【医師以外のコロナワクチン注射行為】厚労省「薬剤師は侵襲性のある行為はできない」/ 歯科医師も単独でワクチンを打つことは認めず「予診は医師が」

【医師以外のコロナワクチン注射行為】厚労省「薬剤師は侵襲性のある行為はできない」/ 歯科医師も単独でワクチンを打つことは認めず「予診は医師が」

【2021.04.23配信】厚生労働省は4月23日、「新型コロナウイルス感染症のワクチン接種に係る人材に関する懇談会」を開き、歯科医師によるコロナワクチンの注射行為について、必要な医師・看護師等の確保ができず患者の同意があることなどを条件に集団接種のための特設会場に限り認めるとの方針をまとめた。ただし、予診は医師が行うとし、医師のいる接種会場で歯科医師が注射行為を行うことを想定する。懇談会後の記者向けブリーフィングで記者から「海外では薬剤師もコロナワクチンの注射行為をしている」と水を向けられると、「薬剤師は侵襲性のある行為はできない」との認識を示した。


特設会場の「医師足りない」自治体は18.1%

 厚労省はまず、「新型コロナワクチン接種に係る人材確保の現状について」説明。

 医療従事者、高齢者、基礎疾患を有する者、高齢者施設等の従事者、60~64歳の人といった接種の優先順位と推定人数を示した。

 また、自治体を対象にした調査では個別接種と集団接種の想定については、両方を組み合わせる計画をしている自治体が56.2%と過半数を超える見通しとした。
 
 自治体における医師・看護師の確保状況では、特設会場における医師・看護師の確保が比較的不足している状況で、特設会場の状況について「不足している」との回答は医師に関しては18.1%、看護師に関しては22.8%という結果だった。

 次に「歯科医師による新型コロナウイルス感染症のワクチン接種のための注射について」を議論。

 事務局は現行法上の解釈では歯科医師によるワクチン接種は違法との解釈としたうえで、実質的違法性阻却に関しては、あくまで個別具体的事例をもって司法で判断されるものではあるが、行政としての認識としては以下の条件をすべてクリアしている場合に違法性が阻却されるとの考えをまとめた。
 
(1) 新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止し、住民の生命・健康を守るために迅速にワクチン接種を進める必要がある中で、必要な医師・看護師等の確保ができないために、歯科医師の協力なしには特設会場での集団接種が実施できない状況であること。
※ 上記については、予防接種の実施主体である自治体の長が、看護師等の確保に取り組んだ上で、それでも必要な看護師等の確保が困難と判断し、地域医師会等の関係者とも合意の上で、地域歯科医師会に協力を要請する。
※ 歯科医師がワクチン接種を行うのは、集団接種のための特設会場に限る。(予診やアナフィラキシー等の症状が発生した場合の対応は、特設会場にいる医師が行う。)
(2) 協力に応じる歯科医師が筋肉内注射の経験を有している又は新型コロナウイルス感染症のワクチン接種のための筋肉内注射について必要な研修を受けていること
(3) 歯科医師による接種について患者の同意を得ること

 こうした事務局案に対して、構成員からはおおむね賛意が示された。
 事務局は今後、早めに今回の内容にそくした事務局通知を発出したい考え。

 懇談会後の記者ブリーフィングの場で、記者から「海外では薬剤師がコロナワクチンを打っている例がある」と水を向けられると、事務局は「薬剤師は侵襲性のある行為はできない」との考えを示した。

 加えて記者から「人員確保が足りない場合に、歯科医師以外の次の手はあるのか」との質問に、事務局は「考えていない。まずは自治体の看護師直接雇用など、看護師確保の手を尽くすことが重要」との考えを示した。

この記事のライター

関連する投稿


【日薬代議員】 奈良、唯一の選挙で後岡氏(44)が当選/5月には会長選に挑む

【日薬代議員】 奈良、唯一の選挙で後岡氏(44)が当選/5月には会長選に挑む

【2024.04.15配信】令和6年3月28日に投開票された日本薬剤師会代議員選挙で、奈良県薬では44歳の後岡伸爾氏が当選した。今回の代議員選挙では唯一、選挙を行っての決定となった。


【日病薬】武田会長、改定の「薬剤業務向上加算」、第8次医療計画を後押しするもの

【日病薬】武田会長、改定の「薬剤業務向上加算」、第8次医療計画を後押しするもの

【2024.02.17配信】日本病院薬剤師会は2月17日に臨時総会を開いた。挨拶した武田泰生会長は今回の診療報酬改定にも触れ、薬剤業務向上加算については、「新任薬剤師の研修体制の構築や、出向を通してシームレスな薬物治療をつなぎ、第8次医療計画を後押しするものと期待している」と評価した。


【コロナワクチン接種】薬剤師の貢献を振り返る/飯能地区薬剤師会(埼玉)の事例から

【コロナワクチン接種】薬剤師の貢献を振り返る/飯能地区薬剤師会(埼玉)の事例から

【2021.12.10配信】3回目の接種に向けて準備が進むコロナワクチン。1回目、2回目の接種では初めての事態に自治体や医療従事者の中でも戸惑いがあった。そのような中、接種会場への協力等の薬剤師の参画に対しては、高い評価があった。飯能地区薬剤師会(埼玉)の取り組みから振り返る。


【米国薬剤師の役割でセミナー開催】全米州薬局協会連合州政策担当部長のAllie Jo Shipman氏が登場/主催・真野俊樹氏

【米国薬剤師の役割でセミナー開催】全米州薬局協会連合州政策担当部長のAllie Jo Shipman氏が登場/主催・真野俊樹氏

【2021.08.17配信】8月20日(金)9時〜、真野俊樹氏(多摩大学大学院教授)が主催するWEBセミナーが開かれる。テーマは「米国薬剤師の役割とその重要基盤COVID-19を踏まえて」。数十名規模でインタラクティブな質疑応答が可能なセミナーとなっている。料金は1万6000円。申し込みはPeatixより。https://digital-health-now-4.peatix.com/


【コロナワクチン保管温度のトラブル】保管冷蔵庫で温度上昇事例を確認/東京都薬剤師会が注意喚起

【コロナワクチン保管温度のトラブル】保管冷蔵庫で温度上昇事例を確認/東京都薬剤師会が注意喚起

【2021.07.09配信】東京都薬剤師会は7月9日に定例会見を開き、コロナワクチンの保管状況について注意喚起した。同会では東京商工会議所と協力して従業員50人以下の企業に対してコロナワクチン接種を進める「東京コロナワクチンチーム」に参画している。東京商工会議所で冷蔵していた保管冷蔵庫で、温度が上昇する事例が確認されたという。


最新の投稿


【東京都】災害薬事コーディネーターを任命/都薬副会長の宮川昌和氏など

【東京都】災害薬事コーディネーターを任命/都薬副会長の宮川昌和氏など

【2024.04.24配信】東京都薬務課は4月24日、定例会見を開いた。


【東京都】市販薬の適正使用へ/小学生向け教材作成へ/乱用推進計画

【東京都】市販薬の適正使用へ/小学生向け教材作成へ/乱用推進計画

【2024.04.24配信】東京都薬務課は4月24日、定例会見を開いた。


【楽天三木谷氏】“濫用薬”の規制方向「撤回を」/デジタル社会構想会議で表明

【楽天三木谷氏】“濫用薬”の規制方向「撤回を」/デジタル社会構想会議で表明

【2024.04.24配信】デジタル庁は4月24日、第 9 回デジタル社会構想会議を開いた。この中で三木谷浩史氏(楽天グループ株式会社/一般社団法人新経済連盟)は厚労省の進める“濫用薬”の規制方向を撤回するよう意見した。


【たんぽぽ薬局】ミック・ジャパン(大阪市)のドラッグ事業など譲受へ

【たんぽぽ薬局】ミック・ジャパン(大阪市)のドラッグ事業など譲受へ

【2024.04.23配信】株式会社トーカイの連結子会社であるたんぽぽ薬局株式会社(岐阜市)は4月22日、株式会社ミック・ジャパン(大阪市)との間で、ミック・ジャパンが展開するリハビリデイサービス事業、ドラッグストア事業などの各事業の譲り受けについて基本合意に至ったと公表した。


【楽天グループ】薬局予約アプリ「楽天ヘルスケア ヨヤクスリ」の提供を開始

【楽天グループ】薬局予約アプリ「楽天ヘルスケア ヨヤクスリ」の提供を開始

【2024.04.22配信】楽天グループ株式会社は4月18日、「処方せん医薬品を薬局で迅速に受け取ることができる調剤薬局予約アプリ『楽天ヘルスケア ヨヤクスリ』の提供を開始した」と公表した。


ランキング


>>総合人気ランキング