【薬局も擁するファンドのユニゾン】訪看大手のN・フィールドを子会社化/介護・福祉領域でファンドによる買収事例/M&A総合研究所調べ

【薬局も擁するファンドのユニゾン】訪看大手のN・フィールドを子会社化/介護・福祉領域でファンドによる買収事例/M&A総合研究所調べ

【2022.06.06配信】M&A総合研究所は6月3日、「上場企業M&A動向調査レポート(介護・福祉業版)」を発表した。2019年4月から2022年3月の3年間で上場企業が適時開示したM&Aに関する発表の中から、「介護・福祉業」関連企業を対象としたM&A取引を集計した。それによると、2021年3月期では、上場会社の非公開化案件が4件と最多件数。介護・福祉業を代表する大手ニチイ学館、N・フィールド、ツクイホールディングスが投資ファンド傘下になった。訪看大手のN・フィールドを子会社化したユニゾン・キャピタルは、株式会社地域ヘルスケア連携基盤(CHCP)を子会社として設立し、医療・看護・介護・薬局等の事業者を集約及び連携を推進している。


コロナ禍のファンドによる買収事例

 株式会社M&A総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 佐上峻作氏)は、上場企業M&A動向調査レポート(介護・福祉業版)』を発表した。
https://masouken.com/

 調査対象期間は2019年4月1日〜2022年3月31日。
 調査対象は、調査対象期間中に公表された、介護・福祉業を対象にした東証適時開示ベースのM&Aデータ。

 介護・福祉業におけるM&A取引件数は2020年の新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の影響は見受けられず安定的な件数推移。
​ 2019年4月1日〜2022年3月31日の3年間で公表されたM&A案件のうち、「介護・福祉業」関連企業を対象としたM&A取引件数を調査した結果、2020/3期は21件、2021/3期は24件、2022/3期は19件だった。本調査期間におけるM&A取引件数はコロナ発生前後で大きな変化はなく、安定的な件数推移となっていた。

 売り手の属性を見てみると、売却対象事業と同種の介護・福祉業を営む企業は一定割合存在するものの、2021/3期~2022/3期にかけては、「個人」の売却案件が多い傾向。介護・福祉業は創業者個人が比較的小規模に介護事業所や福祉用具事業所を営んでいる場合も多く、コロナの影響を受けて財務体力が低下したことで大手企業へ売却し、スケールメリットを生かすことにより事業効率化を図るケースが多かったのではないかと推察されている。

 2021/3期は、上場会社の非公開化案件が4件と最多件数。その内、介護・福祉業を代表する大手3社が投資ファンド傘下となる。

 M&A取引件数における買い手の属性を見てみると、2021/3期は他の期に比べ、異業種企業による買収が多いことが分かる。この異業種による買収のうち、4件が上場会社の非公開化案件であり、介護・福祉業の非公開化案件において過去10年間で最多件数となった。
 また、この内3件が投資ファンドによる買収案件となっており、業界において印象的な年になったとする。いずれの企業もコロナによる業績不振や先行きの不透明さ、事業の先行投資等を踏まえ、市場から一旦身を引き、短期的な利益追求ではなく長期的な視点を持って事業の立て直しを図るものと考えられると分析している。

 本調査期間における非公開化案件は以下の通り。

■取引事例1:米ベインキャピタルとニチイ学館とのMBOによる非公開化
 医療・介護関連事業を行う業界大手のニチイ学館は、マクロ環境に加え、介護施設の老朽化に伴う大型投資や人手不足による人件費高騰、更には経営体制の変革等、リスクを伴う事業構造改革が必要である中で、共に改革を推進するスポンサーとしてベインキャピタルに打診した。ベインキャピタルは、ニチイ学館の保有する医療関連・介護・保育・教育・ヘルスケア・セラピーという複数の事業ポートフォリオの中から成長ポテンシャルを有すると考えられる事業において成長投資を継続して強化し、経営リソースの最適配分を行うことで安定した収益基盤を確立させる方針。

■取引事例2:ユニゾン・キャピタルによるN・フィールドの完全子会社化
 精神科領域に特化した訪問看護事業大手のN・フィールドは、収益性低下に課題を持つ中で、長期的な視点での課題解決に向けて、外部パートナーとの提携を金融機関から提案され、その中でユニゾン・キャピタル(ユニゾン)の紹介を受けた。ユニゾンは、株式会社地域ヘルスケア連携基盤(CHCP)を子会社として設立し、医療・看護・介護・薬局等の事業者を集約及び連携を推進し、規模の経済の追求とオペレーションの高度化を通じたヘルスケアプラットフォームの構築を目指し、近年では医療機関や調剤薬局等を買収していた。ユニゾンのヘルスケア領域における豊富な投資実績とノウハウ等を活用したいN・フェールド側とユニゾン側の急性期病院、後方病院、薬局への支援に加え、訪問看護という在宅医療を提供する企業をグループ化することで効率的な治療供給体制を構築するという構想が合致する形となった。

■取引事例3:MBKパートナーズによるツクイホールディングスの完全子会社化
 介護事業大手であるツクイホールディングス(ツクイ)は、コロナによる感染拡大に伴い主力事業であるデイサービスの利用控え等による影響と先行きの不透明さ、介護報酬改定に業績が左右される不安定さを踏まえ、外部からの資本パートナーを検討していた。複数の入札候補者の中から、中長期経営計画の方向性が合致したMBKパートナーズが適すると判断。MBKパートナーズは、完全子会社後、取締役の過半数を派遣し、介護事業及び介護周辺事業を強化していく方針。

 なお、調査対象期間2019年4月~2022年3月の3年間において、2019年4月~2020年3月2020/3期、2020年4月~2021年3月を2021/3期、2021年4月~2022 年3月を2022/3期と表記している。

この記事のライター

関連するキーワード


ファンド M&A

関連する投稿


【ファーマライズHD】寛一商店グループから事業譲受

【ファーマライズHD】寛一商店グループから事業譲受

【2024.09.24配信】ファーマライズホールディングス株式会社は9月24日、寛一商店グループから一部の事業を譲受すると発表した。寛一商店株式会社(京都市)ほか8社は今年7月、東京地裁に会社更生法の適用を申請し、保全管理命令を受けていた。コロナ禍で業績が悪化、返済資金の捻出困難になったことが背景で、寛一商店は「可及的速やかにスポンサーを選定する」方針としていたもの。


【ウエルシアHD】とをしや薬局(長野県)がグループ入り

【ウエルシアHD】とをしや薬局(長野県)がグループ入り

【2024.06.03配信】ウエルシアホールディングスは6月3日、株式会社とをしや薬局がウエルシアグループの一員に参加したと公表した。


【たんぽぽ薬局】ミック・ジャパン(大阪市)のドラッグ事業など譲受へ

【たんぽぽ薬局】ミック・ジャパン(大阪市)のドラッグ事業など譲受へ

【2024.04.23配信】株式会社トーカイの連結子会社であるたんぽぽ薬局株式会社(岐阜市)は4月22日、株式会社ミック・ジャパン(大阪市)との間で、ミック・ジャパンが展開するリハビリデイサービス事業、ドラッグストア事業などの各事業の譲り受けについて基本合意に至ったと公表した。


【さくら薬局のクラフト】事業再生計画案が成立/投資ファンドによる全株式譲受の条件クリア

【さくら薬局のクラフト】事業再生計画案が成立/投資ファンドによる全株式譲受の条件クリア

【2023.01.26配信】さくら薬局を展開するクラフトは、1月26日、事業再生計画案が成立したと公表した。2022年10月14日には、取引金融機関の同意を得て事業計画案が成立することなどを条件として、日本産業推進機構グループ(NSSKグループ)から経営支援を受けることを公表していた。


【M&A】クオールがパワーファーマシー(栃木県、38薬局)の株式取得へ/栃木県でクオールが最大規模の薬局企業に

【M&A】クオールがパワーファーマシー(栃木県、38薬局)の株式取得へ/栃木県でクオールが最大規模の薬局企業に

【2023.01.10配信】クオールホールディングスは1月6日、株式会社パワーファーマシーの株式取得に関して株式譲渡契約書を締結したと公表した。


最新の投稿


【規制改革WG】事前処方・調剤の質疑への回答公表/在宅医療における円滑な薬物治療の提供で

【規制改革WG】事前処方・調剤の質疑への回答公表/在宅医療における円滑な薬物治療の提供で

【2025.05.01配信】規制改革推進会議「健康・医療・介護ワーキング・グループ(第5回)」が5月1日、開催された。その中で令和7年3月14日に開催された「第2回健康・医療・介護 WG」に関する委員・専門委員からの追加質疑・意見に対する厚生労働省の回答を公表した。


【東京都薬務課】健康食品試買調査結果、79%が違反/効能効果の標榜に販売店のチラシなども注意

【東京都薬務課】健康食品試買調査結果、79%が違反/効能効果の標榜に販売店のチラシなども注意

【2025.04.30配信】東京都薬務課は4月30日に定例会見を開き、都が毎年行っている健康食品試買調査の結果を説明した。124製品中、98製品、79%に不適正な表示、広告が発見されたという。医薬品的な効能効果の標榜を禁止している薬機法違反も多いが、景品表示法、食品表示法、特定商取引法などの違反も見られる、都では複数の法律で規制されている健康食品を取り扱う事業者に向けて講習会を開いており、講習会参加なども生かして法令遵守に取り組んでほしいとしている。


【厚労省_疑義解釈(その24)】DX加算のマイナ保険証利用率について

【厚労省_疑義解釈(その24)】DX加算のマイナ保険証利用率について

【2025.04.28配信】厚生労働省は4月25日、診療報酬改定についての「疑義解釈(その24)」を発出した。「医療DX推進体制整備加算」の施設基準の1つであるマイナ保険証利用率について回答。4月については在宅患者を分母から引いて構わないとしている。現在は通常の外来患者がマイナ保険証を利用した場合のみが反映されているため。5月以降については、居宅同意取得型のオンライン資格確認によるマイナ保険証利用件数が社会保険診療報酬支払基金から通 知するマイナ保険証利用率集計に含まれる予定。


【日本薬剤師会】電子お薬手帳ビューワー、他職種への周知を依頼

【日本薬剤師会】電子お薬手帳ビューワー、他職種への周知を依頼

【2025.04.26配信】日本薬剤師会は電子おくすり手帳簡易ビューワーアプリ「e薬 SCAN」について、他職種への周知依頼を都道府県薬剤師会宛てに発出した。


【財政審】 後発薬調剤体制加算等、政策目標の達成状況を踏まえ「必要に応じ報酬体系の再編を」

【財政審】 後発薬調剤体制加算等、政策目標の達成状況を踏まえ「必要に応じ報酬体系の再編を」

【2025.04.23配信】財務省は4月23日に財政制度等審議会「財政制度分科会」を開催した。


ランキング


>>総合人気ランキング