【厚労省_中医協】日医・長島氏、医療DXで3文書・6情報の共有に賛成の立場示す/費用負担支援も求める

【厚労省_中医協】日医・長島氏、医療DXで3文書・6情報の共有に賛成の立場示す/費用負担支援も求める

【2023.04.26配信】厚生労働省は4月26日に中央社会保険医療協議会(中医協) 総会を開き、医療DXについてをテーマとした。この中で、日本医師会常任理事の長島公之氏は全国医療情報プラットフォームで3文書(診療情報提供書および退院サマリー、健診結果報告書)、およびそれに含まれる6情報(①傷病名、②アレルギー情報、③感染症情報、④薬剤禁忌情報、⑤検査情報、⑥処方情報)を共有していくことに賛成の立場を示した。費用負担については支援を求めた。


中医協では、全国医療情報プラットフォームの構築や電子カルテ情報の標準化において、情報の共有にあたっての標準規格化された3文書(診療情報提供書および退院サマリー、健診結果報告書)、およびそれに含まれる6情報を普及促進し、医療の質向上のために活用していくことについてどのように考えるかを議題とした。

 これに対し、日医・長島氏は、「電子カルテ由来の3文書・6情報は現在すでに共有可能なレセプト由来の情報と比べて、臨床上の有用性がより高い内容でありますので、医療DXの目的である国民・患者の皆様への安心・安全でより質の高い医療提供が今以上に可能になることが期待できます。また医療機関にとりましても情報取得が効率化されれば負担軽減につながります。従って、推進すべきと考えます」と述べ、賛成の立場を示した。

 一方で費用負担への支援を求めた。「ただし、医療DX全般に言えることですが、仕組みの導入や維持のために医療現場の業務や費用の負担が増大し肝心の医療提供に支障をきたすようでは本末転倒と言えます。したがって医療DXの新しい機能が追加される場合には、医療機関側の導入時および毎日の業務負担ができるだけ小さくなるようなシステムを構築すべきであります。また費用に関しては必要かつ充分な支援がされるべきと考えます。負担軽減が最も有効な普及推進策にもなります」と述べた。

 そのほか、「診療報酬改定DX」については、総合的な判断が必要との考えを示した。
 「診療報酬改定が行われると医療機関では短期間で対応するために大きな業務負担が生じています。また電子カルテの回収のための費用も最終的に医療機関が保守やリース料などの形で負担しています。したがって資料24ページにありますように診療報酬改定DXでは医療機関における負担の極小化を目指すべきです。ベンダーに生じる負担軽減効果については運用保守経費等の軽減を通じて医療機関に確実に目に見える形で還元されるべきと考えます。また共通算定モジュールに関しては26ページにありますように医療機関の規模など実情に応じて標準型レセコンの提供も含む実際に役立つ対応が望まれます。診療報酬改定の施行時期後ろ倒しの期間に関しては、医療現場にどのような影響があるのか、ベンダーや医療機関の作業の短期集中をどの程度の期間延長すれば必要な効果が得られるのか、財政にどのような影響があるのか、あるいは改定の結果検証にマイナス面の影響をできるだけ生じさせない長さにするなどを考慮して総合的に検討する必要があると考えます」とした。

 さらに電子処方箋の活用についても、補助金の拡充が必要との考えを示した。
 「電子処方箋で最も期待される効果である重複投薬や併用禁忌のチェックが有効に働くためにはその地域のできるだけ多くの医療機関と薬局が参加している必要があります。しかし現在はまだ普及率がかなり低いのが最大の課題であり、各地域における普及促進が大変重要であります。普及の最大の阻害要因は本年2月に日本医師会が医療7団体と連名で厚労大臣に提出した電子処方箋導入に伴う補助金の拡充に関する要望でお示した通り、補助率と事業額上限の低さにあります。一つ目の論点で指摘したように普及のためには医療機関の導入維持の負担をできるだけ小さくする必要があります」とした。

 加えて、サイバーセキュリティ対策についても、公助としての補助金を求めた。
 「医療DXを推進するためには医療機関のサイバーセキュリティ対策の強化が必要不可欠であり対策には自助・共助・公助があります。最も重要なのは自助ではありますが、医療機関には対策を行うための人材教育費用が乏しく限界があります。 自助が可能になるための支援が必要です。そこで日本医師会では会員への共助としてサイバーセキュリティ支援制度を運用しております。国に対しては公助としての補助金を強く求めたいと思います。さらに国による人材育成・教育の充実も重要です。また必要と考えられる対策を行っている医療機関が避けようがないサイバー攻撃にあった場合もあるのではないかと考えます。まずはそういった状態がどのように具体的な状態であるのか、対応を検討する前に技術的な状況について事務局に示していただきたいと思います」とした。

 最後に「医療DXによる取り組みを診療報酬の中で評価することについてどのように考えるか」については、適切な評価が必要との考えを示した。
 「資料にありますようにすでにこれまでも医療DXに関連した診療報酬上の評価は存在しております。医療DXの普及や進歩によりさらに業務が効率化して医療従事者の業務負担を軽減する効果や情報共有をもとに地域医療連携が円滑化することで個々の医療機関の負担が軽減する効果が期待できます。したがって今後もその状況を注視しながら、医療DXを適切に評価していくべきと考えます」とした。


この記事のライター

関連するキーワード


中医協 医療DX

関連する投稿


【デジタル推進委員】薬局の薬剤師など1万人を任命/デジタル庁

【デジタル推進委員】薬局の薬剤師など1万人を任命/デジタル庁

【2024.06.25配信】デジタル大臣の河野太郎氏は6月25日の会見で、デジタル推進委員に薬局の薬剤師など1万人を任命したと公表した。


【日薬】骨太方針等でコメント/薬局情報のDX「質的向上に向けた大きな一歩」

【日薬】骨太方針等でコメント/薬局情報のDX「質的向上に向けた大きな一歩」

【2024.06.24配信】日本薬剤師会は6月24日、「経済財政運営と改革の基本方針 2024」及び「規制改革実施計画」等の 閣議決定を受けて、山本信夫会長名でコメントを発表した。薬局情報のDXに関する記載については「質的向上に向けた大きな一歩」として評価した。


【中医協】賃上げにかかる調査・検証について把握方法を提示

【中医協】賃上げにかかる調査・検証について把握方法を提示

【2024.06.14配信】厚生労働省は6月14日、中央社会保険医療協議会(中医協)診療報酬調査専門組織(入院・外来医療等の調査・評価分科会)を開催した。その中で賃上げにかかる調査・検証について把握方法を提示した。


【厚労省_中医協】マイナ保険証の利用実態を調査へ

【厚労省_中医協】マイナ保険証の利用実態を調査へ

【2024.06.12配信】厚生労働省は6月12日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開き、マイナンバーカードの保険証利用の利用実態等に係る医療機関・薬局へのヒアリングを実施することを了承した。


【厚労省_中医協】薬局の夜間・休日等における医薬品提供体制の状況調査へ/令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査の実施

【厚労省_中医協】薬局の夜間・休日等における医薬品提供体制の状況調査へ/令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査の実施

【2024.06.12配信】厚生労働省は6月12日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開いた。


最新の投稿


【厚労省】“研究用”抗原検査キット、薬機法で取り締まりの方向/該当性判断の上

【厚労省】“研究用”抗原検査キット、薬機法で取り締まりの方向/該当性判断の上

【2024.07.25配信】厚生労働省は7月25日に「厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会」を開催し、体外診断用医薬品の特性を踏まえた制度の見直しについて議論した。その中で「研究等の医療以外の用途を標榜する試薬の提供業者への対応」を議題とした。


【日薬】オーバードーズ問題でマニュアル作成を検討中

【日薬】オーバードーズ問題でマニュアル作成を検討中

【2024.07.24配信】日本薬剤師会は7月24日、都道府県会長協議会を開催した。


【厚労省】処方箋保存期間の検討を提示/薬局検討会

【厚労省】処方箋保存期間の検討を提示/薬局検討会

【2024.07.19配信】厚生労働省は、現在3年間となっている処方箋の保存期間について見直す方針を示した。「第7回薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会」で提示した。診療録の保存期間が5年となっている中、電子処方箋については処方箋を調剤済みとなった日から5年間保存するサービスを提供しているなどの環境変化を挙げている。今後、制度部会で議題とする方針。


【コンソーシアム】大阪市から調剤外部委託で4社8薬局が確認通知受領を公表

【コンソーシアム】大阪市から調剤外部委託で4社8薬局が確認通知受領を公表

【2024.07.19配信】薬局DX推進コンソーシアムは7月19日、大阪市から調剤業務一部委託事業の確認通知を受け取ったと公表した。


【日本保険薬局協会】健康サポート薬局と地域連携薬局「違いない」/厚労省検討会に意見書

【日本保険薬局協会】健康サポート薬局と地域連携薬局「違いない」/厚労省検討会に意見書

【2024.07.19配信】日本保険薬局協会は7月19日に開かれた厚労省「第7回 薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会」で意見書を提出した。「健康サポート薬局、地域連携薬局、地域支援体制加算届出薬局が描く薬局像は、小異こそあれ、分立させるほどの違いはない」とした。


ランキング


>>総合人気ランキング