同社の「2022年度(4-3月)の調剤薬局の倒産動向調査」の内容は以下の通り。
2021年度に過去最多を記録した「調剤薬局」の倒産が、2022年度は15件と減少に転じた。2021年度の23件から、2022年度は34.7%減と大幅に減少した。コロナ禍で広がった受診控えが一転し、感染者数の減少などで戻り、処方箋枚数が回復したことが大きい。だが、電子処方箋などのデジタル化やネット注文、在宅調剤への対応、ドラッグストアを含めた大手薬局との競合はさらに激しさを増しており、中小の調剤薬局の淘汰はこれから本番を迎える可能性が高まっている。
2022年度の「調剤薬局」の倒産は15件(前年度比34.7%減)と大幅に減少した。これはコロナ禍で広がった受診控えが落ち着き、処方箋枚数が戻って調剤医療費が回復したことが大きい。
しかし、楽観できる状況にはない。大手薬局は、出店攻勢をかけM&Aも加速している。厚生労働省によると、2021年度の薬局数は6万1,791施設で、店舗数はコンビニエンスストアよりも多い。
また、これまでの薬中心から薬局薬剤師業務や薬局の機能、効率性に応じた評価の見直し、在宅業務を推進し調剤後の状況確認、災害時などの地域支援、患者へのオンライン服薬指導などのICT活用など、患者中心とした対人業務への変化も進みつつある。
2022年度の「調剤薬局」の倒産は、資本金1千万円未満が93.3%、負債1億円未満が73.3%、従業員数(正社員)10人未満が86.6%と、ほとんど小・零細規模の事業者が占めている。コロナ禍で経営が疲弊し、デジタル化投資や薬剤師の採用が厳しい事業者が多い。
地域に根ざした「調剤薬局」は、なじみ客との丁寧な服薬指導が強みだ。だが、今後求められる在宅調剤やオンライン服薬指導、処方薬のネット注文、災害・感染症発生時などの体制整備などへの対応は投資負担が重く後手に回っている。人手不足(薬剤師不足)も深刻で、小規模の調剤薬局は大きな変革を迫られている。
なお、本調査は、日本標準産業分類(小分類)の「調剤薬局」を抽出し、2022年度の倒産を集計、分析した。
従業員数別では4人未満が11件(73.3%)で最多、小規模倒産が目立つ
2022年度の「調剤薬局」の倒産は15件(前年度比34.7%減)、負債総額は10億7,200万円(同57.2%減)で、件数、負債ともに前年度から大幅に減少した。
コロナ禍前までは大手薬局との競争激化や薬剤師不足などで、「調剤薬局」の倒産は年間10件程度発生していた。そこにコロナ禍に見舞われ、感染予防や体調管理の強化などで病院の受診控えが広がり、処方箋の枚数が急減した。このため、売上が減少した調剤薬局の倒産が相次ぎ、2020年度、2021年度は2年連続で調査を開始した2003年度以降、最多件数を更新していた。
■原因別: 「販売不振」が約7割
原因別では、販売不振が10件(前年度比37.5%減)と全体の約7割を占めた。処方箋の枚数が回復したとはいえ、大手や同業との激しい競争が続いている。次いで、偶発的原因など「その他」は2件、「放漫経営」と赤字累積の「既往のシワ寄せ」、「信用性低下」が各1件だった。
■負債額別: 7割が負債1億円未満の小規模倒産
負債額別では、最多が1千万円以上5千万円未満で6件(構成比40.0%、前年度比57.1%減)。続いて、5千万円以上1億円未満が5件(同33.3%、同25.0%増)、1億円以上5億円未満が4件(同26.6%、前年度同数)で、5億円以上は発生しなかった。
■資本金別ほか: 小規模薬局が大半を占める
資本金別では、最多が1百万円以上5百万円未満で9件(構成比60.0%、前年度比18.1%減)。次いで、5百万円以上1千万円未満が4件(同26.6%、前年度同数)だった。従業員数(正社員)別では、4人未満が11件(同73.3%、前年度比42.1%減)と7割を占め、小規模倒産が目立った。