長期収載品については、保険給付と選定療養の適用場面や対象品目について論点となっている。
まず保険給付と選定療養の適用場面については、12月8日の社会保障審議会医療保険部会ですでに「医療上の必要性があると認められる場合」、例えば医療上の必要性により銘柄名処方、後発品への変更不可とした場合については選定療養とせずに引き続き保険給付の対象としてはどうかと提案されていた。一方、銘柄名処方の場合であっても患者希望により長期収載品を処方・調剤した場合や一般名処方の場合については、長期収載品を使用する際は選定療養の対象としてはどうかと提案されていた。
「医療上の必要性があると認められる場合」については、処方等の段階で明確になるような仕組みの整理が必要とされている。薬局に後発品の在庫がない場合、後発品を提供することが困難な場合については、患者が選択できないことから保険給付の対象とする方向が示されていた。
「選定の対象品目」については、後発医薬品の上市が5年を経過したもの、5年を経過していなくても置換え率が50%に達している場合に対象とする案が出ている。
「保険給付と選定療養の負担にかかる範囲」については、「保険給付の範囲の水準」と「選定療養の負担についてどの程度を標準とすべきか」という2つの論t年がある。
「保険給付範囲の水準」の差については、事務局は長期収載品と後発品の価格差の「1/2以下」とするという形を提案。1/2、1/3、1/4といった定め方も選択肢に挙げた。「選定療養の負担についてどの程度を標準とすべきか」については事務局は「保険給付範囲の水準」の一定割合の相当分という形を提案した。加えて「療養に係る負担を徴収しないこと」や「上記の差より低い額で徴収すること」について事務局は、「後発医薬品の使用促進を進めていくという施策の趣旨を踏まえる必要があるのではないか」とし消極的な姿勢を示した。
選定療養を活用することは医療保険部会で結論を得ているもので、適用場面については医療上の必要性などの明確化については引き続き議論する方針。対象品目についても制度設計そのものに関わる論点ということで医療保険部会の方で基本方針が出されているもの。保険給付と選定療養の負担にかかる範囲についても議論を進める。ただ保険給付と選定療養の負担にかかる範囲などについては最終的には予算編成過程を経て最終的に取りまとめる方向。
こうした論点について、日本医師会常任理事の長島公之氏は選定療養の負担に関して差額の「1/4程度」を提案した。次のように述べた。
「まず基本的な考え方として 今回は患者さんの自己負担のあり方や医薬品の安定供給体制と多方面に大きな影響を与える制度変更となりますので、最初は慎重にスタートした方が良いと考えます。この点を踏まえて論点についてコメントしたいと思います。まず対象品目については上市5年以上置換率50%カテゴリについては後発品が上市されてから5年が経過しZ2ルールが適用されたとしても、まだ過半数は置き換えられていないという状況からすると、長期収載品を使用した場合の自己負担引き上げについては慎重に対応することも考えられます。また保険給付範囲の水準については、資料を見ると1割負担の患者さんのほうが3割負担の場合と比べて患者負担の変化額が大きくなっておりますし、先発品と後発品の薬価差が大きい場合も患者負担額の変化が大きくなってしまうことが分かりました。こうしたことを踏まえますと保険給付費の数字については、最初は1/4程度の額としてできるだけ患者さんへの影響が少なくなるようにした上で様子を見るべきと考えます」と述べた。
加えて、選定療養として徴収する額についてもは、「制度を最初から複雑にすると現場に与える影響が大きくなります。したがって長期収載品の薬価を超えた額を設定することや逆に選定療養として徴収する額をあえて低く抑えるようなことも避けるべきと考えます。また安定供給の確保という意味では現在の状況において後発品の供給体制に過剰な負担をかけるべきではないと考えられます。そこで例えば準先発品すなわち昭和42年以前に承認・薬価収載された医薬品であって後発品のあるものを長期収載品と同列に扱うことになる影響もよく見ておく必要があると考えます」(長島氏)とした。
一方、日本薬剤師会副会長の森昌平氏は、制度説明への過度な負担を懸念し、開始時期について検討を要望した。次のように述べた。
「今回、新たな考え方を導入するということ、それから現状の供給問題等から、慎重にまずはスタートすべきだというふうに思っております。その上で総論として、今回の選定療養を導入する意義が我が国の創薬力の強化とさらなる後発薬の使用促進、そのために従来とは異なるアプローチで後発品への置き換えを進めていくということをしっかりと理解をした上で、いまだに続く医薬品の供給問題には十分配慮していかなければならないというふうに考えております。医薬品の供給問題で薬局・医療機関の現場において相当な負担や混乱が続いています。このような状況が改善されないまま、今回の選定療養が導入されることとなると、現場での混乱が増し患者さんへの説明やご理解いただくために別途、さらなる時間や労力などを要することになります。また以前、薬剤一部負担金が導入された時にも現場はかなり混乱しているが、今回は同一の薬剤でも人によって選定療養となるケース、ならないケース、そもそも選定療養の対象となる薬剤・ならない薬剤が混在しており、それらの説明に現場での負担は薬剤一部負担金が導入されたとき以上に大きなものとなると予想されています。現場の負担については十分ご理解いただき、必要な配慮をお願いさせていただければというふうに思います。また施行するにあたっては、国が責任を持って国民への十分な周知をお願いいたします。導入時期については、来年の6月は診療報酬・介護報酬同時改定でもあり、レセコンのシステム対応の時間や国民への十分な周知広報なども必要であり、これらについては時間的余裕を持って対応すべきものと考えております。それから課題に示されている適用場面についてですが、概ね異論はありませんが、医療上の必要性があると医師の判断で認めた場合、その確認が処方箋で行えるなど容易に確認できるような仕組みや運用をすることをお願いできればと思います。また出荷調整等の影響により薬局に在庫がない場合など、後発品を提供することが困難な場合については給付対象とすべきと考えますし、その判断は薬剤師が行うべきと考えます」(森氏)と述べた。
加えて森氏は対象品目については、「課題に示されている考え方に異論はございません」とし、保険給付と選定療養の負担にかかる範囲については、「一定の割合を求めることで処方日数などによっては過度な患者負担を発生させる可能性があります。長島委員からもありましたけれども、患者負担増を最小限にとどめる割合するとともに、当該負担額を徴収することとしておく必要があると考えます」とした。