通常の薬局営業時間外、夜間・休日においても薬局で抗原検査キットを販売してほしいとの要請が国、都道府県から出されたのは、第7波がおそっていた2022年の7月22日だった。
この要請を受けて八戸薬剤師会では会員薬局に対して「地域の医療インフラである薬局として」「できる範囲内」での協力について声がけを行った。
その結果、8月17日時点で会員薬局146薬局中、92薬局から販売の意向が寄せられ、そのうち62薬局からは通常営業の時間外で販売に協力するとの回答があった(時間外は電話対応を含む)。なお、同薬剤師会の圏域内の薬局組織率は「ほぼ会員」という。
実際の販売時間帯はもともとの各薬局の営業時間によってまちまちにはなるが、「それぞれの薬局の無理のない範囲で協力することが重要との考えがあった」と八戸薬剤師会会長の阿達昌亮氏は話す。その上で、各薬局の販売時間などについて八戸薬剤師会のホームページで公開。地域における販売状況を地域の住民に伝える役割を果たした。
八戸薬剤師会では同年8月から2023年1月までの販売実績の調査も実施。調査を担ったのが八戸薬剤師会理事(青森県薬剤師会理事も兼務)で職能対策委員会の委員長を務める西原大介氏(やすらぎ薬局)だ。
結果について西原氏は、「会員薬局には大手も中小(規模)もある。組織的に急な時間外に対応できないものの時間内には比較的多数の販売で貢献できる“大手”と、営業時間外にすぐに対応できる小回りの利く“中小”規模薬局で役割分担しながら、薬局、薬剤師の集団として対応することができた」と総括する。根底には抗原検査キットは対面で販売し使用方法等を丁寧に説明することが適切との思いもあった。また、実際の販売時間をみると、98%は営業時間内であった。
自治体との交渉も薬剤師会が窓口になることでうまく回すこともできていた。具体的には処方箋応需義務に関してキット販売目的の時間延長では応需しない特例を認めてもらったという。地域ごとの取り組みの典型ともいえるが、西原氏は、「地域包括ケアはあくまで手段」との思いも語る。「目的(薬局でいえば医薬品の過不足ない供給)が果たせている現状があるのか」と昨今の医薬品供給問題に直面しなお疑問を投げかける。阿達会長は「地域の薬局同士の連携がなくしてできない。個店、チェーンの種別と関係なくカバーし合えるネットワークができていけば」と語る。どんな姿、仕組みで応えるべきなのか、真摯な向き合いは続く。

【コロナ禍の薬局】時間外に抗原検査キット販売協力/八戸薬剤師会(青森県)の事例/会員146薬局中62薬局が対応
【2023.05.31配信】5類移行となったコロナ。これまでの間、薬剤師会、薬局、薬剤師はどのような活動をしてきたのか。ワクチン接種会場での協力や患者自宅への治療薬のお届けなど、その貢献は数多いが、本稿では八戸薬剤師会の事例から抗原検査キット販売協力への対応を取り上げたい。社会からの要請に応える形で、会員薬局の4割がイレギュラーな営業時間外で販売対応した。
関連する投稿
【抗原検査キットの販売実態】偽陰性の可能性説明、遵守低い結果/厚労省
【2023.09.01配信】厚生労働省は9月1日、「医薬品販売制度実態把握調査」の結果を公表した。今回の令和4年度調査では、一般用新型コロナウイルス抗原定性検査キットの販売時の情報提供の状況に係る調査も実施した。同品の販売にあたっては厚労省が販売時に偽陰性の可能性があること等について特に丁寧に説明することなどの留意事項を示しているが、これらの事項について情報提供を行っていた割合は低い結果だった。
【2023.05.08配信】ウエルシアホールディングスは5月8日、コロナ5類移行後も検査立会を継続するとリリースした。
【医学生物学研究所】一般用コロナ抗原検査キット販売開始/12月15日から/「GLINE-2019-nCoV Ag キット(一般用)」
【2022.12.13配信】JSR 株式会社のライフサイエンス事業のグループ企業である株式会社医学生物学研究所(取締役社長 山田 公政氏、以下「MBL」)は、2022 年 11 月 11 日に一般用検査薬(第 1 類医薬品)として厚生労働省の承認を受けた新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗原検査キット「GLINE-2019-nCoV Ag キット(一般用)」を、2022 年 12 月 15 日から発売開始する。
【日本薬剤師会】抗原検査キットの販売体制整備へ/日本保険薬局協会や日本チェーンドラッグストア協会とも協力
【2022.11.25配信】日本薬剤師会は11月25日に定例会見を開き、抗原検査キットの販売体制強化について、日本保険薬局協会や日本チェーンドラッグストア協会とも協力して取り組む方針を示した。抗原検査キットをめぐっては、全国知事会などでも休日などの販売体制拡充を求める声が出ていた。
【検査キット問題】埼玉県薬剤師会・斉藤祐次会長「再周知・徹底する」
【2022.11.21配信】コロナの第8波やインフルエンザとの同時流行への対策が進められる中、抗原検査キットの販売体制の不備を指摘する声が大きくなっている。大野元裕・埼玉県知事は11月18日、埼玉県薬剤師会に対して“休日対応”への要望を行った。この件について、埼玉県薬剤師会会長の斉藤祐次氏は本紙に対し、18日の時点で大野知事からコロナ検査キットの「販売体制の充実について」との要望を受け取ったとした上で、会員への再周知・徹底など、「しっかりと対応していきたい」と話した。
最新の投稿
【健康サポート薬局研修実施機関】チェックリスト通達“地域の事情に精通した講師”を/日本薬学会
【2023.09.22配信】日本チェーンドラッグストア協会などは9月22日、定例合同記者会見を開いた。この中で、日本薬業研修センターは、健康サポート薬局研修の「指定確認機関」である日本薬学会から健康サポート薬局研修実施機関に対してチェックリストが通達されたと報告した。同研修については、実施研修期間は、実施要領及び研修内容について「指定確認機関」である日本薬学会に届け出た上で、確認を受けることとされている。日本薬業研修センターは実施機関に当たる。
【ホームケアIoT】薬局とオンライン服薬指導で連携/リンクジャパン社とメディバリー社
【2023.09.21配信】AIとIoT技術で住宅機器をリンクするホームIoTプラットフォーム「HomeLink」を開発・提供する株式会社リンクジャパン(東京都港区)は9月20日、薬局を運営する株式会社メディバリー(東京都文京区)とオンライン服薬指導で連携すると公表した。
【日本薬剤師会】政策提言(2023年9月)全容/「過大な薬価差」に言及
【2023.09.20配信】日本薬剤師会は9月20日、定例会見を開き、改訂した政策提言の内容を説明した。9月16日の都道府県会長協議会の場で公表、説明していたが、同日の会見では会長の山本信夫氏が改めて説明したもの。
【日薬学術大会】「ポスター優秀賞」決定/外来がん治療患者へのフォローアップの効果/株式会社フロンティア フロンティア薬局日立店ほか
【2023.09.19配信】日本薬剤師会は「第56回日本薬剤師会学術大会」の「ポスター優秀賞」の選考結果を公表した。ポスター優秀賞審査委員会において、学術性、新規性、将来性、医療等への貢献等、総合的な観点から審査を行ったもの。最優秀賞(1題)には、「保険薬局薬剤師の継続的フォローアップが外来がん治療患者の服薬アドヒアランスと健康状態に与える効果」が選ばれた。フォローアップが「有害事象の重症化」維持・軽減に有意に関連していた。
【敷地内薬局】256軒から371軒へ、ここ1年で115軒増加/日薬森副会長「まだ出すのか」
【2023.09.16配信】日本薬剤師会は9月16日、都道府県会長協議会を開催した。