【インタビュー】就任2年目を迎えた日本チェーンドラッグストア協会会長・池野隆光氏

【インタビュー】就任2年目を迎えた日本チェーンドラッグストア協会会長・池野隆光氏

【2020.07.27配信】日本チェーンドラッグストア協会が変わろうとしている。今年8月21日には一般社団法人化する。その目的を池野隆光会長は「より透明性ある公器を目指すため」と説明する。根底には他団体、他業種、関係各所との連携を強化すべき局面との考えがある。今回のインタビューで分かったのは、理念の先に、ドラッグストア産業の成長というゴールをしっかりと見据えているということだ。ウエルシアホールディングスという国内ドラッグストアトップ企業を長年率いてきた池野会長は、人口減少下で成長することがどれほど難しいかを知っている。その中で今までにない連携による広がりが必須とみる。


 日本チェーンドラッグストア協会が変わろうとしている。今年8月21日には一般社団法人化する。その目的を池野隆光会長は「より透明性ある公器を目指すため」と説明する。根底には他団体、他業種、関係各所との連携を強化すべき局面との考えがある。
 これまで「尊敬される企業集団」を標ぼうするなど、理念を掲げてきた池野会長。今回のインタビューで分かったのは、理念の先に、ドラッグストア産業の成長というゴールをしっかりと見据えているということだ。ウエルシアホールディングスという国内ドラッグストアトップ企業を長年率いてきた池野会長は、人口減少下で成長することがどれほど難しいかを知っている。その中で今までにない連携による広がりが必須とみる。それがなければ、「ドラッグストア産業の急速な衰退すらもあり得る」と語った。

公器としての団体にするべき

 ――就任2年目を迎えられました。就任当時からこれまでを振り返ってみていかがですか。
 池野 会長就任の話をいただいた時は、ちょうど私が体調もよくない時だったんですね。どうだろうか、という思いもありましたが、協会のみなさんが大変困っていた。主要メンバーが高齢化もしていますし、一方で若い世代にも渡しきれない状況がありました。そんな事情を考え、「お受けします」とお答えしたのです。
 会長として何をやるのか、という思いもありました。私は、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は大きな方向性を考える団体であって、営利性のある事業はあまりやるべきではないと思っていました。JAPANドラッグストアショーは協会運営を業界内外にアピールする特別なものなのですが、営利性の高い事業を積極的に行っていくと、団体の目的が変質することがあると思います。
 ドラッグストア産業が10兆円を目指していく時に、JACDSの社会的な責任も大きくなりますし、公の団体であるという意識が重要になってくると考えています。そのことを強く意識する必要があると思います。協会もそうですし、それぞれの地域で、それぞれの会社も、「この地域にドラッグストアがあってよかった」と思われる存在になっていったらいいと思っています。
 協会の会長をお受けして、そういう方向への地ならしができるなら、という思いでした。その考えは今も変わっていません。
 ――所期の思いを実践していく中で、ハードルや壁などはあったのでしょうか。
 池野 まだまだメンバーと話し合う場が必要だとは思っていますが、意外なほどに、「協会はこの方向性であるべきだ」という長期的なレールが敷かれていない、というのが率直な感触でした。ですから、「協会はこちらに向かっていこう」ということを、むしろこれからもっと明確にしていく必要があると感じています。
 ――20年の歴史がある中で、今回、一般社団法人化するということになりました。
 池野 詳細は8月21日の設立会見でお話ししますが、やはり元・事務総長の宗像守先生の逝去が大きかったのは事実です。
 宗像先生が追いかけている夢が、協会の方向にも合致していた。その時はよかったのですが、いま、宗像先生という存在がなくなり、協会も公器を目指していくという中にあっては、いろいろなことを外部から見ても透明性のある形にしていく必要があると考えています。
いまは透明性がないと申し上げているのではないのですが、できる限り公益性ある団体を目指して、より一層、透明性を持たせていきましょうと。その手法として、一般社団法人化があったということです。
 一般の企業でも、一定の規模以上になれば外部の監査を受ける必要性が出てきたり、変化していきます。協会も21年目にして、そういう時期にちょうど差し掛かったのではないかとも思っています。
 メンバーからも賛同の意見が多かったです。

人口減少下では連携が成長の糧に

 ――さきほど、意外に長期的なレールが敷かれていないとおっしゃいましたが、協会設立当初に比較すると、協会が共通として掲げる問題や、求心力というのは複雑化していると思います。求心力をどこでつくっていきますか。
 池野 10兆円産業を目指して、コンビニエンスストア業界と肩を並べるつもりがあるのであれば、同等の社会的インフラとしての機能を持つ必要があると思います。
 今のドラッグストア産業がコンビニエンスストア業界ほどの機能を持っているかというと、現状ははるかに及ばないと私は思っています。
 例えばコンビニエンスストア業界が振興したことによって、世の中が変わりましたよね。ドラッグストア産業も世の中を変えるほどのインパクトを社会に提供できるようになるべきだと思います。生活が一変するような産業にドラッグストアがならなければ大きな成長はできないと思います。そうでなければ産業として急激にシュリンクする可能性すらあると思っています。
 大きく成長するためには、「わがドラッグストア産業だけが伸びればいいんだ」とか「わが企業が伸びればいいんだ」という考えでは、難しい時代だと感じています。ドラッグストアだけで地域の生活者の満足をかなえることはできません。そうであるならば、スーパーマーケットであるとか、他業種と一緒になって地域の少子化や高齢化という問題に取り組んでいく姿が求められると思います。
 ――連携を推進していくことが、一つの方針であり、求心力になっていくというお考えなのですね。
 池野 かつて人口が増えていく局面では、お店をつくることによってインフラになっていく側面もありましたが、人口が減っていく時には場合によっては店の数を減らしながらも成長するということが必要になるのです。
 それができるかというと、本当に幅広い連携というのが鍵になるはずです。小売業だけの連携でも困難ですし、メーカーなどのサプライチェーンとしての連携、あるいは家電メーカーとの連携など、これまで以上の連携が必要になると思います。人口が減るということはそういうことだと、私は理解しています。
 就任当初から他団体に挨拶に回り、「一緒にできることがあるはずだ」とお話ししてきています。
 他団体と考えが違う点があるのは当然です。共有できる点があるのであれば一緒に取り組むべきだと考えています。どちらの主張が正しいかどうかを議論するということは全く考えていません。それぞれの立場を尊重して、情報交換していくことが重要だと思っています。
 ――特に日本薬剤師会と日本保険薬局協会との連携は、業界では驚きをもって受け止められていたと思います。
 池野 今回の新型コロナウイルスの問題、オンラインを活用した服薬指導の問題、これからの在宅医療の問題、すべて薬剤師の働き方に関わることです。どのような問題があって、どういった解決策があるのか、今後も情報交換をする意味は大いにあります。
 特に新型コロナウイルス感染症がもたらした影響は、それこそ、世の中を変えるインパクトがあると思います。目先の事例で良い・悪いを判断するのは危険で、先をみて、3団体でもしっかり議論する必要がありますし、あるいはJACDSの中でも話し合っていく必要がある問題だと思っています。
 オンラインの活用に関しては政治的なハードルも高い一方、便利な方に変わっていくのも世の中の常です。
 変わらなければいけない、変わらざるを得ない状況が迫っているのは事実です。

人口減少下での成長には幅広い連携が鍵と話した池野会長

協会地方支部の動きの活性化も

 池野 協会内部もあまりにも「こうでなければならない」という限定的な見方である必要はなく、加盟企業それぞれの考えを尊重していくことが重要だと思っています。
 調剤を重視する会社があってもよいですし、そうでない会社があってもよいわけで、産業として成長していく時に富士山の登り方はいろいろあるけれど、富士山に登れたね、という結果があればいいのだと思います。
 ――具体的な政策として、例えば「スイッチOTCを推し進める」といった標ぼうはされませんか。
 池野 これまで申し上げたのは大きな理念のお話なのですが、個別の問題に関しては、協会としての政策は出てくると思います。
 医薬品を扱う産業として、生活者の方々のことを考えた時に、「スイッチOTCは多い方がいいのかどうか」といえば、それは明らかに多い方がいいわけです。制度の規制には協会としても対応していく必要があります。スイッチOTC化は、生活者の健康を守るためには大変重要であります。スイッチOTC化促進を要望してまいります。
 検体測定室をはじめ、ドラッグストアができることはもっとたくさんあると思いますから、規制でできないものに関しては、一つ一つ、それを改善していけばよいと思います。
 こういった問題は各社で対応するのは困難ですから、協会として対応していきます。JACDSが、社会との関わりを変えていく、あるいは考えを発信していく基地としての役割を持つことは重要です。
 ――JACDS三重県支部が三重県と提携するなど、地方ごとの動きも出てきていますね。
 池野 これから増えるかもしれませんし、増えることは良いことだと思っています。
 全国一律という時代ではないと思いますので、例えば大阪ならできることや、福岡ならできること等があると思います。

ドラッグストアでエアコンを売る時代に!?

 ――今日、お聞きしたかったテーマの一つが新型コロナウイルスの影響なのですが、ドラッグストアへの影響をどのように総括していますか。
 池野 東日本大震災の時も、台風・豪雨の時もそうだったのですが、「何かあった時にドラッグストアは役に立つ」ということを感じていただいたのではないでしょうか。
 それはドラッグストアが持っている商品の幅の強みなのです。衛生用品から日用品、食品までを供給することができる。ドラッグストアの持つ特徴は、将来に向けても強みになっていくと思っています。
 この潮流というのは、新型コロナウイルス感染症が終息したとしても続くのではないでしょうか。足下の業績をみても、マスクや消毒剤の特需だけでなく、全体として高い伸びになっていると思っています。
 ――コロナ禍後にドラッグストアが変化するところはありますか。
 池野 変わると思います。生活者の衛生観念が高まっている中で、ドラッグストアはその役に立っていく機能が高まると思います。消毒剤だけでなく、生活の中に衛生グッズが浸透していくのではないでしょうか。エアコンのような家電にも衛生機能付きが出てくると思います。
 そういったものをすべてまとめ、整理して紹介できる機能を持っていく必要があると思います。
 ――ドラッグストアの売り場でエアコンが並んでいる姿は、あまり想像できないのですが。
 池野 売り方は一律ではないと思います。カタログ販売や、通販活用など手法はいくつもありますが、商品を取り扱うことが重要だと思います。
 いまから5年経った時には、生活者が描くドラッグストアのイメージは相当変わっていると思います。
 一方、店頭においては、これまで震災などの経験がありましたが、あらためて普段から危機意識をもって対応マニュアルなどを整備しておく必要があると感じています。
 ――その中で、協会としてもやるべきことというのは出てきましたか。
 池野 情報提供だと思います。実際に協会のホームページで関連省庁の情報を総括するサイトをつくったり、協会からの情報収集や発信に努めました。
 ――レジ袋の辞退率調査と社会への発信も有意義でしたね。
 池野 これまでは感覚的に語っていた面もありましたが、数値として把握し、提示していくことが出来ました。
 レジ袋有料化の時期前倒しに関しては、提案した時に「まだ早い」と言われるのではないかと思っていたのですが、「ドラッグストアはこうした環境問題に率先して取り組むべきだ。それが当たり前だ」と、加盟社から賛意を得られました。これは、私はとても誇りに思っています。
 就任からこれまでの一番の成果かもしれません。
 やってみたら、お客さまの中からも「そういう時代ですね」という理解の声も少なくありませんでした。もちろん、そういった声ばかりではなかったのですが、もしかしたらドラッグストアが世の中の流れに遅れていた面もあったのかもしれないと思っています。
 レジ袋有料化については、いいタイミングで実行できたと思います。
 小売業はたしかにお客さまの声には弱いというところもあります。しかし、正しい方向性を見据え、信念をしっかりもって実行していくことも必要なのではないでしょうか。
 ――分かりました。ありがとうございました。

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