【青少年の市販薬乱用対策で】小学生向けくすり教育ショート動画を制作・公開/くすりの適正使用協議会/日本薬剤師会監修

【青少年の市販薬乱用対策で】小学生向けくすり教育ショート動画を制作・公開/くすりの適正使用協議会/日本薬剤師会監修

【2023.02.02配信】青少年の市販薬の乱用増加が問題となっていることを受けて、くすりの適正使用協議会は、小学生向けくすり教育ショート動画を制作・公開した。小学校からの「くすり教育」を促したい考え。


学校薬剤師、小学校の教諭・養護教諭など、くすり教育、薬物乱用防止教育に携わる人へ

 一般社団法人 くすりの適正使用協議会(東京都・中央区)は、小学校高学年向けに、薬物乱用防止教育で使える、くすり教育ショート動画「くすりのルール知ってるかな?」を制作し、2月2日より、同協議会と日本薬剤師会のHPで無料公開した。

 現在、青少年による市販薬の乱用が問題になっている。国立精神・神経医療研究センターの調査では、精神科で薬物依存の治療を受けた10代の患者において、市販薬が主な原因となったケースが急増しており、2020年調査では56.4%と1位になった。急激に市販薬の乱用問題が拡大していることがうかがえる(国立精神・神経医療研究センター「国内外における青少年の薬物使用の実態」による)。

 児童は、保護者の監督のもとで医薬品を使用するが、同協議会では、医薬品の使い方にはルールがあり、それを逸脱すると危険であることを幼い頃から知っておくべきだと考え、くすりにはルールがあることを伝える3分間のショート動画の制作を手掛けた。文部科学省健康教育調査官、横浜薬科大学教授協力のもと、日本薬剤師会が監修した。

 小学校で行われている薬物乱用防止教育に活用して、短時間で「くすりにはルールがあること」を解説し、続いて、使い方などにルールの無い薬物の内容に続けてもらうことを想定している。
 今後は学校薬剤師をはじめ、小学校の教諭・養護教諭など、くすり教育、薬物乱用防止教育に携わる方々に届けていく予定。

 日本薬剤師会と同協議会は2006年からくすり教育分野で連携しており、今回の教材は2017年に共同制作した中高生向け小冊子に続くもの。

 動画のポイントは以下の3つ(協議会リリースより)。
1. 薬物乱用防止教育の導入に使える
 小学校高学年で行われる薬物乱用防止教育の授業冒頭で、導入として電子黒板やタブレットなどで使えるよう、3分間のショート動画として制作しました。
2. 子供たちに人気のサッカーを導入題材に
 動画では、子供たちがよく知っているサッカーに「ルール」があるように、くすりの使用にも「ルール」があり、守らなければ危険なことを伝え、「薬物乱用」の指導につなげやすい構成としました。「ルール」を守らないくすりの不適正な使い方を盛り込み、どこが間違っているかを子供達同士でディスカッションできる構成になっています。
3. 解説スライド(PPT)、動画・解説スライドの活用ガイドも用意
 友達とくすりのやりとりをしない、決められた量を水又はぬるま湯で飲む、など小学生が知っておくべき「ルール」を解説するスライドです。動画視聴後の振り返りに活用してください。動画とセットで約10分を想定しています。動画と解説スライドを有効に活用いただくためのポイントをまとめた活用ガイドもご用意しました。

 麻薬・覚せい剤乱用防止センター理事長の藤野彰氏は次のようにコメントしている。
 「正しいくすりの使い方について、子どものときから理解しておくのは、とても大切なことです。そうしてこそ、薬はひとの役に立つわけですから。それはまた、薬物乱用とは何かを学ぶことにつながり、自分の健康を守り、友達に手を差しのべ、かけがえのない幸せについて考える、大きなきっかけとなるはずです」

 本動画の概要
監修:公益社団法人 日本薬剤師会
協力:鈴木 貴晃 文部科学省 初等中等教育局 健康教育・食育課 健康教育調査官小出 彰宏 横浜薬科大学 レギュラトリーサイエンス研究室 教授(前文部科学省 初等中等教育局 健康教育・食育課 健康教育調査官)
制作:一般社団法人 くすりの適正使用協議会
対象:小学校高学年(5、6年生)
ダウンロード:
くすりの適正使用協議会 くすり教育担当者のための教材サイト
https://www.rad-ar.or.jp/release/post?id=733e1e736463310c2d000384
日本薬剤師会ホームページ
https://www.nichiyaku.or.jp/pharmacy-info/use/link03.html

この記事のライター

関連する投稿


【“濫用薬”】デキストロメトルファン、「直ちに指定を」/嶋根研究班

【“濫用薬”】デキストロメトルファン、「直ちに指定を」/嶋根研究班

【2025.04.15配信】国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所は、「濫用等のおそれのある医薬品の成分指定に係る研究(2024年)」の報告書をホームページに掲載した。


【市販薬の乱用】中学生にも/過去1年間の経験率は1.8%、55人に1人/嶋根研究班

【市販薬の乱用】中学生にも/過去1年間の経験率は1.8%、55人に1人/嶋根研究班

【2025.04.15配信】国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所は、「飲酒・喫煙・薬物乱用についての全国中学生意識・実態調査(2024年)」の報告書をホームページに掲載した。


【東京都】“濫用薬”ネット販売でルール遵守の形骸化例を確認/監視事業で

【東京都】“濫用薬”ネット販売でルール遵守の形骸化例を確認/監視事業で

【2025.01.28配信】東京都薬事審議会が1月28日に開かれ、薬事監視指導に関連する事業内容について報告があった。


【社説】市販薬の濫用防止策こそ「地方創生」だ

【社説】市販薬の濫用防止策こそ「地方創生」だ

【2025.01.15配信】市販薬の濫用対策の見直しをめぐって、ドラッグストア業界やネット事業者関係者からの“経営視点”での議論の応酬が目に付く。その根底には現状のビジネスの継続に支障となるとの思惑がのぞく。しかし、濫用問題は孤立の問題や相談先の確保、もっと言えば人的なリソースなど、地域でどう若者など守るべき人を守っていくのか、という点に収斂される。地域の持続性をどう確保するのかという、すなわち、石破茂首相が就任以来、掲げてきた「地方創生」にも関わる問題だ。


【東京都薬務課】薬物乱用「都民大会」開催/市販薬OD問題を高校生とともに考える

【東京都薬務課】薬物乱用「都民大会」開催/市販薬OD問題を高校生とともに考える

【2024.10.30配信】東京都薬務課は10月30日に定例会見を開き、11月17日(日)に「麻薬・覚醒剤・大麻乱用防止運動都民大会」を開催することを説明した。今年は違法薬物だけでなく、市販薬の過量服用、いわゆるオーバードーズの社会問題化を受け、特定非営利活動法人八王子ダルク代表理事(施設長)の加藤隆氏の講演も実施。「薬物乱用防止高校生会議」の成果発表や、講師と高校生による「大切な自分を守るための薬物乱用防止授業」を通じて、青少年及びその保護者世代に薬物乱用防止を強く訴えたいとしている。参加は記事内のフォームより申し込みできる。


最新の投稿


【医薬品情報把握システムの検討活発化】薬剤師会“アクションリスト”実践へ/MSNW「LINCLEちいき版」を全国の都道府県薬へ提案中

【医薬品情報把握システムの検討活発化】薬剤師会“アクションリスト”実践へ/MSNW「LINCLEちいき版」を全国の都道府県薬へ提案中

【2025.08.08配信】日本薬剤師会が公表した「地域医薬品提供体制強化のためのアクションリスト」。このうちの1つの事項である「地域の医薬品情報の把握・共有の取組」。この実践へ向けて情報共有のためのシステム選定の動きも活発化してきた。こうした中、メディカルシステムネットワーク(MSNW)では、もともと地域薬剤師会と共に開発を進めてきた「LINCLEちいき版」の提案を強化している。すでに10以上の都道府県薬剤師会への提案を進行中だという。


【厚労省】保険調剤「確認事項」公表/2枚処方箋で投薬期間上限を超えるなど不適切事例

【厚労省】保険調剤「確認事項」公表/2枚処方箋で投薬期間上限を超えるなど不適切事例

【2025.08.08配信】厚生労働省はこのほど、保険調剤「確認事項」(令和7年度改訂版)を公表した。2枚処方箋を受け付けることにより、投薬期間上限を超えるなどの不適切事例を指摘している。


【東京都薬務課_危険ドラッグ】オピオイド受容体に働く成分を新規指定/水際対策の一環

【東京都薬務課_危険ドラッグ】オピオイド受容体に働く成分を新規指定/水際対策の一環

【2025.07.30配信】東京都薬務課は7月30日、定例会見を開き、7月3日に危険ドラッグに指定した成分について説明した。指定した3成分はいずれも興奮、陶酔又は幻覚作用等を有する。すでに厚労省でも医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律に規定する大臣指定薬物に指定され、令和7年7月13日をもって施行された。


【ドラッグストア協会】濫用防止薬に関わる業界販売ガイドライン、年内省令発出後の公表予定

【ドラッグストア協会】濫用防止薬に関わる業界販売ガイドライン、年内省令発出後の公表予定

【2025.07.29配信】日本チェーンドラッグストア協会は7月29日に定例会見を開き、改正薬機法で定める指定濫用防止医薬品の販売に関する業界ガイドラインに関して、年内をメドとする省令発出後に公表する見込みであることを説明した。


【ドラッグストア協会】参議院選挙結果報告/「本田顕子氏を本気で応援した」

【ドラッグストア協会】参議院選挙結果報告/「本田顕子氏を本気で応援した」

【2025.07.29配信】日本チェーンドラッグストア協会は7月29日に定例会見を開き、参議院選挙の結果報告をした。


ランキング


>>総合人気ランキング