【日本薬剤師会_新理事の“横顔”⑤】白滝貴子氏/「お薬を通して、人生に寄り添っているという感覚」

【日本薬剤師会_新理事の“横顔”⑤】白滝貴子氏/「お薬を通して、人生に寄り添っているという感覚」

【2024.09.20配信】日本薬剤師会は岩月進新会長の下、6月30日の総会をもって新執行部を立ち上げた。本紙では、その中でも新たに理事になったメンバーに焦点を当てて取材、紹介する。第5回は白滝貴子氏。


 「みんなで何かをするのが好き」という白滝氏。そんな延長線上で、薬剤師会の活動参画に対しても違和感がなかったのかもしれない。

 薬剤師会の活動の入り口は、地元の弘前薬剤師会から。思い出の1つとして薬剤師会メンバー全員で浴衣を着て納涼祭に参加したことを挙げる。「仲良くなることで、組織が強くなる面があると思うんですね」(白滝氏)。日薬でも同じような“強さ”を築いていきたいと考える。会務の負担感について聞くと、「出会いがあって、そこから新しいつながりができたりする。そういうことが好きなのかもしれません。苦労も吹き飛びます」とする。

 父親が有床診療所を経営していたことから、“医療”は小さい頃から身近な存在だった。入院患者も抱えているため、長期の家族旅行をすることはできなかったが、看護師や診療所のスタッフとは家族のように過ごしていたという。子供の頃に薬包紙で折り紙をして遊んでいた思い出も。患者とは常に近い関係性を感じていた。
 白滝氏からいくつかのエピソードを聞いていると、どこからが患者への対応で、どこからが隣人としての対応か、たしかに線引きできないような関係性と感じる。「お薬を通して、その方の人生に寄り添っているというのが私たちの感覚だと思う」(白滝氏)。人と人との近い距離感は維持していきたい思いを抱く。

 東北薬科大学を卒業後、地元の薬局薬剤師としての勤務をスタート。平成11年には自身で薬局を開設した。現在はその1店舗を経営している。2022年には青森県薬初の女性会長に就任、今回は日薬の役員にもなったが、「大好きな」現場から離れるつもりはないと語る。

 県薬としての最近の取り組みのトピックとして挙げられるのが、厚労省の予算事業である「健康サポート推進事業」。5月の厚労省「薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会」でも結果を報告した。
 ブラウンバッグ活用などの残薬調整の機会を相談業務にも活かそうという取り組みだ。連携先などの関係性構築がみられ、結果的に思わぬ貢献も生まれた。認知症の治療開始のきっかけになったり、介護職種との連携により服薬状況が改善したりした。「薬局はさまざまな健康相談に乗っていることが少しでも伝えられたのではないか」と白滝氏は捉えている。

 終始、落ち着いた語り口の白滝氏だが、心の内には熱い思いも抱いている。能登半島地震の際には、支援に向けて素早く動いた。県薬メンバーの中でも、いの一番に現地入りした。思いの源泉を聞くと、「東日本大震災の存在があると思う」。第三者から見ても、山田卓郎常務理事(宮城)の震災対応でのリーダーシップを筆頭に東北ブロックの団結は強いことを感じる。地域と日薬をしっかり結びつける役割を果たしたいと語った。

【白滝貴子氏 略歴】

(しらたき・たかこ)[青森] 58歳 ※年齢は2024年6月14日時点
昭和63年 3月 東北薬科大学卒業
昭和63年10月 (有)城西メディカルサービス 城西調剤薬局入社
平成11年 5月〜現在 (有)傍島メディカルサービス ABC薬局開設
<薬剤師会役員歴>
平成20年 6月 青森県薬剤師会理事
平成26年 6月 青森県薬剤師会常務理事
平成30年 6月 青森県薬剤師会副会長
令和 4年 6月~現在 青森県薬剤師会会長

この記事のライター

関連するキーワード


日本薬剤師会 新執行部

関連する投稿


【日本薬剤師会】骨太方針への見解公表

【日本薬剤師会】骨太方針への見解公表

【2025.06.20配信】日本薬剤師会は6月20日、「経済財政運営と改革の基本方針 2025」及び「規制改革実施計画」等の閣議決定を受けて、見解を公表した。


【日本薬剤師会】「応需義務」の解釈明確化を厚労省に要望へ/カスハラ調査結果受け

【日本薬剤師会】「応需義務」の解釈明確化を厚労省に要望へ/カスハラ調査結果受け

【2025.06.19配信】日本薬剤師会(日薬)は6月19日に定例会見を開き、「薬局業務におけるカスタマーハラスメント発生時の対応事例に係るアンケート調査」の結果を説明した。この結果を受け、日薬では応需を拒否することの正当な範囲の明確化を厚労省に求めていく考え。医師においては令和元年に関連の医政局長通知が出ている。薬剤師に関してもそれらにならった形での通知等の発出が想定される。


【日本薬剤師会】夏の参院選へ、「通らなければ何もなくなる」/岩月会長

【日本薬剤師会】夏の参院選へ、「通らなければ何もなくなる」/岩月会長

【2025.05.28配信】日本薬剤師会は5月28日に都道府県会長協議会を開いた。挨拶の中で岩月進会長は、薬剤師業務に大きな影響を与える夏の参院選の厳しい状況について触れ、「通らなければ何もなくなると思わなければいけない」と語気を強めた。


【日本薬剤師会】緊急避妊薬の調査事業を報告/「世の中の流れはスイッチ化と理解」

【日本薬剤師会】緊急避妊薬の調査事業を報告/「世の中の流れはスイッチ化と理解」

【2025.05.22配信】日本薬剤師会(日薬)は5月22日に定例会見を開催した。その中で緊急避妊薬の薬局販売にかかる調査事業について報告した。


【日本薬剤師会】改正薬機法成立を受けてコメント発表

【日本薬剤師会】改正薬機法成立を受けてコメント発表

【2025.05.14配信】日本薬剤師会は5月14日、改正薬機法が成立したことを受けてコメントを発表した。


最新の投稿


【日本薬剤師会】こか庁の活動に協力/「こどもが安心して悩みを打ち明けられる環境づくりに向けた広報活動」

【日本薬剤師会】こか庁の活動に協力/「こどもが安心して悩みを打ち明けられる環境づくりに向けた広報活動」

【2025.08.28配信】日本薬剤師会は8月28日、定例会見を開き、こども家庭庁(こか庁)の取り組みへ協力を促す通知を都道府県薬剤師会宛てに発出した。当該活動は「こどもが安心して悩みを打ち明けられる環境づくりに向けた広報活動」。作成された広報啓発用のポスターや動画などを学校薬剤師の活動や一般用医薬品等の販売の現場において活用してもらうことを想定している。


【厚労省_令和6年度医薬品販売制度実態把握調査】“濫用薬”販売方法で改善みられる

【厚労省_令和6年度医薬品販売制度実態把握調査】“濫用薬”販売方法で改善みられる

【2025.08.26配信】厚生労働省は8月22日、「令和6年度医薬品販売制度実態把握調査」の結果を公表した。同調査は、薬局・店舗販売業の許可を得た店舗が医薬品の販売に際し、店舗やインターネットで消費者に適切に説明を行っているかどうか等について調べたもの。令和6年度の調査は、前年度に引き続き一般用医薬品のインターネットでの販売状況や要指導医薬品の店舗での販売状況を含めた調査を実施した。


【スギHD】セキ薬品の株式の取得/持分法適用会社化

【スギHD】セキ薬品の株式の取得/持分法適用会社化

【2025.08.19配信】スギホールディングス株式会社は8月19日、埼玉県を中心に調剤併設型ドラッグストアを展開する株式会社セキ薬品の株式(3万7929株、持株比率 34.8%)を取得し、持分法適用会社とすることについて決定し、同日、株式譲渡契約を締結したと公表した。


【薬局DXコンソーシアム】病院が新たに加盟/社会医療法人 仁厚会

【薬局DXコンソーシアム】病院が新たに加盟/社会医療法人 仁厚会

【2025.08.19配信】薬局DXコンソーシアムに病院が加盟した。社会医療法人 仁厚会が会員となった。


【医薬品情報把握システムの検討活発化】薬剤師会“アクションリスト”実践へ/MSNW「LINCLEちいき版」を全国の都道府県薬へ提案中

【医薬品情報把握システムの検討活発化】薬剤師会“アクションリスト”実践へ/MSNW「LINCLEちいき版」を全国の都道府県薬へ提案中

【2025.08.08配信】日本薬剤師会が公表した「地域医薬品提供体制強化のためのアクションリスト」。このうちの1つの事項である「地域の医薬品情報の把握・共有の取組」。この実践へ向けて情報共有のためのシステム選定の動きも活発化してきた。こうした中、メディカルシステムネットワーク(MSNW)では、もともと地域薬剤師会と共に開発を進めてきた「LINCLEちいき版」の提案を強化している。すでに10以上の都道府県薬剤師会への提案を進行中だという。