【中医協】アルツハイマー病治療薬「レケンビ」の薬価算定で薬価専門部会と費用対効果評価専門部会の合同開催へ

【中医協】アルツハイマー病治療薬「レケンビ」の薬価算定で薬価専門部会と費用対効果評価専門部会の合同開催へ

【2023.10.04配信】厚生労働省は10月4日、中央社会保険医療協議会(中医協) 薬価専門部会を開き、アルツハイマー病治療薬「レケンビ」(一般名:レカネマブ)の薬価のあり方等について議論した。


 同日の薬価専門部会では、薬価の議論の前にアルツハイマー病治療薬「レケンビ」(一般名:レカネマブ)の有効性、安全性に関わる内容が説明された。

 有効性については18か月(79週)時点のCDR-SBのスコアの悪化速度は、プラセボ群に対し本剤群では27.1%抑制(CDR-SBの悪化抑制効果について本剤群のプラセボ群に対する優越性あり)、CDR-SBのベースラインからの変化量について、本剤群とプラセボ群の群間差は-0.45であり、CDR-SBの悪化抑制効果について本剤群のプラセボ群に対する優越性が示された。また、投与18か月時点で本剤群ではプラセボ群と比較して約5.3か月のCDR-SBの悪化を抑制、本剤投与では、投与18か月時点のプラセボ群でのCDR-SBの悪化に至るまで、約7.5か月遅延させると推定。なお、CDRは6つの項目(記憶、見当識、判断力と問題解決能力、地域社会の活動、家庭及び趣味、身の回りの世話)それぞれの程度について、0(なし)、0.5(疑わしい)、1(軽度)、2(中等度)、3(重度)の5段階で示す臨床評価指標であり、各項目のスコアの合計がCDR-SBとして算出される。
 安全性については、アミロイド関連画像異常(ARIA)の発現割合について、ARIA-E(アミロイド関連画像異常-浮腫等)は、プラセボ群で1.7%、本剤群で12.6%、ARIA-H(アミイド関連画像異常-微小出血等)は、プラセボ群で9.0%、本剤群で17.3%であった。本剤投与により、ARIA-E及びARIA-Hが現れることがあり、重篤な事象も報告されていることを踏まえると、 ARIA-E及びARIA-H発現時に適切な対応が求められる。

 同剤の薬価については、薬価算定をどうするかという問題と、薬価収載後に価格調整をどのようにするかという課題の2つがある。

 薬価算定方法については、既存のルールによる算定方法では、類似薬効方式か、適当な類似薬がない場合は原価計算方式となる。類似性の観点も、既存の認知症薬は本剤と作用機序が異なることや認知症薬は化学合成品であることなどに留意する必要性がある。対象疾患は異なるものの、中枢神経系に作用する抗体医薬品は存在する。
 
 投与対象患者数については、最適使用推進ガイドラインにおいて患者要件、医師・施設要件が定められるため、製造販売業者が推計する薬価収載後10年間の投与対象患者数は限定的になる見込み。ただ、薬事承認された効能・効果から推定される有病者数を踏まえると、最適使用推進ガイドラインで要件を規定したとしても、今後の医療現場における使用状況等によっては、実際に投与される患者数は薬価収載当初の予測と比較して増加する可能性もある。
 さらに算定にあたり用いるデータに関して、製造販売業者から提出された薬価基準収載希望書では、承認審査に用いられた有効性・安全性に係る試験成績に関する資料以外に、介護費用等に基づく評価に関する内容が含まれている。介護費用の内容については、既存の薬価算定ルールにおいては評価が困難なもので、そういった評価を組み入れるためには本剤に限った特例的な取扱いを決めることが必須になる。

 薬価収載後の価格調整としては、市場拡大再算定があり、使用可能な医療機関の体制や使用実態の変化等により、収載時の予測よりも大幅に患者数が増加した等により年間販売額が極めて大きくなった場合(1,000億円超)は薬価算定方法(原価計算方式、類似薬効比較方式)にかかわらず再算定の特例を適用することとなる。市場規模は患者数のほか、患者ごとの投与期間においても変化しうるという問題がある。


 薬事承認から90日以内に薬価収載をする必要があり、本剤に限った特例的な取扱いを検討するにしても時間的制約がある。
 
 事務局は「本剤に関して通常の算定ルールとは別の取扱いを検討した方がよいか」、「投与対象患者数について、現時点における投与患者予測は限定的になる見込みであるものの、今後の増加の可能性を踏まえ、収載後の価格調整ルールも含め、本剤に関して別の取扱いを検討した方がよいか」、「 薬価収載までの期間(90日)は限られている中で、製造販売業者が提出している資料のうち介護費用に基づく内容の評価に関しては、費用対効果評価の枠組みにおける検討事項とされていることも踏まえると、それについてどのように考えるか」との論点を示した上で、「これらの議論を進めるにあたり、本専門部会と費用対効果評価専門部会における相互の検討状況を踏まえた上で、効率的に議論するため、合同部会として開催して検討することとしてはどうか」とした。

 委員からは合同開催に賛同する意見が出て、次回合同開催することになった。

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