【八戸薬剤師会】調剤実績情報の共有サービスを開始へ/薬局間医薬品融通スムーズに

【八戸薬剤師会】調剤実績情報の共有サービスを開始へ/薬局間医薬品融通スムーズに

【2024.04.17配信】八戸薬剤師会(青森県)は4月17日の夜、八戸市内のホテルで「薬局会員間の調剤実績共有サービスの導入について」との説明会を会員薬局・薬剤師向けに開催した。同サービスは調剤実績情報を共有することで薬局間の医薬品融通をスムーズにすることを目的とするもの。同薬剤師会は会員薬局数149薬局だが、説明会には100名以上が参加し、関心の高さがうかがえた。


 八戸薬剤師会はこれまでも、市民からの相談を受け付ける「くすりの電話」や「院外処方せんの事前合意プロトコール」など、地域住民に資する活動を数多く実施してきた。
 今回のサービスもその一環。
 説明会の冒頭、同会会長の阿達昌亮氏は、「現在の医薬品供給不安で一番困っているのは地域の患者さんではないか」と話し、地域に貢献する取り組みとして、サービスへの参加を求めた。

 具体的な仕組みは、レセプトコンピューター情報を基に、サービスに参加した薬局の調剤実績情報を共有するというもの。それにより医薬品の薬局間融通の際に多くの薬局へ問い合わせたりする業務負担の軽減を目指す。

 システムはメディカルシステムネットワークが開発した「LINCLE」を基にしたもので、カスタマイズされた「LINCLEはちのへ」がサービス名称になる。

 システム料は八戸薬剤師会が負担し、参加した薬局が個別にシステム利用料を払う必要はない。

 「LINCLE はちのへ」で連携される調剤実績データは、必要最低限の内容になるよう薬局内で自動加工がされる。そのため、個人情報や保険点数等の薬局の調剤情報が送られることはない。
 自薬局に在庫のない医薬品の処方箋を受けた際、近隣薬局の調剤実績から融通してもらう可能性の高い薬局を検索し問い合わせすることができ、お互いに可能な範囲で医薬品融通をスムーズに行うことができるようになることが期待される。

 副次的なメリットとして、医薬品卸の急配の削減も見込める。物流の「2024年問題」で急配抑制も社会課題といえる。そのほか、将来的には希少医薬品や高額医薬品等の調達、不動在庫の有効活用、医療用麻薬の夜間休日の融通(予め登録したグループ内)、災害時の医薬品調達等への活用も期待されるとして、サービス多角化も検討していきたい考え。

 スケジュールとしては、2024年7月よりシステム導入案内を開始し、 システム導入完了した薬局より利用を開始する見込み。

 レセコンデータの情報はNSHIPsの使用許諾を得て使用し、自動連係されるため、参加薬局における手間も低減される工夫がされている。

 基となっている「LINCLE」は、メディカルシステムネットワークが開発・提供する調剤薬局向け在庫管理システムのテクノロジー。メディカルシステムネットワークが運営する「なの花薬局」で2年以上の運用実績がある。

 八戸薬剤師会は、サービス導入の背景として、医薬品供給不安の長期化を挙げる。昨今、ジェネリック医薬品を中心とした医療用医薬品の供給不足が長期間続き、医療機関や保険薬局では必要量の医薬品調達に支障をきたす状態が継続していると指摘。医薬品の供給情報が医療機関や薬局間で共有されていないことも供給不安が長引いている一因、また医薬品在庫が偏在する要因とも指摘されているとする。
 八戸圏域の薬局間においては、以前からその都度、電話等で近隣の他薬局に医薬品融通の可否を確認し小分け調達していた。しかし、最近では不足する医薬品の調達が困難な場合が多く、結果として患者の待ち時間が増加し、患者が即時に医薬品を受領できないばかりか患者に全く医薬品を渡すことができない事例も発生。適切な薬物療法提供上も課題を生んでいると現状を説明。これらの課題解決のため、八戸薬剤師会では、圏域内の薬局で活用可能な医薬品調剤情報を共有するために、「LINCLE はちのへ」を導入し運用を開始することとしたと説明している。

 同日の説明会の上、趣旨に賛同した薬局を募集し、登録を進める方針。

「LINCLE」のログイン画面。ブラウザ上でID、パスワードを入力する

 説明会後の質疑応答では、調剤実績の「数量」ではなく、「時期」で情報を共有している理由を聞く質問も出た。「30錠しか出ていない薬局さんに融通をお願いするのも酷な気がする。調剤された数量ではなく時期の情報を共有することにしたのはなぜか」という趣旨だ。

 これに対し、阿達会長は、「数量の情報を共有してしまうと断りづらくなるのではないか。理事会で検討を進めてきた中で、無理強いすることのない、互助の理念で進めたいとの考えから数量ではなく、時期とした」と回答した。

この記事のライター

関連する投稿


【医薬品情報把握システムの検討活発化】薬剤師会“アクションリスト”実践へ/MSNW「LINCLEちいき版」を全国の都道府県薬へ提案中

【医薬品情報把握システムの検討活発化】薬剤師会“アクションリスト”実践へ/MSNW「LINCLEちいき版」を全国の都道府県薬へ提案中

【2025.08.08配信】日本薬剤師会が公表した「地域医薬品提供体制強化のためのアクションリスト」。このうちの1つの事項である「地域の医薬品情報の把握・共有の取組」。この実践へ向けて情報共有のためのシステム選定の動きも活発化してきた。こうした中、メディカルシステムネットワーク(MSNW)では、もともと地域薬剤師会と共に開発を進めてきた「LINCLEちいき版」の提案を強化している。すでに10以上の都道府県薬剤師会への提案を進行中だという。


【医薬品供給状況】不足カテゴリートップは抗生剤/株式会社イヤクル調査

【医薬品供給状況】不足カテゴリートップは抗生剤/株式会社イヤクル調査

【2024.12.03配信】株式会社イヤクル(本社:北海道、代表取締役:佐孝尚氏)は、薬剤師を対象に「医薬品供給不足に関するアンケート調査」を実施。その結果、出荷調整品のカテゴリーでは抗生剤がトップだった。


【八戸薬剤師会】緊急避妊薬の供給体制HPをバージョンアップ/医療機関リストも整備

【八戸薬剤師会】緊急避妊薬の供給体制HPをバージョンアップ/医療機関リストも整備

【2024.12.02配信】八戸薬剤師会(青森県、阿達昌亮会長)は12月2日までに同会HP上の緊急避妊薬の供給体制サイトをバージョンアップした。産婦人科医会の了解を得て、受診できる医療機関リストも整備した。


【医薬品供給不安】安定確保薬の定期的な見直しを/日本医学会連合が提言

【医薬品供給不安】安定確保薬の定期的な見直しを/日本医学会連合が提言

【2024.06.14配信】日本医学会連合は6月12日、厚労省に「医薬品安定供給に関する提言を提出した。我が国の健康に関する安全保障上、国民の生命を守るため、切れ目のない医療供給のために必要で、安定確保について特に配慮が必要とされる医薬品である「安定確保医薬品」については、リストの定期的な見直しとその周知、政策への反映を求めている。


【厚労省】長生堂製造の医薬品、品質等に問題がなければ「出荷は差し支えない」

【厚労省】長生堂製造の医薬品、品質等に問題がなければ「出荷は差し支えない」

【2024.06.11配信】厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課は6月10日、事務連絡を発出した。一部の医薬品で製造販売承認書から逸脱した製造方法により医薬品の製造が行われ、出荷停止を行っている長生堂製薬。同社製造の医薬品に関して、製造販売業者により性状、品質等に問題がないことが確認された場合、出荷して差し支えないとした。


最新の投稿


【緊急避妊薬のスイッチOTC】承認取得/あすか製薬、販売元は第一三共HC

【緊急避妊薬のスイッチOTC】承認取得/あすか製薬、販売元は第一三共HC

【2025.10.20配信】あすか製薬ホールディングスは10月20日、子会社のあすか製薬が緊急避妊薬「ノルレボ」の製造販売承認を取得したと公表した。承認取得を受け、第一三共ヘルスケアが同品の販売元として、発売に向けた情報提供体制の整備を進めるという。


【厚労省_疑義解釈】保険薬局との「特別な関係」で/総合入院体制加算及び急性期充実体制加算施設基準

【厚労省_疑義解釈】保険薬局との「特別な関係」で/総合入院体制加算及び急性期充実体制加算施設基準

【2025.10.20配信】厚生労働省は10月20日、令和6年度診療報酬改定に関する「疑義解釈(その30)」を発出した。総合入院体制加算及び急性期充実体制加算の施設基準においては、病院が特定の保険薬局との間で不動産取引等その他の特別な関係があれば、当該保険薬局の所在する建物内に診療所が所在している場合でも、「特定の保険薬局との間で不動産取引等その他の特別な関係がない」に該当しないとした。


【日本チェーンドラッグストア協会】「300店舗以上の区分廃止を」/調剤報酬改定で声明公表

【日本チェーンドラッグストア協会】「300店舗以上の区分廃止を」/調剤報酬改定で声明公表

【2025.10.17配信】日本チェーンドラッグストア協会は10月17日に定例会見を開き、調剤報酬改定における「300店舗区分」の見直しを求める声明を公表した。


【日薬・NPhA・JACDS】「安心を守る」薬剤師の役割で共同広告

【日薬・NPhA・JACDS】「安心を守る」薬剤師の役割で共同広告

【2025.10.16配信】公益社団法人日本薬剤師会(日薬)、一般社団法人日本保険薬局協会(NPhA)、一般社団法人日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)の3団体は、「国民の健康維持・増進を支援する」ため、薬剤師の役割と機能を広く発信する共同広告企画を実施する。


【ジェネリック学会OTC分科会】生活習慣病薬のスイッチOTC化の推進で提言書公表

【ジェネリック学会OTC分科会】生活習慣病薬のスイッチOTC化の推進で提言書公表

【2025.10.13配信】日本ジェネリック・バイオシミラー学会のOTC医薬品分科会(分科会⾧・武藤正樹氏)はこのほど、活習慣病薬のスイッチOTC化の推進で提言書を公表した。10月11日に盛岡市で開催された「日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会 第19回学術総会」「OTC医薬品分科会」のシンポジウムの場で示したもの。シンポジウムは日本OTC医薬品協会当の共催。