冒頭、事務局はオンライン資格確認を使って共有できる情報の追加について、手術情報については開始時期を後ろ倒しする方針を説明した。
日本医師会(日医)は提出した要望書の内容を説明。日医常任理事の長島公之氏は「手術情報は病名に直結する可能性が高く、機微性が一段と高い情報。万が一意図しない第三者に漏洩するようなことがあれば、当該患者に社会的に大きな悪影響を与えることになる」として、手術情報に関しては患者の一括同意からはずし、共有に関して個別に同意を得る仕組みを構築することを求めた。
オンライン資格確認での情報共有については、すでに特定健診情報とレセプト由来の薬剤情報の共有が可能となっている。今後は、①医療機関名、②診療年月日、③手術(移植・輸血含む)、④放射線治療、⑤画像診断、⑥病理診断、⑦処置のうち人工腎臓・持続緩徐式血液濾過・腹膜透析、⑧医学管理等・在宅医療のうち在宅療養指導管理料――などを対象に今年9月から運用を開始するとされていた。
このうち、手術情報については同意画面を別建てにする仕組みの提案となる。
この提案に対し、検討会では機微性の高い情報の慎重な取り扱いに賛同する声も聞かれたが、異論も出た。
宍戸常寿氏(東京大学大学院法学政治学研究科教授)は、「このタイミングで閣議決定をひっくり返すことにはならないのか」との危惧を示した。「手術の情報などの対象となる情報の拡大」は
令和3年6月の成長戦略で閣議決定されていたため。宍戸氏は「相当の理由が必要では」との意見も示し、「病名ははっきりしなくても見る人が見れば分かる情報」なども同じような議論になる可能性があるのではないかとの趣旨の発言を行い、今後の議論の進め方への影響も危惧した。
また、そもそも第三者へ漏洩するようなことがあってはならないのではないかとの意見も出た。
最終的に、委員から明確な反対表明はなく、手術情報については個別に同意を得る仕組みを構築した後に令和5年5月を目途に開始する方針となった。手術以外の情報については、今年9月より予定通り運用を開始する。また、マイナポータルを通じた患者が自身の保健医療情報を閲覧できる仕組みについては、手術情報も含めて今年9月より予定通り運用を開始する。

【オンライン資格確認】「手術」情報の共有時期を後ろ倒し/日医から「病名に直結する機微性の高い情報」との懸念示される
【2022.05.18配信】厚生労働省は5月17日に「第9回健康・医療・介護情報利活用検討会」を開いた。この中でオンライン資格確認を使って共有できる情報の追加について、手術情報については別途、同意を求める仕組みの構築が提案され、了承された。日本医師会が「病名に直結する機微性の高い情報」との懸念示したもの。これにより、手術情報については共有開始時期は令和5年5月を目処として後ろ倒しされることになった。
関連する投稿
【2024.10.08配信】令和6年10月1日から、薬局の在宅業務を含む訪問診療等においてマイナ資格確認アプリが利用可能となった。 アプリを利用することで、目視確認による本人確認が可能になる。
【厚労省】オンライン資格確認、保険者による登録方法を徹底周知/誤登録事例受け
【2023.05.16配信】厚生労働省は、オンライン資格確認における資格情報の誤登録事例を受け、保険者における登録方法の徹底を周知している。保険者による資格情報が本来の方法とは異なる方法で登録されたことが今回の事例の背景だと説明している。
【厚労省・疑義解釈を発出】令和5年4月からの調剤報酬特例措置/医療DXや医薬品の安定供給問題で/「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」「地域支援体制加算の取扱い」など
【2023.02.01配信】厚生労働省は1月31日、事務連絡「令和5年4月1日からの診療報酬上の特例措置に関する疑義解釈資料の送付について」を発出した。調剤に関しては「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」、「地域支援体制加算の取扱いについて」などに関する内容となっている。前者は「オンライン資格確認の導入・普及に関する加算の特例措置」、後者は「医薬品の安定供給問題を踏まえた診療報酬上の特例措置」が講じられたことによるもの。
【第二次補正予算】訪問服薬指導でのオンライン資格確認システムで薬局への補助創設
【2022.11.14配信】厚生労働省は11月11日、社会保障審議会医療保険部会を開催し、保険局関係の令和4年度第二次補正予算案の主な事項を説明した。それによると、訪問服薬指導などの場でもマイナンバーカードを使ったオンライン資格確認ができるシステム改修を行い、その導入に関わる費用を薬局に補助する。
【診療報酬改定10月改定分】“オン資加算”で疑義解釈(その1)/「電子的保健医療情報活用加算」廃止で10月から新設の「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」
【2022.09.05配信】厚生労働省は9月5日、オンライン資格確認にかかわる調剤報酬改定について、疑義解釈を出した。オンライン資格確認にかかわる加算については現行の「電子的保健医療情報活用加算」を廃止し、10月から「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」を新設することが決まっていた。マイナンバーカードを持参しオンライン資格確認を活用して情報を取得した場合は「加算2」として6カ月に1回1点、持参がない場合は「加算1」として6カ月に1回3点を算定する。
最新の投稿
【大木ヘルスケアHD】“推し活”キーに医薬品需要に気付き/目薬や喉ケア/秋冬商品提案で
【2025.06.15配信】ヘルスケア卸大手の大木ヘルスケアホールディングスは6月11日に、事業部説明会を開催した。来る6月17日(火)~6月18日(水)にTRC 東京流通センターで開く「2025OHKI秋冬用カテゴリー提案商談会2025 年 OHKI 秋冬用カテゴリー提案商談会」の事前説明会の位置付け。OTC医薬品に関しては、“推し活”市場の拡大を背景に、“推し活”をきっかけに需要に気付きを与える提案を実施することを説明した。
【骨太方針_閣議決定】「高齢化の伸び」に経済・物価動向の増加分を加算
【2025.06.13配信】政府は6月13日、「経済財政運営と改革の基本方針 2025」、いわゆる骨太方針を閣議決定した。医療・介護に関連しては、「高齢化による増加分に相当する伸びにこうした経済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分を加算する」と記載した。これまでは、社会保障関係費の伸びを高齢化の範囲内に抑える方針がとられてきた。薬剤師で参議院議員の神谷政幸氏はXで「税収増を踏まえた経営の安定化や確実な賃上げに繋がる対応がついに反映」と投稿。医療介護業界の声が届いたとの考えを示唆した。
【奈良県薬剤師会】「健康ハートの日 2025」に協賛/気になる“nara”測ろう血圧ポスター作成
【2025.06.12配信】奈良県薬剤師会(後岡伸爾会長)は、「健康ハートの日 2025」に協賛する。
【マイナ保険証】活用で「多重受診・過剰処方」発見効果/日本保険薬局協会調査
【2025.06.12配信】日本保険薬局協会は6月12日に定例会見を開き、「保険薬局における医療DX活用と業務貢献等の実態調査」の結果を説明した。「多重受診・過剰処方」の発見など効果がみられた。
【日本医師会】自公維3党合意に見解公表/病床削減と医療DXに「総論賛同」
【2025.06.10配信】日本医師会は6月9日、自由民主党、公明党、日本維新の会の3党合意についての見解を公表した。