【規制改革会議WG】答申への項目案に薬剤調製の外部委託/委託元薬局薬剤師の保護やプラットフォーマーへの対策を記載

【規制改革会議WG】答申への項目案に薬剤調製の外部委託/委託元薬局薬剤師の保護やプラットフォーマーへの対策を記載

【2022.04.28配信】政府の規制改革推進会議は4月27日、「医療・介護・感染症対策ワーキング・グループ」(WG)を開催。今夏に公表が予定されている「規制改革推進に関する答申」に向けた検討項目案を提示した。薬剤調製の外部委託を可能とすることを記載した。


 「医療 DX を支える医療関係者の専門能力の最大発揮」の項目を新設し、「薬剤師の地域における対人業務の強化(対物業務の効率化)」として、薬剤調製の外部委託を可能にすることを検討項目案としている。以下のように記載した。

 “薬剤師の薬学的専門性を発揮した対人業務を円滑に行いうる環境を整備し、併せて、対物業務 の効率性・安全性を向上させる観点から、薬局における調剤業務のうちニーズを踏まえた一定 の範囲の調製を、当該薬局の判断により、外部に委託することを可能とすることについてどう考えるか。”

 また、その際の留意事項として以下を例示した。
(例)
・外部に委託することの対象とする調製の範囲(
・委託先の要件
・処方箋を応需した委託元と委託先の責任分担関係。委託により調製された薬剤の鑑査の方法
・委託元の薬剤師が故なく刑事責任を負わないことの回避・明確化

 委託元薬局薬剤師の保護の観点に触れていることは特徴的。薬局業界に配慮するような文言はほかにも記載されており、プラットフォーマーによる独占への対策を検討する必要性を記載している。以下のように記載している。

 “薬局業務におけるデジタル技術の活用が深化していくことが予想されることを踏まえ、薬局業務や関連する基盤的な業務(仕入れ、配送を含む)について、プラットフ ォーマーなど特定の事業者による当該市場又は隣接市場において独寡占状況が発生し、内部補助等により不当な結果が生じることがないよう、必要に応じて、対策を検討していく必要があるのではないか。”

 他方で、距離制限には否定的な見解を示した。
 “委託先と委託元の間において距離制限を設けることはデジタル時代にはそぐわないのではない か。災害時等に備えて地域における供給拠点を確保する必要があるとの考え方についてどう考 えるか。”

有料版「ドラビズ for Pharmacy」では今後のポイントを詳しく解説している。
■「ドラビズ for Pharmacy」概要について
https://www.dgs-on-line.com/boards/5

編集部コメント/「調剤の外部委託」を「薬剤調製の外部委託」の表現にしたい

 編集部では、今回の検討項目案で「調剤の外部委託」と端的な表現は用いず、「薬局における調剤業務のうちニーズを踏まえた一定の範囲の調製」と丁寧な表現を用いていることに着目した。

 「調剤の外部委託」という表現をめぐっては、厚労省の「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」の場で、日本薬剤師会常務理事の橋場元氏が、調剤という言葉の安易な使用に懸念を表明してきた。
 
 今春の調剤報酬改定でも、「患者情報の分析や評価」「処方内容の薬学的分析」「調剤設計」などの薬剤師の薬学的知見に基づく業務を「調剤管理料」とし、その上で行う「薬剤の取り揃え」「最終監査」に関して「薬剤調製料」と整理している。さらに、その後の服薬指導や患者へ向けた継続的把握・指導を「服薬管理指導料」とした。これら一連の流れが「調剤」であり、「調剤の外部委託」はそもそもあり得ない。

 これを機に、今後、関連する業界が「調剤」という言葉を安易に使用しないように配慮していくことが必要ではないだろうか。「調剤機器」などもそうで、「薬剤調製機器」などの表現に統一するべきだろう。報道で踊る「調剤ロボット」などの表現も「薬剤調製ロボット」が適切である。

 言葉の使い方は、取るに足らない議論だと考える向きもあるかもしれない。しかし、調剤は薬剤師法第1条に記載された薬剤師の独占業務であり、それによって国民の健康な生活を確保することが使命だと明記されている。
 こうした理念を軽視することは、調剤に関わっているすべての業界の荒廃にもつながるのではないだろうか。

この記事のライター

関連する投稿


【規制改革WG】事前処方・調剤の質疑への回答公表/在宅医療における円滑な薬物治療の提供で

【規制改革WG】事前処方・調剤の質疑への回答公表/在宅医療における円滑な薬物治療の提供で

【2025.05.01配信】規制改革推進会議「健康・医療・介護ワーキング・グループ(第5回)」が5月1日、開催された。その中で令和7年3月14日に開催された「第2回健康・医療・介護 WG」に関する委員・専門委員からの追加質疑・意見に対する厚生労働省の回答を公表した。


【規制改革推進会議WG】訪看ステーションへの薬剤配置、輸液以外も再検討を/日本訪問看護財団

【規制改革推進会議WG】訪看ステーションへの薬剤配置、輸液以外も再検討を/日本訪問看護財団

【2025.03.14配信】規制改革推進会議「健康・医療・介護ワーキング・グループ」が3月14日に開かれた。


【規制改革推進会議WG】提案「調剤前に薬局で登録医師の確認が必要な医薬品の確認方法の統一」

【規制改革推進会議WG】提案「調剤前に薬局で登録医師の確認が必要な医薬品の確認方法の統一」

【2025.03.06配信】3月6日に規制改革推進会議「健康・医療・介護ワーキング・グループ」が開催された。その中で、規制改革ホットラインの提案事項、およびそれに対する令和6年10月18日から令和6年12月16日までの関係省庁の回答、加えてWGとしての処理方針が報告された。


【規制改革】薬局の処方箋40枚規定、「再検討」を厚労省に要望

【規制改革】薬局の処方箋40枚規定、「再検討」を厚労省に要望

【2024.09.30配信】内閣府規制改革推進会議「第1回 健康・医療・介護ワーキング・グループ」が9月30日に開かれた。この中で、規制改革ホットライン処理方針 (令和6年3月16日から令和6年7月19日までの回答)が報告され、「薬局に係る40枚規制」について 厚労省に再検討を要請するとした。厚労省サイドは「検討を予定」と回答しつつも、「慎重に検討する必要がある」としている。


【厚労省】調剤業務の一部外部委託でQ&A発出

【厚労省】調剤業務の一部外部委託でQ&A発出

【2024.05.10配信】厚生労働省は5月9日、「国家戦略特別区域調剤業務一部委託事業の実施要領に関する質疑応答集(Q&A)」を発出した。


最新の投稿


【大木ヘルスケアHD】“推し活”キーに医薬品需要に気付き/目薬や喉ケア/秋冬商品提案で

【大木ヘルスケアHD】“推し活”キーに医薬品需要に気付き/目薬や喉ケア/秋冬商品提案で

【2025.06.15配信】ヘルスケア卸大手の大木ヘルスケアホールディングスは6月11日に、事業部説明会を開催した。来る6月17日(火)~6月18日(水)にTRC 東京流通センターで開く「2025OHKI秋冬用カテゴリー提案商談会2025 年 OHKI 秋冬用カテゴリー提案商談会」の事前説明会の位置付け。OTC医薬品に関しては、“推し活”市場の拡大を背景に、“推し活”をきっかけに需要に気付きを与える提案を実施することを説明した。


【骨太方針_閣議決定】「高齢化の伸び」に経済・物価動向の増加分を加算

【骨太方針_閣議決定】「高齢化の伸び」に経済・物価動向の増加分を加算

【2025.06.13配信】政府は6月13日、「経済財政運営と改革の基本方針 2025」、いわゆる骨太方針を閣議決定した。医療・介護に関連しては、「高齢化による増加分に相当する伸びにこうした経済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分を加算する」と記載した。これまでは、社会保障関係費の伸びを高齢化の範囲内に抑える方針がとられてきた。薬剤師で参議院議員の神谷政幸氏はXで「税収増を踏まえた経営の安定化や確実な賃上げに繋がる対応がついに反映」と投稿。医療介護業界の声が届いたとの考えを示唆した。


【奈良県薬剤師会】「健康ハートの日 2025」に協賛/気になる“nara”測ろう血圧ポスター作成

【奈良県薬剤師会】「健康ハートの日 2025」に協賛/気になる“nara”測ろう血圧ポスター作成

【2025.06.12配信】奈良県薬剤師会(後岡伸爾会長)は、「健康ハートの日 2025」に協賛する。


【マイナ保険証】活用で「多重受診・過剰処方」発見効果/日本保険薬局協会調査

【マイナ保険証】活用で「多重受診・過剰処方」発見効果/日本保険薬局協会調査

【2025.06.12配信】日本保険薬局協会は6月12日に定例会見を開き、「保険薬局における医療DX活用と業務貢献等の実態調査」の結果を説明した。「多重受診・過剰処方」の発見など効果がみられた。


【日本医師会】自公維3党合意に見解公表/病床削減と医療DXに「総論賛同」

【日本医師会】自公維3党合意に見解公表/病床削減と医療DXに「総論賛同」

【2025.06.10配信】日本医師会は6月9日、自由民主党、公明党、日本維新の会の3党合意についての見解を公表した。