【規制改革推進会議WG】調剤の外部委託、「刑事責任は受託側薬局の薬剤師」

【規制改革推進会議WG】調剤の外部委託、「刑事責任は受託側薬局の薬剤師」

【2022.03.15配信】内閣府の規制改革推進会議は3月15日、「第4回医療・介護・感染症対策ワーキンググループ」(WG)を開いた。この中で、これまでの議論で指摘のあった「調剤業務の外部委託における責任の所在」に関して、刑事的には受託薬局所属の薬剤師が責任を負うとの整理を示した。また、委託薬局においては民事(患者への契約責任)の責任は生じるものの、「外部に委託する場合においても、刑事責任・行政責任ともに、現行より重くなることは基本的にはない」とした。


 規制改革推進会議WGは、「責任の所在」について、整理した資料を提示した。

 この中で、「調剤行為の外部委託に関する責任分担について(日本法における整理)」として、次のようにまとめた。

• 処方箋を受領した薬局又は薬剤師の患者に対する民事責任は、調剤行為の委託前後で、重くはならない。
• 薬剤師については、所属する薬局(委託薬局)の判断で調剤行為を外部に委託する場合においても、刑事責任・行政責任ともに、現行より重くなることは基本的にはない。
• 記録の保管はより重要となる。

 図説においては、業務上過失致死傷等の刑事責任は別途、薬剤師法の法人処罰はありうるがあくまで薬剤師個人の処罰が前提となるとした上で、刑事責任は受託側の薬剤師だとした。また、薬剤師法上の免許取消等の行政責任についても受託側薬局の薬剤師とした。その他に、 委託薬局の開設者や受託薬局の開設者を対象とする業務停止や薬局開設許可取り消し処分も想定される(薬機法)とした。

 また、民事の責任については患者との契約責任として構成する場合には、委託薬局が責任を負うことが基本となるとし、他方、不法行為責任として構成する場合には薬局(使用者責任)と(専門資格者である)薬剤師個人の双方が法的責任を負う(また受託と委託は共同不法行為責任の可能性)とした。

 加えて、委託薬局と受託薬局の最終的な責任分担については、契約上薬剤の鑑査を行うこととされている当事者、過失割合等によって、委託薬局の責任に差異が生じうるとした。

 この資料は弁護士の國峯孝祐氏が提示したほか、別のWGで委員を務めている弁護士である落合孝文氏からのサポートも得られたものだという。

日本薬剤師会「薬剤師の職務は国民からの負託」/「処方箋を応需した薬剤師はその調剤の全ての責任を負う」

 一方、日本薬剤師会は会議側からの質問への回答の中で、「薬剤師(個人免許)の職務は国民からの負託」であるとした上で、「処方箋を応需した薬剤師はその調剤の全ての責任を負う」との考えを表明しており、会議側の整理とは乖離がある。

 また日本薬剤師会は、「組織対組織の委受託契約があったとしても薬剤師個人の責任は免れない」という考えに加え、「薬剤師(個人)の意図に反し、所属組織の決定による外部委託であれば、委託・受託の双方の当事者意識は、さらに希薄となることが懸念される」ともし、組織と薬剤師個人の意識の乖離を懸念する意見も提示した。

この記事のライター

関連する投稿


【規制改革WG】事前処方・調剤の質疑への回答公表/在宅医療における円滑な薬物治療の提供で

【規制改革WG】事前処方・調剤の質疑への回答公表/在宅医療における円滑な薬物治療の提供で

【2025.05.01配信】規制改革推進会議「健康・医療・介護ワーキング・グループ(第5回)」が5月1日、開催された。その中で令和7年3月14日に開催された「第2回健康・医療・介護 WG」に関する委員・専門委員からの追加質疑・意見に対する厚生労働省の回答を公表した。


【規制改革推進会議WG】訪看ステーションへの薬剤配置、輸液以外も再検討を/日本訪問看護財団

【規制改革推進会議WG】訪看ステーションへの薬剤配置、輸液以外も再検討を/日本訪問看護財団

【2025.03.14配信】規制改革推進会議「健康・医療・介護ワーキング・グループ」が3月14日に開かれた。


【規制改革推進会議WG】提案「調剤前に薬局で登録医師の確認が必要な医薬品の確認方法の統一」

【規制改革推進会議WG】提案「調剤前に薬局で登録医師の確認が必要な医薬品の確認方法の統一」

【2025.03.06配信】3月6日に規制改革推進会議「健康・医療・介護ワーキング・グループ」が開催された。その中で、規制改革ホットラインの提案事項、およびそれに対する令和6年10月18日から令和6年12月16日までの関係省庁の回答、加えてWGとしての処理方針が報告された。


【規制改革】薬局の処方箋40枚規定、「再検討」を厚労省に要望

【規制改革】薬局の処方箋40枚規定、「再検討」を厚労省に要望

【2024.09.30配信】内閣府規制改革推進会議「第1回 健康・医療・介護ワーキング・グループ」が9月30日に開かれた。この中で、規制改革ホットライン処理方針 (令和6年3月16日から令和6年7月19日までの回答)が報告され、「薬局に係る40枚規制」について 厚労省に再検討を要請するとした。厚労省サイドは「検討を予定」と回答しつつも、「慎重に検討する必要がある」としている。


【コンソーシアム】大阪市から調剤外部委託で4社8薬局が確認通知受領を公表

【コンソーシアム】大阪市から調剤外部委託で4社8薬局が確認通知受領を公表

【2024.07.19配信】薬局DX推進コンソーシアムは7月19日、大阪市から調剤業務一部委託事業の確認通知を受け取ったと公表した。


最新の投稿


【次世代研】山本信夫・前日薬会長の特別講演会開催/2026年2月11日に

【次世代研】山本信夫・前日薬会長の特別講演会開催/2026年2月11日に

【2026.11.16配信】次世代薬局研究会(代表理事:武政文彦氏)は2026年2月11日に、前日本薬剤師会会長である山本信夫氏による特別講演会を開催する。


【日本医療機能評価機構】薬包の表記は薬局等で異なるため薬包1包量を確認を/持参薬で

【日本医療機能評価機構】薬包の表記は薬局等で異なるため薬包1包量を確認を/持参薬で

【2025.11.17配信】日本医療機能評価機構は11月17日、「医療事故情報収集等事業 医療安全情報No.228」を作成・ホームページで公表した。タイトルは、「粉砕調製された持参薬の過量与薬」で、2021年1月1日~2025年9月30日に2件の事例が報告されているもので、第81回報告書「分析テーマ」で取り上げた内容をもとに作成された。


【薬機法改正】「指定濫用防止医薬品」にデキストロメトルファンとジフェンヒドラミン/調査会方針

【薬機法改正】「指定濫用防止医薬品」にデキストロメトルファンとジフェンヒドラミン/調査会方針

【2025.11.11配信】厚生労働省は11月11日、「令和7年度第8回薬事審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会」を開き、改正薬機法に定めた「指定濫用防止医薬品」としてデキストロメトルファンとジフェンヒドラミンを指定する方針を了承した。


【薬団連】OTC類似薬についてシンポジウム開催

【薬団連】OTC類似薬についてシンポジウム開催

【2025.11.09配信】薬局団体連絡協議会(薬団連)は11月9日に「第7回シンポジウム」を開き、「OTC類似薬」をテーマに取り上げた。参画団体共通の声明については今後の課題として、今回は策定・公表はしていない。


【東京都薬剤師会】市販緊急避妊薬の「産婦人科医等との連携リスト」関与の方針

【東京都薬剤師会】市販緊急避妊薬の「産婦人科医等との連携リスト」関与の方針

【2025.11.07配信】東京都薬剤師会(都薬)は11月7日に定例会見を開いた。その中で、市販化の見通しとなった緊急避妊薬の販売条件となる「産婦人科医等との連携体制」のリストについて、都薬としても関与していく方針を示した。


ランキング


>>総合人気ランキング