【中医協答申】オンライン資格確認の評価/薬局にマイナ保険証持参なら1点、ない場合は3点/新設の「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」

【中医協答申】オンライン資格確認の評価/薬局にマイナ保険証持参なら1点、ない場合は3点/新設の「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」

【2022.08.10配信】厚生労働省は8月10日、中央社会保険医療協議会総会を開き、オンライン資格確認に関する診療報酬上の評価を議論した。事務局は現行の「電子的保健医療情報活用加算」を廃止した上で、マイナンバー保険証を持参した患者の負担を軽くする案を提示した。


 事務局は、現行の「電子的保健医療情報活用加算」を廃止し、「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」を新設することを提案した。

 新設の「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」では、「1」として、施設基準を満たす医療機関で初診を行った場合に「月1回に限り4点」を算定し、「2」として、「1であってオンライン資格確認等により情報を取得等した場合」に「月1回に限り2点」を算定できることとした。
 「2」の点数を「1」よりも低くすることで、マイナ保険証を持参した患者において負担を軽減する仕組みとなっているとした。

 なお、調剤については、「1」が「6月に1回に限り3点」、「2」が「 6月に1回に限り1点」。

 実施時期については10月からの適用。

 診療側は、この新たな評価に賛同したが、支払い側は反対。
 「国民の理解が得られていない」などを理由にした。

 診療側、支払い側の意見の溝は大きく、中医協として附帯意見を提示することになった。附帯意見では、新設はしつつ、「その評価の在り方について、算定状況や導入状況も踏まえつつ、患者・国民の声をよく聴き、取得した医療情報の活用による医療の質の向上の状況について調査・検証を行うとともに、課題が把握された場合には速やかに対応を検討すること」とした。

 最終的には支払い側も附帯意見に取り組まれることを前提に答申を了承した。
 医療DXが遅れることがないよう、同意したとした。

編集部コメント/“オン資”だけを特別扱いすることには違和感

 診療報酬改定の議論を長らく取材してきたメディアとしては、今回のオン資の加算だけが、特別視され過ぎていることに違和感を感じた。

 お薬手帳を活用した服薬指導など、医療の質を向上する取り組みには加算を設けてきたのが診療報酬の原則だからだ。

 オン資においても、人体に悪影響を及ぼす重複投薬を発見しやすくするなど、質の高い医療につながるものだ。平常時だけでなく、災害時や救急時など、普段の健康状態を把握した医療が受けられることにつながる。

 オン資への加算は、その原則にのっとったものでしかない。その議論が今回のように紛糾するのは、どうも、一般メディアでの報道など、“国民感情”に寄りすぎている感を拭えない。あるいは、医療の質を評価する診療報酬と、医療DXへのコスト負担の議論が交錯しているように映る。
 
 今回、支払い側は「国民の理解が得られていない」ことなどを理由に評価新設には反対したが、オン資推進自体には賛成している。国民への理解に時間はかかるかもしれないが、一方で医療機関・薬局にとっては保険請求ができなくなるような厳しいオン資の原則義務化が来年4月に迫っている。ジェネリック医薬品の推進時と同様に、その理解浸透は医療側や国だけでなく、支払い側の仕事でもあろう。

 最終的に大きな医療費の効率化にむすびつき、国民・患者の健康にメリットの大きい医療DXの取り組みが、今回の議論でつまづかないことを期待したい。

この記事のライター

関連する投稿


【オンライン資格確認】訪問診療等向けのアプリがスタート

【オンライン資格確認】訪問診療等向けのアプリがスタート

【2024.10.08配信】令和6年10月1日から、薬局の在宅業務を含む訪問診療等においてマイナ資格確認アプリが利用可能となった。 アプリを利用することで、目視確認による本人確認が可能になる。


【厚労省】オンライン資格確認、保険者による登録方法を徹底周知/誤登録事例受け

【厚労省】オンライン資格確認、保険者による登録方法を徹底周知/誤登録事例受け

【2023.05.16配信】厚生労働省は、オンライン資格確認における資格情報の誤登録事例を受け、保険者における登録方法の徹底を周知している。保険者による資格情報が本来の方法とは異なる方法で登録されたことが今回の事例の背景だと説明している。


【厚労省・疑義解釈を発出】令和5年4月からの調剤報酬特例措置/医療DXや医薬品の安定供給問題で/「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」「地域支援体制加算の取扱い」など

【厚労省・疑義解釈を発出】令和5年4月からの調剤報酬特例措置/医療DXや医薬品の安定供給問題で/「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」「地域支援体制加算の取扱い」など

【2023.02.01配信】厚生労働省は1月31日、事務連絡「令和5年4月1日からの診療報酬上の特例措置に関する疑義解釈資料の送付について」を発出した。調剤に関しては「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」、「地域支援体制加算の取扱いについて」などに関する内容となっている。前者は「オンライン資格確認の導入・普及に関する加算の特例措置」、後者は「医薬品の安定供給問題を踏まえた診療報酬上の特例措置」が講じられたことによるもの。


【第二次補正予算】訪問服薬指導でのオンライン資格確認システムで薬局への補助創設

【第二次補正予算】訪問服薬指導でのオンライン資格確認システムで薬局への補助創設

【2022.11.14配信】厚生労働省は11月11日、社会保障審議会医療保険部会を開催し、保険局関係の令和4年度第二次補正予算案の主な事項を説明した。それによると、訪問服薬指導などの場でもマイナンバーカードを使ったオンライン資格確認ができるシステム改修を行い、その導入に関わる費用を薬局に補助する。


【診療報酬改定10月改定分】“オン資加算”で疑義解釈(その1)/「電子的保健医療情報活用加算」廃止で10月から新設の「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」

【診療報酬改定10月改定分】“オン資加算”で疑義解釈(その1)/「電子的保健医療情報活用加算」廃止で10月から新設の「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」

【2022.09.05配信】厚生労働省は9月5日、オンライン資格確認にかかわる調剤報酬改定について、疑義解釈を出した。オンライン資格確認にかかわる加算については現行の「電子的保健医療情報活用加算」を廃止し、10月から「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」を新設することが決まっていた。マイナンバーカードを持参しオンライン資格確認を活用して情報を取得した場合は「加算2」として6カ月に1回1点、持参がない場合は「加算1」として6カ月に1回3点を算定する。


最新の投稿


【日本薬剤師会】定時総会会長演述/岩月進会長

【日本薬剤師会】定時総会会長演述/岩月進会長

【2025.06.29配信】日本薬剤師会は6月28・29日に第106回定時総会を開き、その中で岩月進氏が会長演述を行った。


【OTC医薬品の遠隔販売】支援システム構築へ/MG-DX社

【OTC医薬品の遠隔販売】支援システム構築へ/MG-DX社

【2025.06.26配信】株式会社サイバーエージェント(本社:東京都渋谷区、代表取締役:藤田晋氏)の連結子会社である医療AIカンパニー、株式会社MG-DX(本社:東京都渋谷区、代表取締役:堂前紀郎、以下「当社」)は、薬局特化型の接客AIエージェント「薬急便 遠隔接客AIアシスタント」において、OTC医薬品の遠隔販売に特化した新たなシナリオを構築したと公表した。


【薬学生】薬局就職者、奨学金利用率は平均上回る39.7%/日病薬

【薬学生】薬局就職者、奨学金利用率は平均上回る39.7%/日病薬

【2025.06.25配信】日本病院薬剤師会は6月25日に定例会見を開き、薬学生の4・5・6年生を対象した調査を行った。その結果、奨学金を利用している学生は33.8%。就職活動終了者921人のうち奨学金の活用者は320人(34.7%)だった。うち、保険薬局への就職者では奨学金の利用率は39.7%で平均を上回っていた。


【クオールHD】ローソン店舗でオンライン服薬指導提供へ

【クオールHD】ローソン店舗でオンライン服薬指導提供へ

【2025.06.23配信】クオール薬局等の保険薬局を運営するクオールホールディングス株式会社(東京都港区、代表取締役社長:中村 敬氏、以下クオール)と、KDDI株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長CEO:松田浩路氏、以下KDDI)はローソン店舗にてオンライン服薬指導が受けられる新たなサービスを開始すると公表した。


【日本薬剤師会】骨太方針への見解公表

【日本薬剤師会】骨太方針への見解公表

【2025.06.20配信】日本薬剤師会は6月20日、「経済財政運営と改革の基本方針 2025」及び「規制改革実施計画」等の閣議決定を受けて、見解を公表した。