】厚生労働省は3月31日、事務連絡「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて」を発出した。調剤報酬関連では、コロナ患者への調剤に関わるものでは「在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料1」(500 点)を継続するほか、店頭でのコロナ薬調剤では「服薬管理指導料」について2倍とする内容を記載。また高齢者施設においても「在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料1」が算定できる内容。加えて、オンライン服薬指導については、いわゆる“0410通知”の特例を令和5年7月 31 日をもって終了するとした。


【パキロビッド®パック】3月22日から一般流通へ/国購入分は3月28日までの発注で配分終了

【パキロビッド®パック】3月22日から一般流通へ/国購入分は3月28日までの発注で配分終了

【2023.03.15配信】厚生労働省は3月15日、事務連絡「新型コロナウイルス感染症における経口抗ウイルス薬(パキロビッド®パック)の薬価収載に伴う医療機関及び薬局への配分等について(その2)(周知)」を発出。これまで国による購入・配分としていた同剤について3月22日から一般流通が開始されることに伴い、国購入分の配分は3月28日15時までの発注をもって終了とするとしている。


【厚労省中医協】コロナ特例、調剤の緊急薬剤配送の算定は継続評価へ/点数は未定

【厚労省中医協】コロナ特例、調剤の緊急薬剤配送の算定は継続評価へ/点数は未定

【2023.03.08配信】厚生労働省は3月8日、中央社会保険医療協議会 総会を開き、「新型コロナウイルス感染症の診療報酬上の取扱い」を議論した。この中で調剤における、「自宅・宿泊療養患者に緊急に薬剤を配送した上での対面/電話等による服薬指導(対面500点、電話等200点)」については継続して評価する方針が示され、概ね了承された。ただし、点数については言及はなく、減点の可能性はありそうだ。近く、とりまとめを行う見込み。


最新の投稿


【日登協】組織名変更、「日本医薬品登録販売者会」/職能団体としての位置づけを強化

【日登協】組織名変更、「日本医薬品登録販売者会」/職能団体としての位置づけを強化

【2024.06.14配信】日本医薬品登録販売者協会は6月14日に会見を開き、組織名を「日本医薬品登録販売者会」に変更すると公表した。職能団体としての位置づけを強化する。略称は「日登会」とする。


【日薬次期理事案】書面決議は可決、総会での信任投票へ/飯島氏、徳吉氏を削除した候補者議案の書面決議

【日薬次期理事案】書面決議は可決、総会での信任投票へ/飯島氏、徳吉氏を削除した候補者議案の書面決議

【2024.06.14配信】日本薬剤師会の次期理事候補者変更案について行われていた現執行部による書面決議が、このほど全員賛成で承認された。このあと、30日の総会で代議員による信任投票が行われる見通し。


【中医協】賃上げにかかる調査・検証について把握方法を提示

【中医協】賃上げにかかる調査・検証について把握方法を提示

【2024.06.14配信】厚生労働省は6月14日、中央社会保険医療協議会(中医協)診療報酬調査専門組織(入院・外来医療等の調査・評価分科会)を開催した。その中で賃上げにかかる調査・検証について把握方法を提示した。


【医薬品供給不安】安定確保薬の定期的な見直しを/日本医学会連合が提言

【医薬品供給不安】安定確保薬の定期的な見直しを/日本医学会連合が提言

【2024.06.14配信】日本医学会連合は6月12日、厚労省に「医薬品安定供給に関する提言を提出した。我が国の健康に関する安全保障上、国民の生命を守るため、切れ目のない医療供給のために必要で、安定確保について特に配慮が必要とされる医薬品である「安定確保医薬品」については、リストの定期的な見直しとその周知、政策への反映を求めている。


【チェーンドラッグストア協会】「調剤報酬委員会」常設に

【チェーンドラッグストア協会】「調剤報酬委員会」常設に

【2024.06.13配信】日本チェーンドラッグストア協会は6月12日、通常総会を開き、2024年度の組織人事並びに事業計画が承認された。


ランキング


>>総合人気ランキング