【日本薬剤師会政策提言】北海道薬学大会で講演の磯部専務理事が内容を説明

【日本薬剤師会政策提言】北海道薬学大会で講演の磯部専務理事が内容を説明

【2021.05.22配信】日本薬剤師会専務理事の磯部総一郎氏は5月22日、オンラインで開催された「第68回北海道薬学大会」で講演し、日本薬剤師会がまとめた政策提言の中身についても解説した。重要なポイントとして、薬局ごとの機能の他に、地域で必要な薬局の機能を見るという視点を挙げ、それを支援するための政策を求めていくとした。また、セルフメディケーションを支援する健康サポート薬局機能をこうした地域計画に位置付けていく重要性を指摘し、「保険者の協力も得て何とか支援できないか考えている」と話した。


「地域医薬品提供計画(仮)」の策定による地域住民のアクセスを改善

 5月22日にオンラインで開かれた「第68回北海道薬学大会」で日本薬剤師会専務理事の磯部総一郎氏が講演した。
 磯部氏は講演の中で、日本薬剤師会がまとめた政策提言の内容に言及した。

 磯部氏は政策提言の重要なポイントとして、これまでは薬局に必要な機能を定義してきたが、それが地域の中でどのくらい必要なのかという視点を挙げた。
 「例えば地域で不足している場合は、どう確保していくのか」(磯部氏)。
 具体的には「地域医薬品提供計画(仮称)」を策定し、当該地域で求められる薬局等の有する機能(かかりつけ機能、健康サポート機能、高度薬学管理機能など)とその地域における必要量の標準を推計する。
 休日・夜間時の対応を含めて自治体にしっかりと位置づけられた形で実施し、推進することを目指すとした。
 健康サポート薬局をどう充実させるのかも重要として、「保険者の方々にも協力をいただいて進めることができないかと考えている」とした。

 政策提言の中では以下のように記述している。
 ■地域医薬品提供計画(仮称) の策定
・地域包括ケアシステム、地域完結型医療を構築するために、各都道府県が、地域医療計画に連動した「地域医薬品提供計画 (仮称) 」の策定を行い、薬剤師・薬局が多職種と連携して、その機能を十分発揮することで、地域住民の医薬品アクセスを確保し、安全・安心な医薬品提供システムを確立する方策を構築するべきである。
■地域医薬品提供計画(仮称) に盛り込むべき内容
①当該地域において求められる薬局等の有する機能(かかりつけ機能、 健康サポート機能、高度薬学管理機能など)とその地域における必要量の標準を推計
②休日·夜間時の対応を含め医療提供施設間の連携内容の明確化とその推進方策
③薬剤師薬局等が不足している地域においては、 薬局の整備や薬剤師の確保、 偏在等の解消に向けた財政支援を含む施策と体制の構築
④地域の課題、住民ニーズの把握を行い、 地域住民への薬局機能等の周知や医薬品を適切に使用するリテラシー向上のための方策
など
・・・・・・・・・
 再使用可能処方箋も提案していく。

健康サポート機能の積極的活用

 政策提言の中では薬局機能の維持が危機的状況にあることも説明しており、医療経済実態調査や日薬の調査によると、約3割の薬局が赤字経営であり、新型コロナウイルス感染症、薬価改定、後発品メーカーの不祥事が追い打ちとなり、収支状況を大きく圧迫しているとした。

 「一般的な薬局の姿」として、年間収入は1億1000万円程度だが、薬剤費が7100万円程度と比率が高く、多くの収入は「右から左に」移動するだけで、税引き前損益差額で170万円程度しかないとした。

 一方、薬局・薬剤師が持つ役割として、以下を政策提言内で提示した。
■国民・患者へ、必要な医薬品を適切かつ過不足なく供給できる体制の確保
・患者の服薬状況を一元的継続的に把握し、適切な管理の下での安全な服薬の確保
・医薬品入手の 「自由」と「利便」の違いに関する、地域社会・住民への啓発
・コロナ禍や災害時、緊急避妊薬を必要とする事態など平時とは異なる状況下でも必要な医薬品を提供
■地域包括ケアシステムの構築への貢献
・多職種連携、チーム医療への貢献(共通の言語の活用と、相互の職務に関する理解・協働)
・医師の働き方改革の実現のための業務連携(タスクシェア/タスクシフト)
■医薬品適正使用のための各種方策の推進
・残薬解消、ポリファーマシー対策、後発医薬品の適切な使用等を含め、患者·住民が適切な費用で安全・安心を享受できる体制の確保
・医療情報の利活用による、より幅の広い薬学的知見での質の高い服薬管理の提供
■国民自らによる疾病予防・健建康管理意識の醸成と、その促進に資する健康相談等への貢献
・セルフケア/セルフメディケーションへの支援
・地域住民に対する薬局・薬剤師の有する健康サポート機能の積極的活用
・地域住民に対するOTC医薬品の適切な提供と、使用状況の一元的かつ継続的な薬学的管理
・PHRの活用による国民自らの情報管理とその連携による健康管理・薬物治療へのサポート
・地域住民・子供たちに医薬品の適切な使用や公衆衛生意識の向上を目指した普及・啓発
■国民皆保険の堅持(Sustainability :持続可能性の視点に立っての国民皆保険の維持·運営)
・国民が安心して最良・最適な医療を受けられる環境の確保
・国民皆保険の理念の周知と、 適切な活用策の啓発

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 加えて、新型コロナウイルス感染症拡大下においても、休業することなく地域住民に必要な医薬品などの提供を継続した他、環境衛生意識の普及・啓発、ワクチンの有効性・安全性への地域住民からの相談対応や接種現場での貢献などを行なっていることも説明した。

改正薬機法で薬局は「すべての医薬品の供給施設と明確化された」

 「将来目指すべき薬剤師・薬局の姿」の図説では、消費者・生活者が医療機関を受診した後で医薬・薬薬協働と行うが、それとは別に薬局に対して健康不安の相談を行うルートが示されており、そこでも多職種連携・地域連携を行うとしている。
 
 薬局はO T C医薬品も含めて患者・住民が使う医薬品の一元的管理と受ける薬物治療の観察・管理を行うものをしている。

 「薬局機能の向上に向けた制度整備」では、改正薬機法で薬局の定義が「調剤業務を行う場所」から「すべての医薬品の供給施設と明確化された」とし、その薬局の機能を実行あるものにするための制度の整備を目指すとしている。

 内閣府の薬局利用に関する世論調査も提言の中で取り上げ、かかりつけ薬剤師ないしかかりつけ薬局を持っているという約26%という結果は、過去の各種関連調査に比べると拡大傾向にあるとして、かかりつけに対する国民の意識は高まってきていることを提示している。

 デジタル化への対応の必要性にも触れた。
 政策提言の中では以下のように記述している。
「地域医療情報連携ネットワークの構築とそれを支える基盤の整備 ~デジタル化の推進~」
・電子処方等やオンライン資格確認の進展に伴い薬局業務のデジタル改革は大きく進むと思慮している。
・今後は、地域の医療機関·薬局、介護老人保健施設などの医療提供施設間において、個々の患者の服薬状況等を共有するなど、 その得られる情報を活用し、地域包括ケアをより適切に進めていく施策を講ずることが課題と考える。
・そのため、国では地域医療情報連携ネットワークの整備を進めているところであるが、その活用状況は地域によって大きな差がみられる。国民が安全で安心な医療提供を享受するためには、この要因を分析し、全国で均質な地域医療情報連携ネットワークが活用される政策を進めていくべきである。
・なお、医療提供施設のデジタル化を進める上で、 患者と医療提供施設との間でのキャッシュレス決済を促進するインフラ環境とともに、 キャッシュレス化に伴う手数料のあり方や財政支援等の対応を含めて検討すべきである。

 図説の中では、保健医療情報やP H Rの利活用によって、より質の高い服薬管理の提供を行なっていくとしている。
・・・・・・・・

特定の医療機関に偏重の薬局は「ダメなんだと言っていく」

 一方、政策提言では薬学教育の方向性にも触れており、目標の達成度に応じた入学定員の是正、4年制と6年制の一本化を見据えた融合、卒後の現場での臨床実習の検討も必要としている。

 政策提言の説明以外にも、磯部氏は薬局薬剤師への考え方を表明した。医薬分業の本旨に反する敷地内薬局や無責任状態が危惧される調剤業務の外注化に反対の意向も示した。

 また、特定の医療機関に偏重している薬局のビジネスモデルを問題視した。
 「在庫の回転もよく、経済合理性があり、圧倒的に経営効率がよいが、医師と患者の信頼関係のもとに成り立つことが多く、薬剤師と患者の信頼関係を構築しづらい。目の前の利益で見ればいいが、長期的に薬局バッシングにつながるもので、これではだめなんだと、安心・安全な薬物療法が遠のくと強く言っていかなければいけない」と話した。

 磯部氏は、「かかりつけの本質は生活状況も理解した信頼関係であり、これはデジタル化が進んでも文字にしきれないものだと思う」と指摘した。

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