「生産量の多い日医工が立ち直らないと後発薬企業はドミノ倒しになるのではないか」
日医工とメディパルHDの業務資本提携について、渡辺社長は、「目的は国民の皆様に安心な後発医薬品を安定的に供給する体制を整えること。当社の流通インフラと日医工の製造販売のインフラを連携させ、新しい生産流通モデルを構築したい」と述べた。「後発医薬品は医療に欠かせない、国民の財産であると思っている。品質のよい医薬品を国民に届けられるよう両者で取り組みを進めている。より強固な関係構築のために中長期的なパートナーシップが重要と判断し、日医工の株式を取得した」(渡辺社長)とした。
メディパルHDは第三者割当増資を引き受け、普通株式622万株を約52億円で取得、取得後の持ち株比率は9.9%となっている。
現在、両者のトップマネジメントが集うステアリングコミッティのもと、両者の専門性の高い人材を中心に「営業分科会」「生産分科会」「物流分科会」の3つの分科会を設置し、「生産品質」「計画発注」「最適な営業体制」「効率的なサプライチェーンの構築」の4つの課題解決を目指して具体的な検討を進めているという。
アナリストから、「医療機関から日医工の医薬品を使うのを躊躇するところもあると思うが、時間軸として信頼回復をどのようにイメージしているのか」との質問が出た。
これに対して、渡辺社長は、「質問の意図とずれるかもしれないが、私どもの考えていることは、日本の国民皆保険制度の中で後発医薬品が医療費抑制に貢献してきたことは事実。しかし、高度成長したことによって違うことが起きたということ。これから高齢化していく中で日本の国民皆保険制度の中で本当に後発医薬品が必要ないかというと、私は必要だと思った。当社として日医工の製品を品質がよいと思ってではあるが販売してきた道義的な責任も感じている。一番の生産量だった日医工さんが立ち直らない限りは、ほかの後発医薬品メーカーさんもドミノ倒しのようになっていくと私は思っている。きちっと立て直して、安心した医薬品を提供する体制をつくりたいという思いがあって資本提携した。日医工さんだけでなく、後発医薬品メーカーは少量多品種を作ってきたことのひずみが出てきていると思う。特に日医工さんの場合は規模の急激な拡大によって人の教育が遅れたという事実はあると思う。そういう意味では品質、流通の問題などを総合的にみて、できるだけスムーズに製造ができて患者さんにスムーズに届けられる形を考えた方がいいと思っている」と述べた。
「少量多品種をつくっていたことが後発薬企業さんの一番の悩み」
さらにアナリストからは、「資本提携した以上、リターンが見込めるのかの説明もあっていいのではないか。日医工との提携によってメディパルの利益にどのようにつながるのか」との質問が出た。
渡辺社長は「すぐに利益が出るかどうかは別として、私たちの考えがある。一番量を出していたのは日医工さんだった。この会社のものを代替供給しようとしても3年はかかると思う。日医工さんに早く回復してもらわないと共倒れになるという声は、日医工さん以外の後発薬の企業さんからお聞きする。それから少量多品種をつくっていたことが後発薬企業さんの一番の悩み。これをどう再構築していくかが最大の課題だと話し合っている。そうすると、後発薬から後発薬に切り替えることはあまりないので、その中で、どのように供給を安定させるかは共通の課題。古くなった後発薬と新しく出る後発薬の相関関係がある。これをどうやっていくか。これから起きることは、幅寄せをしていって多品種のものをできるだけ新規にしていって、製造ラインをできるだけ予測をしながらつくっていくこと。そのことで無駄をなくしていきたいというお話は後発薬企業さんから出ている。そういう中に入っていけるのは卸ではないかと思う。そういうモデルがこれから出てくる気がしている」と指摘した。
「後発薬企業は弱い立場。使っている物流コストは新薬企業の5倍。これは改善すべき」
「日医工の提携によって、メディパルHDが扱う後発薬は日医工に寄せていく考えはあるのか」との質問については、「その考えはない」とした。
後発薬にかかわる業務負担については、「MSは出社してから2時間は後発薬の調達の話をしている。ある意味では生産性のない仕事をしている。これまでは備蓄していた分が流れてきていたが、後発薬企業においても最低3ヶ月はある自分たちの在庫が皺寄せで出尽くして、生産が滞りつつある。増産しましょうといっても1日24時間しかない。いつ終息するかについては、下手をすると3年弱かかると思っている」とした。
「社内文化も含めて日医工の問題解決できると思うか」との質問も出た。
渡辺社長は、「後発薬企業はほとんどがオーナー企業だ。メディパルHDは日医工の筆頭株主になったが、田村社長のことも理解しなければいけない。必要なのはコーポレートガバナンスの仕組み。誰かが苦言も言わないと変えられない。手順通りでないことについて知らなかったということはないと思うが、理由もあったと思う。それが少量多品種で増産もしなくてはいけない、欠品してはいけない、量をつくれ、この10年ぐらい後発薬をずっと増やしていく、しかし人は足りないということ。経営は量をつくれと。そこに歪みが出てきたことは後発薬企業共通の悩みではないかと思っている。そういうことを誰かが発言していかないといけない。日本の後発薬の普及とはなんだったのか、卸としても発信していく義務があると思っている」とした。
設けている物流分科会の話として、「後発薬メーカーは売って欲しいため規模を大きくするために弱い立場にあった。物流コストとして1年間使っているのがいくらか、新薬メーカーが同じように使っているのか。いくらかというと、5倍も多く使っていた。これは改善しなければいけない。これは資本を入れてミーティングしないとわからないこと」と述べた。