「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」は薬剤師の需給調査のほか、薬剤師養成や卒後研修などについて議論されている。12月18日のテーマは「薬局薬剤師の業務について」。この中で、日薬は資料を提出していた。
資料全体は、「薬局・薬剤師の任務・役割」「調剤業務に関する状況」「薬局の薬剤師の就労」「薬剤師の確保」「生涯学習」「薬局実務実習」など6つの柱からなっており、広範な薬局・薬剤師の現状と課題を説明したものとなっている。医薬分業率の変化やそれに伴う薬剤師就労状況、薬剤師綱領、薬機法の趣旨などを踏まえ、今後の薬局・薬剤師の在り方として、「地域包括ケアシステムにおいて、関連する施設間・多職種間の連携をこれまで以上に推進する」などとしている。
この資料の「セルフケア・セルフメディケーションの支援、適正使用の確保」の項の中で、「今後より充実する取組」として、「OTC医薬品の薬学的管理の充実・医師との連携 等」を挙げた。折しも、スイッチOTCを議論する厚労省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」(スイッチ検討会)では、12月2日の会議で「医師の関与」や「医師の管理下」が、スイッチOTC化する上で満たすべき薬剤の基本的要件の一つとして急浮上し、注目を集めていた。
資料の中では、セルフケア・セルフメディケーションであっても、医療用医薬品と同様に使用者の状態等の必要な情報収集と正確な医薬品情報の提供に努めることが必要としている。
その上で、「OTC医薬品についても情報を一元的・継続的に把握し、医師との連携を図る等、使用者がスイッチOTC医薬品を安全に安心して使用できる環境を整える」としている。
日薬としては、医療用医薬品でも医師とは情報連携している中、医療用とOTC薬の双方を服用している患者もいることから、医師との連携は必然的に重要な要素と考えているようだ。
一方、スイッチOTCの議論では、規制改革推進会議の委員である印南一路氏(慶應義塾大学総合政策学部 教授、医療経済研究機構 副所長兼研究部長)が私見としながらも、医師の関与を強めることがスイッチOTC促進には欠かせないとして、診療報酬上で医師に対する一般薬指導管理料を新設する案を提案。一部関係者からは、「医療機関任せではないセルフケア」の理念にそぐわないとして異論も出ていた。
日本薬剤師会の今回の資料が、必ずしもスイッチOTCの要件とリンクするとは限らないが、OTC医薬品、セルフメディケーションを取り巻く課題の中で医師の存在が大きくなっている傾向は否めない。また、重要な点は、当初、「医師との情報連携は重要」とのストーリーが、いつのまにか、「医師の関与ありきのスイッチ」という一つのカテゴリーをつくってしまう出口となるリスクをはらんでいる点ではないだろうか。しっかりと医師・薬剤師の役割分担がなされ、アクセシビリティに優れた薬局を通じてスイッチOTCが機能するような制度設計が肝要だ。12月24日に予定されているスイッチ検討会の行方を注視したい。
【日本薬剤師会】スイッチOTCの環境整備で「医師との連携」掲げる
【2020.12.22配信】日本薬剤師会(日薬)は、スイッチOTCの環境整備で「医師との連携」を掲げた。12月18日に開かれた「第5回薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」で提示した資料の「薬局薬剤師の業務について」の中の「セルフケア・セルフメディケーションの支援、適正使用の確保」の項で触れたもの。スイッチOTCを議論する「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」でスイッチOTC推進における「医師の関与」が取り上げられている中、12月24日の同検討会での日薬の見解に注目が集まる。
関連する投稿
【緊急避妊薬のスイッチOTC】承認取得/あすか製薬、販売元は第一三共HC
【2025.10.20配信】あすか製薬ホールディングスは10月20日、子会社のあすか製薬が緊急避妊薬「ノルレボ」の製造販売承認を取得したと公表した。承認取得を受け、第一三共ヘルスケアが同品の販売元として、発売に向けた情報提供体制の整備を進めるという。
【ジェネリック学会OTC分科会】生活習慣病薬のスイッチOTC化の推進で提言書公表
【2025.10.13配信】日本ジェネリック・バイオシミラー学会のOTC医薬品分科会(分科会⾧・武藤正樹氏)はこのほど、活習慣病薬のスイッチOTC化の推進で提言書を公表した。10月11日に盛岡市で開催された「日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会 第19回学術総会」「OTC医薬品分科会」のシンポジウムの場で示したもの。シンポジウムは日本OTC医薬品協会当の共催。
【2025.06.02配信】エーザイは6月2日、国内 OTC 医薬品として初めて製造販売承認を取得したプロトンポンプ阻害薬(PPI)である「パリエットS」を発売した。
【緊急避妊薬のOTC化】評価検討会議は終結、薬事審議会での承認可否判断へ
【2025.05.23配信】厚生労働省は5月23日、「第32回医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」を開催し、緊急避妊薬のスイッチOTC化について議論した。
【日本薬剤師会】緊急避妊薬の調査事業を報告/「世の中の流れはスイッチ化と理解」
【2025.05.22配信】日本薬剤師会(日薬)は5月22日に定例会見を開催した。その中で緊急避妊薬の薬局販売にかかる調査事業について報告した。
最新の投稿
【日本医療機能評価機構】薬包の表記は薬局等で異なるため薬包1包量を確認を/持参薬で
【2025.11.17配信】日本医療機能評価機構は11月17日、「医療事故情報収集等事業 医療安全情報No.228」を作成・ホームページで公表した。タイトルは、「粉砕調製された持参薬の過量与薬」で、2021年1月1日~2025年9月30日に2件の事例が報告されているもので、第81回報告書「分析テーマ」で取り上げた内容をもとに作成された。
【薬機法改正】「指定濫用防止医薬品」にデキストロメトルファンとジフェンヒドラミン/調査会方針
【2025.11.11配信】厚生労働省は11月11日、「令和7年度第8回薬事審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会」を開き、改正薬機法に定めた「指定濫用防止医薬品」としてデキストロメトルファンとジフェンヒドラミンを指定する方針を了承した。
【2025.11.09配信】薬局団体連絡協議会(薬団連)は11月9日に「第7回シンポジウム」を開き、「OTC類似薬」をテーマに取り上げた。参画団体共通の声明については今後の課題として、今回は策定・公表はしていない。
【東京都薬剤師会】市販緊急避妊薬の「産婦人科医等との連携リスト」関与の方針
【2025.11.07配信】東京都薬剤師会(都薬)は11月7日に定例会見を開いた。その中で、市販化の見通しとなった緊急避妊薬の販売条件となる「産婦人科医等との連携体制」のリストについて、都薬としても関与していく方針を示した。
【東京都薬剤師会】改定議論、「大手に誤解進むのは怖い」/髙橋正夫会長
【2025.11.07配信】東京都薬剤師会は11月7日に定例会見を開いた。この中で髙橋正夫会長は、調剤報酬改定の議論に触れ、「大手の方々に誤解進むのは怖い」と話した。