能登半島地震をめぐっては、デジタル庁では避難所の所在と避難者状況を特定するための被災者マスターデータベースの構築などで関わった。
民間のエンジニアが被災自治体の現場に入り発災直後から、データベースやシステムをその場で構築するなど、自治体の災害対応をデジタル面から支援した実態もあったという。例えば、発災から1〜2週間の間は避難所を特定する情報に困難さがあった。市町村やDMAT、自衛隊など各組織が情報確認に奔走する中、それぞれが別々のシステムを使用していたため、これらの情報統合でエンジニアが活躍した。またSuicaを使った入浴の利用状況や避難者所在のトラッキングも、こうした民間人材のアイデアが生かされていた事例という。避難者情報把握は、本来はマイナンバーカードで行うことが理想ではあったが、携行率やリーダーなどに当時は課題もあり、Suicaの活用によって業務効率化が図られたという。
今後の課題として、デジタル庁ではマイナンバーカードの平時からの携行率向上やスマホへの搭載の普及などにも取り組む方針。民間デジタル人材の派遣については、「災害派遣デジタル支援チーム」という制度の創設を掲げており、令和7年度予算も要求中だ。データ基盤構築施策では、すでに防災関連の民間アプリも多く登場している中で、すべてを国のシステムにするというよりは、各アプリでも情報連携が図れるデータ連携基盤の構築を進めたい考え。
石川の実証実験の内容については、実施前後により詳細な情報が明らかにされる予定。一方、自治体業務として発災直後の大きなウエイトを占めているのが避難所運営であり、その効率化については実証実験でも重要なテーマの1つとしている。対口支援でも週替わりで他地域から職員が入るため、地元情報に精通しているわけではなく毎週メンバーが変わってしまうこともある。そういった状況でも分かりやすいオペレーションはどのようなものなのかを検討、構築を模索したい考え。
編集部コメント/防災DXに注目
防災DXについては11月6日にデジタル庁が記者勉強会を開催し、説明したもの。デジタル庁の組織やマイナ保険証、国際戦略など広範なテーマを30分間ほどずつ区切って実施した。
薬業界メディアとしては「週替わりメンバーでも分かりやすいオペレーション」というキーワードは気になるところだ。薬剤師による被災地支援も同様の課題を抱えているからだ。発災直後の医療支援から避難所の衛生管理まで幅広く関わる薬剤師にとっても、自治体との情報共有の円滑化は課題。防災DXの議論に今後も注目していきたい。