薬局の方からの「薬価を下げ続けるのは止めて欲しい」の声に思うこと【イケアキの医療制度深読み_その5】

薬局の方からの「薬価を下げ続けるのは止めて欲しい」の声に思うこと【イケアキの医療制度深読み_その5】

【2021.03.24配信】2022年度診療報酬改定の議論も始まっています。今回は薬局の方からの「薬価を下げ続けるのは止めて欲しい」の声に思うことを掘り下げさせていただこうと思います。


 保険薬局に勤務しています池下暁人と申します。SNSなどではイケアキの通称で発信さ
せていただいています。気になる医療制度の動向と私見を寄稿していきます。

 いよいよ2020年度が終わり、4月から2021年度が始まろうとしています。
 次回の診療報酬改定は2022年4月です。裏では様々な殴り合い…もとい、応戦が始まっていると思います。
 余談ですが、以前、私が主催したWeb勉強会“するやく会”での質問で「診療報酬は2年に1回は早すぎる」とご意見いただいた事がありました。確かに現場をまわしていたら「もう2年!」ってなりますよね。めっちゃ分かります。
 (注:するやく会については、ドラビズさんでも記事にしていただきました。その節はありがとうございました(人´∀`).☆。
https://www.dgs-on-line.com/articles/784

 一方で、医療技術の進歩など、動きの速いものに対して組む予算は本来、毎年度が理想です。しかし経営への影響の大きさもあって「2年毎」としているのは、実は絶妙なタイミングなのかな、と個人的には思っています。

 さて、本日はSNS等で薬局の方から「薬価を下げ続けるのは止めて欲しい」というご意見があって、その点をちょっとだけ掘り下げようかなと思い、今回寄稿させていただきました。

 薬価が下がるのは痛い! 薬局の経営をしていたら、ほんとそう思います。だって昨日と今日で商品の価値が一気に変わるんですよ。
 数十万円~数十億円、たった一晩で価値が下がるという、株が暴落するみたいな出来事です。(あぁっ…嫌な思い出が…)

 改定には、診療報酬本体の点数改定と薬価改定があり、その2つを合わせた全体改定率を決めて、翌年度の医療費が決定します。
 薬価というのは基本的に引き下げられるシステムになっているので、それによって浮いた財源を診療報酬本体にまわして対応されてきました。

 薬価制度は国民皆保険制度を維持するためには必要不可欠の公定価格制度ですので、その値段を変える薬価改定は(引き下げる事自体が目的ではなく)市場実売価格との乖離を正すために行われます。
 『100円って値段がついてんのに実際の仕入れ値が50円やったら、そりゃあ国民に還元せんとな!次は値段を70円にしまひょか』みたいな事です。
 これを取っ払うとなると需要と供給の法則が生まれて、必要性の高いものほど値段が上がったり
します。これでは、本当に必要な医療を提供するのは難しくなりそうですよね。

 とは言え、少しでも安く仕入れるのは商売の鉄則なのでどうしても値引き交渉というものが発生してしまい、結果どんどん薬価が下がってしまいます。ある意味、自分たちで自分たちの首を絞めるという何ともドMな仕様になっています。薬価改定はM改定だったんですね(違

 さて、そんなわけで(どんなわけだ)2021年度から中間年改定と言われる、薬価の毎年改定が行われます。どのような影響が出るのか。そして2022年度、2023年度の改定はどうなるのか、今から要チェックです。

**********************************************************************
イケアキ(池下 暁人 いけした あきと)
2003年に薬剤師免許取得後、個店薬局、DgS、国立病院機構を経て、2017年から診療報酬改定などに関わる。
もっと薬剤師が医療制度に興味持たないとな~とか思いながら日々活動中。
Twitterアカウント@AkitoIkeshita
**********************************************************************

この記事のライター

関連するキーワード


薬価改定 診療報酬改定

関連する投稿


【厚労省_中医協】日薬連、令和7年度の薬価中間年改定「実施する状況にない」

【厚労省_中医協】日薬連、令和7年度の薬価中間年改定「実施する状況にない」

【2024.08.07配信】厚生労働省は8月7日、中央社会保険医療協議会(中医協)薬価専門部会を開催。関係業界からの意見聴取を行った。


【厚労省】後発薬調剤体制加算、カットオフ値で臨時的取り扱い/令和6年度薬価改定の広い措置で

【厚労省】後発薬調剤体制加算、カットオフ値で臨時的取り扱い/令和6年度薬価改定の広い措置で

【2024.05.22配信】厚生労働省は5月22日、「令和6年度薬価改定を踏まえた診療報酬上の臨時的な取扱いについて」を発出した。カットオフ値について、当面の間、臨時的取り扱いを行うとした。


【令和7年度の薬価“中間年改定”】岸田首相「関係者の意見も聞き検討進める」/参議院予算委員会で神谷政幸氏の質問に答える

【令和7年度の薬価“中間年改定”】岸田首相「関係者の意見も聞き検討進める」/参議院予算委員会で神谷政幸氏の質問に答える

【2024.03.28配信】参議院予算委員会が3月28日午前から開かれ、神谷政幸参議院議員が質問に立った。


【厚労省】事務連絡/令和6年度診療報酬改定の「施設基準届出チェックリスト」

【厚労省】事務連絡/令和6年度診療報酬改定の「施設基準届出チェックリスト」

【2024.03.25配信】厚生労働省は3月25日、事務連絡「令和6年度診療報酬改定に係る施設基準届出チェックリストの送付について」を発出した。


【医療保険者団体】診療報酬改定要望を武見厚労相に提出/薬価改定では「市場実勢価格引き下げ分は国民に還元を」

【医療保険者団体】診療報酬改定要望を武見厚労相に提出/薬価改定では「市場実勢価格引き下げ分は国民に還元を」

【2023.11.27配信】健康保険組合連合会、国民健康保険中央会、全国健康保険協会、全日本海員組合、日本経済団体連合会、日本労働組合総連合会の6団体は連名で、武見敬三厚生労働大臣宛てに「令和6年度診療報酬改定に関する要請」を提出した。


最新の投稿


【東京都薬剤師会】選定療養で調査実施/説明所要時間など

【東京都薬剤師会】選定療養で調査実施/説明所要時間など

【2024.10.04配信】東京都薬剤師会(都薬)は10月4日、定例会見を開いた。この中で長期収載品の選定療養に関して調査を行うことを説明した。


【日本保険薬局協会】健康サポート薬局の法制化議論「機能の明確化は有り難い」/三木田会長

【日本保険薬局協会】健康サポート薬局の法制化議論「機能の明確化は有り難い」/三木田会長

【2024.10.04配信】日本保険薬局協会(NPhA)は10月3日、定例会見を開いた。この中で、認定薬局や健康サポート薬局の法制化に関する議論がされていることへの受け止めについて質問が出た。


【日病薬】阪大病院のシステム起因の調剤過誤事案、「通知発出も含め対応検討」

【日病薬】阪大病院のシステム起因の調剤過誤事案、「通知発出も含め対応検討」

【2024.10.02配信】日本病院薬剤師会は10月2日、定例会見を開いた。その中で記者から大阪大学医学部附属病院で起きた薬剤部門システムのプログラム不具合による注射抗がん薬の過量投与の発生への対応について質問が出ると、今後、会員向けに対応を支援する目的の通知発出も検討しているとした。


【薬剤師確保】医療計画への「数値目標」の記載が約半数の25都道府県/日病薬調査

【薬剤師確保】医療計画への「数値目標」の記載が約半数の25都道府県/日病薬調査

【2024.10.02配信】日本病院薬剤師会は10月2日に定例会見を開き、この中で医療計画への薬剤師確保の記載などに関する調査の結果を報告した。


【日本薬剤師会】緊急避妊薬の調査事業<令和6年度>を説明

【日本薬剤師会】緊急避妊薬の調査事業<令和6年度>を説明

【2024.10.01配信】日本薬剤師会(日薬)は10月1日に定例会見を開いた。この中で令和6年度の緊急避妊薬調査事業について説明した。


ランキング


>>総合人気ランキング