災害時に、都が薬事に関する活動の総合調整を適切かつ円滑に行えるよう支援し、東京都災害医療コーディネーターをサポートすることを目的として、都は「東京都災害薬事コーディネーター」を任命している。
都はこのほど「東京都災害薬事コーディネーター」に以下の3名を任命した。
東京都薬剤師会副会長の宮川昌和氏。
東京都薬剤師会常務理事の貞松直喜氏。
東京都病院薬剤師会災害対策特別委員会副委員長(東京大学医学部附属病院薬剤部薬剤主任)の高山和郎氏。
選定理由について、東京都薬務課は、都は発災時に薬剤師班を派遣するが、同班は東京都薬剤師会(都薬)の会員で組織されており、都薬と連携が図れるよう都薬の災害担当でもある宮川氏を任命したとした。さらに都内の市区町村薬剤師会の状況も知っていることが必要と考えたとする。
また貞松氏は医薬品卸企業に所属しており、災害時に医薬品卸との連携も不可欠であることから適任と判断した。
さらに、病院薬剤師との連携も重視されることから、病院薬剤師会で災害を担当している高山氏を任命したという。
ちなみに3名との枠については、医師で構成される東京都災害医療コーディネーターも3名であること、また災害時に交代で災害対策にあたってもらうことが現実的であることから、3名の任命としたと説明した。
東京都災害薬事コーディネーターは、大規模な災害が発生した場合、又は都が必要と判断した場合において、知事の要請により、東京都災害対策本部(保健医療局)等に参集し、次の職務に関する薬学的な助言及び調整を行う。
(1)薬事に関する医療情報の情報収集に関すること。
(2)薬剤師班の活動に関すること。
(3)医薬品等の確保及び供給に関すること。
(4) 東京都災害医療コーディネーター等との連絡調整に関すること。
(5)被害状況の報告を求めること。
(6) その他医療救護に関すること。
なお、都では都内の各区市町村においても、地域の医療救護活動が円滑に行われるよう、薬事に関する調整を担う「区市町村災害薬事コーディネーター」の指定を進めている。
編集部コメント
会見で、「災害薬事コーディネーターには平時から対価が支払われるのか」と質問した。
薬剤師会関係者が災害薬事コーディネーターに任命されたことについて、「一定の利権ではないか」と、うがった見方をする人もいるのではないかと感じているからだ。
回答は、「平時の支払いはない」とのこと。もちろん、会議への出席など、平時でもなにかしらの関連業務が発生した場合は、その都度対価が発生する可能性は否定されるものではないが、それも都度、いわゆる日当程度のものであるとのこと。
いざ発災となれば、災害薬事コーディネーターは場合によっては家族の事情を差し置いて、都庁に登庁しなければいけない局面もあるかもしれない。発災時の対応に準備しておくためには、平時から体制も整えておく必要もある。それは一民間人である薬局薬剤師としては、対価に見合わない行動だろう。では、なぜそんな行動をするかといえば、災害時にも都民への医薬品供給を担うという使命感としか説明がつかないと感じている。
能登半島地震でも、災害薬事コーディネーターをはじめ、使命感に基づく薬剤師の活躍は報告されている。
土地土地の事情を知った薬剤師や医療従事者が、いかに災害時などでも重要な役割を実際に果たしているのか。“オンライン完結”の医療を議論する際にも念頭に置く必要がある。“オンライン完結”以前に、掲げるべきは“地域完結”だろう。オンラインをどう活用するかは、一極集中ではなく、事情に応じ、土地土地が判断すべき事項であるとの位置づけが不可欠ではないか。
災害時の薬剤師の活躍を報じるたびに感じている。