協議会の冒頭で、日本薬剤師会の渡邊大記常務理事は、「薬局ではこれまで患者さんから聞き取る情報に依存するところが大きく、患者さんの理解の程度や主観により必ずしも十分な情報が得られないこともあった。基盤整備による情報共有がなされることは大変大きな意味を持っている」と述べた。
政府は令和5年3月末までに、おおむね全ての医療機関・薬局での導入を目指すという目標を掲げているが、5月1日時点でオンライン資格確認に必要な顔認証付きカードリーダーの申込は約6割(約13万施設)となっており、引き続き導入の加速化に向けた取り組みや支援が必要な状況だ。
オンライン資格確認の導入が進めば、患者の資格情報や薬剤情報を全国の医療機関で正確に把握することが可能となり、安全・安心で質の高い医療を提供していくための基盤となる。日本薬剤師会でも普及促進のため、これまでに広報活動や説明会、質問対応など様々な取り組みを行ってきた。
しかし薬局等の現場からは「顔認証付きカードリーダーを設置したいが業者の予定が埋まっており順番待ちが続いている」「導入するためにLAN 等の改築工事が必要となり、薬局が自腹を切って費用を負担している状態。また、導入後もランニングコストや管理運営や修繕等に係るコスト、レセコン補修費用が追加で発生してくるため、どうしても経営上の懸念がある」などの声が上がってきている。
都道府県医師会でも「イニシャルコストが補助金の上限額を超える場合がある」「セキュリティ対策(サイバー攻撃)が不安」「情報漏洩があった場合の責任の所在が心配」「問い合わせ対応等(操作説明等)の増加が不安」「保険証とマイナンバーカードが混在すると却って面倒である」「エラーメッセージが出た時にSEに対処法を聞くが、SEもまだ分からないことが多く、すぐに解決しない」など多くの意見が寄せられている。
また保険証代わりとしてのマイナンバーカードの普及も遅れており、窓口負担額の増加ばかりがクローズアップされているという状況も、普及が進まない要因のひとつとなっているようだ。
厚生労働省は、医療機関・薬局に対して説明会やメール、架電などにより導入支援や働きかけを行っていくとともに、システム事業者に対しては医療機関・薬局への支援状況を共有しつつ、営業の強化等を働きかけていくとしている。
日本薬剤師会でも、薬局に対しての周知活動と共に、薬局を通じた国民への広報活動に資するツールや手段についても併せて検討していくという。

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