事務局は、現行の「電子的保健医療情報活用加算」を廃止し、「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」を新設することを提案した。
新設の「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」では、「1」として、施設基準を満たす医療機関で初診を行った場合に「月1回に限り4点」を算定し、「2」として、「1であってオンライン資格確認等により情報を取得等した場合」に「月1回に限り2点」を算定できることとした。
「2」の点数を「1」よりも低くすることで、マイナ保険証を持参した患者において負担を軽減する仕組みとなっているとした。
なお、調剤については、「1」が「6月に1回に限り3点」、「2」が「 6月に1回に限り1点」。
実施時期については10月からの適用。
診療側は、この新たな評価に賛同したが、支払い側は反対。
「国民の理解が得られていない」などを理由にした。
診療側、支払い側の意見の溝は大きく、中医協として附帯意見を提示することになった。附帯意見では、新設はしつつ、「その評価の在り方について、算定状況や導入状況も踏まえつつ、患者・国民の声をよく聴き、取得した医療情報の活用による医療の質の向上の状況について調査・検証を行うとともに、課題が把握された場合には速やかに対応を検討すること」とした。
最終的には支払い側も附帯意見に取り組まれることを前提に答申を了承した。
医療DXが遅れることがないよう、同意したとした。
編集部コメント/“オン資”だけを特別扱いすることには違和感
診療報酬改定の議論を長らく取材してきたメディアとしては、今回のオン資の加算だけが、特別視され過ぎていることに違和感を感じた。
お薬手帳を活用した服薬指導など、医療の質を向上する取り組みには加算を設けてきたのが診療報酬の原則だからだ。
オン資においても、人体に悪影響を及ぼす重複投薬を発見しやすくするなど、質の高い医療につながるものだ。平常時だけでなく、災害時や救急時など、普段の健康状態を把握した医療が受けられることにつながる。
オン資への加算は、その原則にのっとったものでしかない。その議論が今回のように紛糾するのは、どうも、一般メディアでの報道など、“国民感情”に寄りすぎている感を拭えない。あるいは、医療の質を評価する診療報酬と、医療DXへのコスト負担の議論が交錯しているように映る。
今回、支払い側は「国民の理解が得られていない」ことなどを理由に評価新設には反対したが、オン資推進自体には賛成している。国民への理解に時間はかかるかもしれないが、一方で医療機関・薬局にとっては保険請求ができなくなるような厳しいオン資の原則義務化が来年4月に迫っている。ジェネリック医薬品の推進時と同様に、その理解浸透は医療側や国だけでなく、支払い側の仕事でもあろう。
最終的に大きな医療費の効率化にむすびつき、国民・患者の健康にメリットの大きい医療DXの取り組みが、今回の議論でつまづかないことを期待したい。