日薬の森氏は、在宅医療に関して、在宅患者の数は2040年以降にピークを迎えると言われており、薬局薬剤師は今後、さらに増加が見込まれる在宅医療のニーズを的確に捉えかかりつけ医をはじめとする職種との連携を通じて在宅においてもより質の高い薬物治療を提供していかなければならないとの前提を指摘。
その上で、そのためには地域の薬局において在宅医療の受け入れ態勢だけでなく、医療用麻薬の適時適切な提供やターミナルケアへの参画、夜間休日の緊急時の対応など質・量の両面から地域において必要な薬剤サービスが提供できるよう体制の整備を進めていくことが必要だとした。
具体的な評価事項については、医師との同行訪問への評価を要望。「在宅医療における他職種との連携をさらに推進できるよう、例えば医師の訪問に同行した場合などについて評価を含めて検討していく必要があると考えます」と(森氏)述べた。
さらに、高齢者施設への薬剤師の関与拡大の検討を提案した。
「薬剤師による高齢者施設等への訪問についてですが、資料145ページにある各施設類型における課題について、さらなる薬剤管理の推進の観点から、今回の(介護給付との)同時改定で、それぞれの施設の特性を踏まえた形で検討して評価を見直していくべきと考えます」(森氏)とした。
日薬・森氏、医療材料のいわゆる逆ざや問題への対応を要望
さらに緩和ケアや医療材料の逆ざやなど、現場の薬局・薬剤師が抱える課題についても提示。
緩和ケアについては、医療用麻薬の取り扱いについての報酬上の評価が必要だとした。医療用麻薬はさまざまな成分・規格・剤形の医療用麻薬が流通しているため、患者の状態等に応じた使い分けが必要であることを指摘。医療用麻薬を取り扱うには法令による規制に従う必要があることにも触れ、「地域のさまざまな医師の処方に対応するために多くの成分・種類を取り揃え、備蓄管理を行うことは薬局にとって管理コストのみではなく廃棄ロスも含めて大きな負担となっています。 このあたりについては報酬上で何かしらの配慮が必要かと考えます」(森氏)と述べた。
終末期への関わりについても現場の負担を指摘。終末期では患者の状態が刻々と変化するため緊急時対応や頻回な訪問が必要な場合があるとし、特に緊急時の対応については時間外対応の視点も重要と説明。「このような対応は薬局にとって大きな負担となりますので、現状の緊急訪問の評価だけでなく、頻回の訪問や時間外対応に関しても何らか報酬上での配慮が必要と考えます」とした。加えて、地域で支える視点を提示。「参考資料77ページで示されている通り、夜間休日の対応は地域で支えるという観点も必要で、このような対応が出来る薬局は周辺の薬局と連携して対応することを含め、地域でそのことが分かるようにしていくことも必要と考えます」とし、「これから各都道府県において第8次医療計画の中でも整備を検討、予定されていると思いますが、これからは地域において行政と薬剤師会医師会や関係団体が連携して対応するという取り組みを進めていくことも1つの考え方ではないかと思います」(森氏)と述べた。
在宅中心静脈栄養法加算と在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算については、介護保険での算定もできるようにしてほしいとした。現在は医療保険では算定できるが、同じ業務を行っても介護保険では請求ができない状態となっている。
医療材料のいわゆる逆ざやについては、薬局現場から多くの意見が出ていると指摘。同日の中医協資料でも、医療材料の償還価格が仕入れ価格を下回る、いわゆる逆ざやが約40%あると示された。逆ざや問題に関しては日本薬剤師会に多くの意見が寄せられているとし、医療材料は各種規格の取り揃えや包装単位の問題もあるとし、「在宅対応を行う中で医療材料を扱う場合の評価についても対応が必要と考えます」(森氏)とした。