「コロナ下での需要開拓力が問われる」流通経済研究所・根本理事

「コロナ下での需要開拓力が問われる」流通経済研究所・根本理事

【2020.08.12配信】流通経済研究所は「新型コロナ下での消費と流通」と題したセミナーを開催し、同研究所理事の根本重之氏が講演した。同セミナーは8月5・6日の両日、WEB上で開催されたもの。根本氏の承諾と協力を得て、ポイントを紹介する。


新型コロナウイルス感染症の見通し

 まず、各企業が今後の事業展開を考えるうえで、新型コロナウイルスウイルス感染症が今後どうなるかについて展望をもっておくことが重要だとして、この分野の専門家の研究、予測をレビューしたうえ、以下のようなまとめがなされた。
 ・8月5日時点での累積感染者数は4万人強。だが、これはあくまでも行政が把握・報告した数字で、政策研究大学院大学 土谷隆教授は、実際の感染者数は、東京でその23倍、大阪では65倍にのぼると推計している。
 ・大まかに見て行政が報告した感染者数の20~60倍、実際の感染者数がいるとすると、総感染者数は、単純な掛け算をして80万人~240万人強となるが、日本の総人口対比だと0.6%~1.9%程度に過ぎない。そして圧倒的多数の人は、このウイルスに対する抗体をもっておらず、感染候補者ということになる。
 ・各国が新型コロナの「集団免疫」を獲得するには、どれくらいの割合の人が抗体を持てばいいのかという数字はまだ判らないが、これまでに接した最も低い数字は、オックスフォード大学などのグループが出した総人口の1~2割というものである。日本で言えば、1200万人~2400万人程度となり、集団免疫を獲得するには、まだ少なくとも1000万人以上、場合によっては、2000万人以上の感染が必要だということになる。
 ・ちなみに、2009年の新型インフルエンザについては、同年末12月27日までの感染者数は、国立感染症研究所の推計によると1753万人、年明けには終息に向かい、3月末に厚生労働省が終息宣言を出した。ちなみに1735万人というのは、総人口の14%程度と計算され、上記1~2割の範囲に入る。
 ・有効なワクチンが開発され、十分に供給され、しかも多くの人が副作用をおそれずに接種すれば、集団免疫獲得までの時間を短縮できる。だが、ワクチンについては、早期の供給予定が発表される一方、短期での供給は難しいとする専門家も多く、慎重に見る必要がある
 ・そうだとすると、現在発生している第2波を行動抑制によって押さえ込み、その後再び一定の緩和をすれば、第3波が来るといった状況を想定しておかないとならない
 ・再度2009年新型インフル時のデータを見ると、国内感染が始まったのは同年5月中旬、日本はそこからの「第1波踏み潰し」に成功したとしてWHOなどの評価を得たが、その後、「くすぶり期」を経て、第31週(7/27~8/2)に沖縄で感染者数が急増、8/6には流行注意報を発令、秋に大きな流行となり、大規模な休校が発生、11月23日の週に新規感染者数がピークに達した。
 ・もちろん09年の新型インフルエンザと今回の新型コロナウイルスは別物だが、似た感じが出てきており、秋、冬の感染拡大の可能性を視野に入れておいた方がよさそう。
 ・そのため、各企業は、ウイルスに対する防備のレベルを相当に高めるのはもちろん、厳しい状況に直面するこの国の人々のコロナ対策、そして生活に資するための新製品や新サービスの開発を進めてほしい。

 その後、セミナーでは、新型コロナ下での総合スーパー、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストア、ホームセンター、生協、ECなどの状況を検討したうえ、小売業、メーカー双方の注目すべき企業の展開が語られた。小売業の取り組みとしてはデジタルマーケティングの必要性やデリバリーニーズの高まりへの対応を説明し、商品関連では贈答品が高い伸びを示したことから、今後、施設等に入居している家族向け需要などの顕在化を指摘した。

8月5・6日の両日、WEB上で開催されたセミナー

需要開拓、マーケティングのDX

 小売企業の取り組みとしては、デジタルマーケティングを推進するSOO(Segment ofOne&only株式会社)の取り組みを紹介。同社は九州を地盤とするサンキュードラッグの平野健二社長が社長を務め、小売企業同士が連携してデジタルマーケティングのノウハウを蓄積している。
 根本氏は、SOOが相次いで新しい取り組みを開始していることに触れ、動画広告配信による来店送客効果と売上を分析するサービス「SOOAds」の4月リリース、さらには5月に会員限定のオンラインサロンを開設するなど、デジタルマーケティングの情報などの共有が進展しているとした。

ECで急伸長の「贈答品」。直系家族への贈答を提案

 また総務省「家計消費状況調査」によるEC支出の状況として、この5月、贈答品への支出額が前年同月比で80.5%増という高い伸びを示したことを紹介した。その増加率は、食料品80.1%、飲料78.7%などと同等である。根本氏は、人々が実際に会えなくなっているなかで、直系家族間での贈答が増加しているはずで、今後のお盆、敬老の日、彼岸、さらには年末・年始などでも帰省ができなければ、同じことが起きる可能性があり、注目しておきたいとした。また介護施設入居者などの市場も今後拡大するとみて、ケア従事者の支援を含め、対応していくことに商機があると指摘した。
 また店舗では厳しかった衣類も、5月の前年同期比増減率は、紳士用33.8%、婦人用37.8%と伸びていた。そして医薬品は118.6%という伸びを示した。

 小売業界が常に注視しているAmazonの動向に関しては、最近、大手物流業や地元物流業との提携に加えて、個人事業主を対象にしたAmazonFlexによって物流機能のキャパシティ拡大を図っていることを説明。最近、各地で増設している物流施設はAmazonFlexの拠点にもなり得ると話した。
 これまでは所有権の移転という重要な問題から配送における「置き配」(不在時に玄関前に置いていくことで所有権の移転を容認する仕組み)は懸念を指摘する声があったが、再配達の非効率性からも理解が広がっており、Amazonが先行して置き配を標準化する形となっているという。
 「置き配」の文化をつくってきた生協が、コロナで目覚ましい伸長を遂げているとし、根本氏は、「備蓄のものは週に1回でもいいとか、そういった販売の手法など、生協に学ぶべき点は多いのではないか」と指摘した。
 また、Amazonがロッカーを設けるAmazonHUBが、ヤオコーやココカラファインなど、小売企業に普及し出している状況にあり、今後、どの程度まで広がりを見せるのか、注目しているとした。一方、小売企業とAmazonHUBの連携が、単なる商品供給の場だけではなく、Amazonと小売企業の一歩進んだ連携に発展する可能性も否定できないとした。例えば生鮮に関しては、Amazonはライフとの提携を発表しているという。

 Eコマースに関しては、メーカーのDtoC機能拡大戦略もあり、世界的にSaaS企業であるShopfyが伸びているという。Amazonの対立軸としても、企業のブランディングに役立てられていると語った。Shopfyに象徴される、“収益性高いものを理解できる消費者に売る仕組み”が問われると指摘した。

基幹システムと連携したデリバリーサービスの構築

 こうしたAmazonの動きとも関連するのが、コロナで急拡大したデリバリーニーズである。
 根本氏は、デリバリーニーズに応えていく必要性があるとした上で、買い物、会計、持ち帰りなどをすべてセルフを前提としてきた実店舗が対応するにはしっかり採算の取れる配送料の設定が重要だと強調した。
 一部のタクシー会社では1時間の買い物受託で3000円という料金設定をしているサービスもあるとし、注文から配送のタイムラグに理解をしてもらったり、そうでなければ配送料をしっかり設定するなどの条件の細かな設定が必要と語った。
 こうした中、スーパーのカスミが「ネットスーパー」の名称を変更し、実店舗との基幹システムともデータ連携している「オンラインデリバリー」サービスを開始したことに触れ、以下の指摘とともに、こうした新たな動きへの期待感を示した。
 ・消費者に対する取引条件を収益的のものにすること
 ・基幹システムと連携のとれた自前のシステムを構築すること
 ・マーケティング、需要開拓面でのDXを同時か、むしろ先行的に進めること

 今後、重点を置くべきキーワードとして根本氏は「飽きさせない」と「支援」を挙げた。
 外出自粛でストレスを抱え、運動不足などの問題を抱えている各消費者層供への支援策についても、今一度、何ができるかを考えてほしいと訴えた。「飽きさせない」では、正統派のメニューとは別に「バズ・レシピ」などにも注目したいとしていた。

デリバリーニーズの高まりのほか、商品関連では贈答品が高い伸びを示しているなどの変化が表れている

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