【スイッチOTC推進の提言公表】「日本OTC医薬品学会の創設を」/日本パブリックアフェアーズ協会

【スイッチOTC推進の提言公表】「日本OTC医薬品学会の創設を」/日本パブリックアフェアーズ協会

【2023.10.02配信】日本パブリックアフェアーズ協会は10月2日、スイッチOTC 推進フォーラムを開催し、スイッチOTC化の推進へ向けた提言を公表した。


 協会では、日本においても個人輸入された偽造医薬品による健康被害が複数報告されていることを問題視。偽造医薬品の蔓延防止、加えて少子高齢化が進む中での良質な医療提供体制や国民皆保険制度の維持のために、国民が医療や医薬品とのかかわり方を見直す時期に来ているとし、スイッチOTC化の推進、そのプロセスにおける課題の解決が急がれると指摘する。その上で、セルフメディケーション推進を国の重要政策課題に位置づけていることからも、スイッチOTC化の推進に国はより一層積極的に取り組むべきであると強調。 スイッチOTC ラグを解決するために以下の5つを提言するとした。

 1. スイッチOTC医薬品ロードマップ委員会を設置し、スイッチOTC医薬品に関するKPIやロードマップを早期に策定する
 厚生労働省が2013年4月に 「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」を策定して以降、政府の想定より早いスピードで後発医薬品の使用割合が向上している。 その一方、スイッチOTC化に関しては、 規制改革推進会議の答申には「スイッチOTC医薬品に関するKPIやロードマップを策定する」ことが盛り込まれており、 厚労省は策定に前向きな姿勢を見せているものの、具体的な動きが見えておらず、 策定されるかどうかは見通せていない。 諸外国と比較しつつスイッチOTC医薬品に関するKPIやロードマップを早期に策定し、 国民のセルフメディケーション推進、健康寿命の延伸や Quality of life といった大局的な観点からスイッチ OTC化を積極的に推進する必要がある。

 2. 評価検討会議の運用を見直す (検討目標タイムテーブルを導入 KPI を達成するために議論すべき論点の明確化/要望書の提出から議論開始までの期限設定)
 先述した通り、本来スイッチ化する上での課題点を整理し、さらに、その解決策を検討する場である評価検討会議の目的とはそぐわない議論が多発している。 予め論点を整理しておくことで、そのような議論に時間を割くことを防ぐことができる。 また、スイッチOTC化の検討成分として要望書を提出してからも、学会へのヒアリング準備などを理由に検討開始まで時間を要している成分もあると思われる。 これがスイッチラグの一因となっていると考えられるため、 要望書の提出から検討開始までの期間もたとえば 「1年以内」と区切る必要があると考える。

 3. OTC 医薬品データベースを構築する
 OTCは医療用の薬剤と同様の有効成分を含むため、 併用禁忌などに注意を払う必要があるが、現状においてはOTC医薬品の購入履歴を個人に紐づけたデータベースは存在しない。そのため、今後は医療従事者も OTC に注意を払う必要がある。 そのため、次に挙げる
ようなお薬手帳と連動する各個人のOTC医薬品の購入履歴が把握できるデータベースの構築が必要であると考えられる。

 4. セルフメディケーション税制と連動したOTC医薬品お薬手帳を作成する
 今後 OTC医薬品が拡充された場合、セルフメディケーションに対する国民の行動変容を促す必要がある。 現行制度においてセルフメディケーションの推進のために 「セルフメディケーション税制」 が準備されているが、 前述のとおりアナログな申請方法で運用されている。昨今のネット環境の状況を見れば現行の申請制度が現代にそぐわないのは自明であることから、スマートフォンなどで管理できるデジタル OTC お薬手帳を国が作成し、そこからセルフメディケーション税制の申請も行える環境を整え、国民の行動変容を促すべきである。

 5. 日本 OTC 医薬品学会を創設する
 前述のとおり日本における OTC医薬品の活用に関するエビデンスの集積と、それを基に日本の医療制度に合ったOTC医薬品の活用方法を議論する公の場を設ける事で、 医師の行う専門治療とセルフケアのシナジー効果を最大限発揮する仕組みを構築することが重要である。また、上記の要望に関する様々な課題についても日本OTC医薬品学会で研究するとともに、OTC医薬品に関わる人材育成の場としても機能させるべきである。

 同協会は、「政官民学の叡智を結集した政策検討の場を創造し、 社会課題を解決する」ことを目指し2019年に設立された。これまで日本では、企業が個別の利益を追求するために、 政治家や官僚とのコネクションを利用して 「陳情」 を行う 旧態依然としたロビー活動が一般的だったとし、意思決定の透明性を確保する社会的要請が高まっている現在では求められていることは、市民、政治家、 行政、 学者が参加するオープンな議論と政策検討の場を用意する 「パブリックアフェアーズ活動」 だとしている。
 パブリックアフェアーズは、企業・団体等が事業目的の達成のため、公共・非営利分野や社会へ戦略的に関与する活動などを指す。

 フォーラムでは個人輸入による偽造薬問題も根深いとして、個人輸入の用途として多いダイエット、美容、育毛、性機能増強目的のED医薬品などを国内でスイッチOTC化することが防止の手立てになるとも指摘した。性感染症の検査薬のスイッチOTC化も意義があると指摘した。

 またフォーラムで講演した西島正弘氏(偽造医薬品等情報センターセンター長)は今回の提言に関して、特にOTC医薬品の学会を設立することについて意義が大きいとして期待を示した。

 上田薬剤師会常務理事の飯島裕也氏も、西島氏の意見に同調し、「学会が健康サポート薬局の研修などを責任をもって価値あるものにしていただき、販売が目的ではなく患者情報の収集を行い適切な受診勧奨を行うというOTC医薬品の在り方に変わってほしい」と述べた。

 日本OTC医薬品協会理事長の磯部総一郎氏は、「提言については本日うかがったために協会としての見解は後日検討したい」とした上で、個人としては提言にあるデータベース構築に関して、協会でもポータルサイト整備を進める議論をしているとし、電子版お薬手帳でAPIでデータ連携をして専門家とコミュニケーションをして選んだものを登録していく方向が考えられることを指摘した。さらにOTC医薬品にどのような成分が入っているかの共通コード整備も検討しているとした。「(使用者本人の)使用量まで把握することは難しいとは思うが、(製品の)情報収集することで使用成分の把握にもつながっていく意味がある話だと思う」(磯部氏)とした。

 フォーラムで基調講演した日本医療伝道会衣笠グループ理事の武藤正樹氏は、今後の活動について、「まずは厚労省のセルフケア・セルフメディケーション推進室にKPI設定などについて働きかける」との考えを示すとともに、「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議の運用の見直しも働きかける」とした。

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