要指導医薬品をめぐっては、ささえあい医療人権センターCOML理事長の山口育子氏が、ネット販売を広く認めた前回薬事法改正から一般用医薬品による救急搬送事例が増加しているとの調査結果もあることから、「ネット販売による問題を防ぐためにネット販売不可枠をつくるようなことは不可能なのか」と提案した。
また、日薬の森氏も、OTC医薬品にはダイレクトOTCといった広い対象者における使用経験が少ない状態で市場に出てくる医薬品もあることなどを挙げ、「(OTC医薬品は)需要者の求めで使うようになる。オンラインで販売してよいのかは慎重に考えるべきではないか」と述べた。
また森氏は区分の在り方については、「今の仕組みでは3年経つと、第1類医薬品へ移行してしまう。(それが)スイッチOTC医薬品の阻害になっているのであれば見直しも必要ではないか」とし、「対面の服薬指導が必要なものもあり、慎重な議論が必要。新たな分類をつくる、(リスク区分を)とどめることも必要ではないか」と述べた。
特定非営利活動法人ネットワーク医療と人権 の花井十伍氏も、ネット販売に一定の規制をかけることには賛同する意向を示した。花井氏は前回の薬事法改正時とネットの環境は異なっているとの考えを示しつつも、対面販売が適しているポジティブリストをつくり、それ以外はオンラインで可能などの体制にすべきとの考えを示した。医療用医薬品とOTC医薬品のオンライン活用の違いについては、OTC薬では医師からの診断や説明を受けずに利用者主体となる点で根本から異なるとの見方を示した。
他方、落合孝文弁護士(渥美坂井法律事務所・外国法共同事業)は、対面とオンラインで原則としては同様の手法にすることが重要との考えを強調した。診療でも対面ではなくオンラインであることもあると指摘した。
日本医師会常任理事の宮川政昭氏は、医薬品使用において「販売」という言葉が使われること自体に違和感を表明。「医療の中で医師や看護師、介護関係者が患者を中心にして連携する中で、医薬品だけが単独で出てきている」と指摘。「患者さんをみつめていくことをどう考えるのか。不都合が生じていることを私たちはしっかりみて、歯止めをかけたり、不都合を解消していくことを議論していく必要がある」との考えを示した。
【厚労省_医薬品販売制度検討会】日薬、区分“とどめおく”制度を要望/要指導医薬品の在り方の議論で
【2023.03.08配信】厚生労働省は3月8日、「第2回 医薬品販売制度に関する検討会」を開催し、要指導医薬品におけるオンライン服薬指導を活用した販売の是非や要指導医薬品の区分の在り方を議論した。この中で、日本薬剤師会副会長の森昌平氏は、要指導医薬品について、「3年でリスク区分が移行していく制度がスイッチOTCの阻害要因になっているのであれば見直すことも必要」とし、新たな分類をつくること、リスク区分を“とどめおく”ことも必要だとの考えを示した。
関連する投稿
【楽天三木谷氏】“濫用薬”の規制方向「撤回を」/デジタル社会構想会議で表明
【2024.04.24配信】デジタル庁は4月24日、第 9 回デジタル社会構想会議を開いた。この中で三木谷浩史氏(楽天グループ株式会社/一般社団法人新経済連盟)は厚労省の進める“濫用薬”の規制方向を撤回するよう意見した。
【医薬品販売制度】神谷政幸参議院議員に聞く/強まる規制改革の声、「横串を刺すのが政治の仕事」
【2024.02.22配信】「医薬品医療機器制度部会」にステージを移した医薬品販売制度改正。これまでと今後の展望について、自民党の「厚生労働部会 薬事に関する小委員会」の事務局長として議論の行方にも関わってきた参議院議員の神谷政幸氏にインタビューした。
【規制改革会議議事録】佐藤WG座長「成分の規制の必要も」/“濫用薬”の販売制度問題で
【2024.01.24配信】内閣府規制改革推進会議は、1月24日までに令和5年12月26日開催の会議議事録を公開した。その中で「健康・医療・介護ワーキング・グループ」(WG)の佐藤主光座長は濫用のおそれのある医薬品成分の規制などについて指摘している。
【2024.01.17配信】日本の厚労省検討会で議論の進展は少なかった“共用薬”問題。保険など複合的な問題がからむため、粘り強く、かつ包括的な議論が今後求められそうだ。「OTC薬を医師が処方するのはやはり非現実的なのか」と思ってしまいそうだが、ドイツにはすでに医師がOTC薬を処方する制度がある。そこで本紙では、今後の議論の少なからずの参考になるよう、ドイツの薬局開設者であるアッセンハイマー慶子氏に取材した。
【医薬品販売制度検討会とりまとめ議論】“濫用薬”、20歳での区別に日薬が最後まで反論
【2023.12.18配信】厚生労働省は12月18日に「第11回医薬品の販売制度に関する検討会」を開いた。この中で「濫用等のおそれのある医薬品」を対面・もしくはオンライン(画像)を用いた販売とする方向で議論をされてきたが、事務局は「20 歳以上の者が小容量の製品1個のみ購入しようとする場合」については、ネット販売を認める案を提示した。
最新の投稿
【東京都・厚労省】11月24日に「麻薬・覚醒剤・大麻乱用防止運動東京大会」
【2025.10.29配信】東京都薬務課は10月29日に定例会見を開き、令和7年11月24日(月曜日・祝日)13時30分から15時45分まで、令和7年度「麻薬・覚醒剤・大麻乱用防止運動東京大会」を開催することを説明した。今年は2年に一度の厚労省との共催年で、広い層に関心を持ってもらうため、多彩なタレントを招聘している。
【東京都薬務課】試買で指定薬物検出/前年9品目増の11物品から
【2025.10.29配信】東京都薬務課は10月29日、定例会見を開き、試買検査によって11物品から危険ドラッグを検出したことを説明した。9月29日に公表済み。前回公表の昨年11月の検査結果では2物品からの検出であり、薬務課では「11物品からの検出は多く驚いている」としている。今回の結果を受け、今後の試買を適切に行っていく方針。
【敷地内薬局】日医委員、診療所除外規定「削除も含めて検討すべき」/中医協
【2025.10.24配信】厚生労働省は10月24日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開き、「敷地内薬局」を個別事項として議論した。敷地内薬局を巡っては、令和2年度診療報酬改定において従来から存在する医療モールへの配慮として、「ただし、当該保険薬局の所在する建物内に診療所が所在している場合を除く」という「ただし書き」で除外規定が設けられていた。しかし昨今、特別な関係のある病院の敷地内にある保険薬局の同一建物に、別途診療所を誘致することで、ただし書きにより、特別調剤基本料Aの対象となることを回避する薬局事例などが問題になっていた。この問題に関連し、日本医師会委員は「ただし書きの削除も含めて検討すべき」と述べた。
【2025.10.24配信】厚生労働省は10月24日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開き、「敷地内薬局」を個別事項として議論した。この中で日本薬剤師会(日薬)副会長の森昌平氏は前回改定で答申書付帯意見に落ち着いた敷地内薬局の“グループ減算”について、「敷地内薬局問題の改善が見えないのであればこのグループ減算も含め、あらゆる措置を引き続き検討していく必要があると考える」と述べた。
【日本保険薬局協会】“48薬効”、一定販売実績は3カテゴリーのみ/調査公表
【2025.10.23配信】日本保険薬局協会は10月23日、定例会見を開き、「一般用医薬品等の取扱いに係る調査報告書」を公表した。それによると、地域支援体制加算の届出薬局等に求められる「基本的な48薬効群」に関して、1カ月間で販売実績があった割合が30%を超えたのはわずか3カテゴリーに留まったとした。協会では「一律的な備蓄」から、「地域医療のニーズや、薬剤師の専門的な知見に基づき推奨する品目を備蓄する」という、柔軟な仕組みを求めたい考え。