予算執行調査は、財務省主計局の予算担当職員や日常的に予算執行の現場に接する機会の多い財務局職員が、予算執行の実態を調査して改善すべき点を指摘し、予算の見直しや執行の効率化等につなげていく取り組み。
6月29日に「令和3年度 予算執行調査の調査結果の概要」を公表した。
なお、結果の位置づけについては、「必要性、有効性、効率性の観点から調査を実施し、今後の改善点、検討の方向性を指摘。これらの調査結果については、各府省に対し令和4年度予算の概算要求や今後の予算執行に確実に反映するよう要請」としている。
この調査結果の中で、「診療報酬(後発医薬品関係)」が取り上げられている。
調査内容は、「令和5年度末までに使用割合を、全ての都道府県で80%以上とする」との新目標と、後発医薬品調剤体制加算の関係について検討を行った。
調査対象は令和2年度。
結果として、まず、減算適用の少なさを問題視。
7割が加算を取得する一方で、減算適用はわずか0.3%だった。
現行制度では年間1,200億円程度の加算に対し、減算は400万円程度となっている。
そのため、減算適用の対象を大幅に拡大する必要があるとした。
一方、後発医薬品使用割合と備蓄品目数が正の相関関係にないことを問題視。
使用割合の最も高い「加算3」を取得している保険薬局の備蓄医薬品目数が最も少ないと指摘した。
同加算の意義について、「後発医薬品の使用によるかかり増しの費用への対応の側面ではなく、インセンティブとしての側面が強くなっている」と指摘。
さらに、加算を取得している保険薬局の割合は全国平均で、73.9%となっており、都道府県によっては9割を超えていることから、既に現行の加算制度では、これ以上使用割合を高める機能を期待することができない状態にあるとした。
政府目標(全都道府県80%)に到達した場合の医療費適正化効果額の増加分は、一定の試算の下、200億円程度と見込まれるという。現行制度での毎年加算1,200億円程度との費用対効果も見合っていないとして、「加算制度については、廃止を含めた見直しを行うべきである」と結論づけている。
後発医薬品の使用促進をめぐっては、メーカーの不祥事等で安定供給に支障をきたす中、入手や情報精査、代替や患者への説明などで薬局現場の負担は極めて重くなっている。
現在のこうした実情や、これまで国の政策にのっとり促進してきた薬局業界の労力に一切の配慮をしない結果分析には、薬局業界からの反発は必至だ。
日本薬剤師会も来年度の予算・税制改正への要望書で、後発医薬品の供給が滞ったことで薬局の負担が増大していることを訴えている。

【財務省】「後発医薬品調剤体制加算」に「廃止を含めた見直し」求める/予算執行調査結果で
【2021.06.29配信】財務省は、予算執行の実態を調査して改善すべき点を指摘し、予算の見直しや執行の効率化につなげる「予算執行調査の調査結果」を公表した。その中で、「後発医薬品調剤体制加算」に関して、「廃止を含めた見直しを行うべき」とした。
関連する投稿
【中医協】日薬・森氏、後発薬加算「カットオフ値」の急減店舗の発生を問題視、対応求める
【2025.04.23配信】厚生労働省は4月23日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開いた。この中で日本薬剤師会副会長の森昌平氏は、後発医薬品調剤体制加算の要件である「カットオフ値」が急減している店舗があることを説明し、問題視。対応を求めた。
【後発薬加算】除外リスト、カットオフ値リスト更新/4月16日から適用/後発薬有無情報も更新
【2025.04.16配信】厚生労働省は4月15日、診療報酬における加算等の算定対象から除外する品目の一覧、及びカットオフ値の算出に含める品目リスト、その他 (各先発品の後発医薬品の有無に関する情報)リストを更新した。4月16日から適用となる。
【後発薬調剤割合】「90%以上」の薬局が66.1%に/前年33.3%から倍増/中医協・診療報酬改定結果検証部会
【2025.04.09配信】厚生労働省は4月9日、中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会を開催し、「令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和6年度調査)の報告書案」について説明した。このうち、後発医薬品調剤割合について、「90%以上」の薬局が前年の調査から倍増していることがわかった。令和5年度調査では33.3%だったものが、今回の令和6年調査では66.1%となった
【選定療養の影響調査】ヒルドイドの調剤額が4割超減/インテージリアルワールド社
【2024.11.15配信】株式会社インテージリアルワールドはこのほど、長期品の選定療養導入による後発医薬品への切替の影響を調査した。その結果、選定療養対象薬剤の推計調剤金額トップ10の薬剤のうち、ヒルドイド、プログラフ、グリベック、シムビコート、ネキシウム、アジルバなど、6製品において調剤金額が前月比で3割以上減少していた。ヒルドイドでは4割超減少している。同社データベース Cross Fact の2024年10 月データを基に、院外調剤市場における医療用医薬品の動きを見たもの。
【2024.09.30配信】厚生労働省は9月30日、「安定供給の確保を基本として、後発医薬品を適切に使用していくためのロードマップ」及び「バイオ後続品の使用促進のための取組方針」を策定・公表した。
最新の投稿
【規制改革WG】事前処方・調剤の質疑への回答公表/在宅医療における円滑な薬物治療の提供で
【2025.05.01配信】規制改革推進会議「健康・医療・介護ワーキング・グループ(第5回)」が5月1日、開催された。その中で令和7年3月14日に開催された「第2回健康・医療・介護 WG」に関する委員・専門委員からの追加質疑・意見に対する厚生労働省の回答を公表した。
【東京都薬務課】健康食品試買調査結果、79%が違反/効能効果の標榜に販売店のチラシなども注意
【2025.04.30配信】東京都薬務課は4月30日に定例会見を開き、都が毎年行っている健康食品試買調査の結果を説明した。124製品中、98製品、79%に不適正な表示、広告が発見されたという。医薬品的な効能効果の標榜を禁止している薬機法違反も多いが、景品表示法、食品表示法、特定商取引法などの違反も見られる、都では複数の法律で規制されている健康食品を取り扱う事業者に向けて講習会を開いており、講習会参加なども生かして法令遵守に取り組んでほしいとしている。
【厚労省_疑義解釈(その24)】DX加算のマイナ保険証利用率について
【2025.04.28配信】厚生労働省は4月25日、診療報酬改定についての「疑義解釈(その24)」を発出した。「医療DX推進体制整備加算」の施設基準の1つであるマイナ保険証利用率について回答。4月については在宅患者を分母から引いて構わないとしている。現在は通常の外来患者がマイナ保険証を利用した場合のみが反映されているため。5月以降については、居宅同意取得型のオンライン資格確認によるマイナ保険証利用件数が社会保険診療報酬支払基金から通 知するマイナ保険証利用率集計に含まれる予定。
【日本薬剤師会】電子お薬手帳ビューワー、他職種への周知を依頼
【2025.04.26配信】日本薬剤師会は電子おくすり手帳簡易ビューワーアプリ「e薬 SCAN」について、他職種への周知依頼を都道府県薬剤師会宛てに発出した。
【財政審】 後発薬調剤体制加算等、政策目標の達成状況を踏まえ「必要に応じ報酬体系の再編を」
【2025.04.23配信】財務省は4月23日に財政制度等審議会「財政制度分科会」を開催した。