【調剤の外部委託】薬剤師会橋場氏「一包化は海外と明らかに違うところ」/規制改革推進会議議事録で

【調剤の外部委託】薬剤師会橋場氏「一包化は海外と明らかに違うところ」/規制改革推進会議議事録で

【2022.03.01配信】内閣府の規制改革推進会議は3月1日までに「第1回 医療・介護・感染症対策ワーキング・グループ」の会議議事録を公開した。それによると調剤業務の外部委託の議論の中で、説明者として参加した日本薬剤師会常務理事の橋場元氏は「一包化は海外と明らかに違うところ」と語っていた。一包化については説明者の狭間研至氏が一包化についても外部委託を念頭に置いた説明を行っていた。一包化が外部委託の一つの論点ともなりそうだ。会議は1月29日に開催されたもの。


 調剤業務の外部委託に関しては、日本薬剤師会の主張として、患者の医療安全、医薬品の安全使用の確保が困難になるため認められないとされてきた。
 
 このほど公開された議事録では、そういった主張に加えて、間違いが起こった時に薬剤師個人の責任となることなども指摘していた。

 「調剤業務の一部をほかの薬局に委託してはどうかという御提案でございますので、それに対しまして、専門家であります日本薬剤師会が検討した結果について御意見させていただきます。こちらは本当に真摯に検討させていただきました。まず、間違いが起こったときのことについてございますけれども、委受託となりますので、こちらは組織と組織の契約になります。間違いが起こったときなどは、その契約に基づきまして経済的な補償についてはあるかもしれません。しかしながら、調剤における責任は処方箋を受け付けた薬剤師個人となります」(橋場氏)

 さらに、委受託間で高度な管理が必要となり、受託先を信じるしかない面が生じると指摘していた。
 「委託者側の組織には調剤を安全に適切に実施する体制を確保する責務があります。調剤の一部を委託して、その責務を果たすことは、果たして可能なのでしょうか。そちらについても検討いたしました。まず、処方箋を応需した委託者側の薬剤師は、受託者側の作業者を知りません。医薬品の管理状況が分かりません。建物・使用機器等の保守状況が分かりません。作業そのものを見ていません。そういった目の届かない場所での作業が行われるということになります。したがいまして、状況を把握するためには精度の高い管理が必要となる。ただ、これらは全てを見ているわけにはいきません。ですので、その結果、委託側の薬剤師は受託側を信じるしかないということになろうかなと思います」(橋場氏)

 また、受託者側が指示を誤って解釈するなどの委受託による新たなリスクが生じるとしている。
 「外部委託をするということは、当然新たなリスクを生じさせることにもなります。まず、責任が分散してしまいます。委託者側の薬剤師が、受託者が指示どおりにやってくれるだろうという当事者意識が希薄になることがあり得ます。受託者側は患者と向き合っていませんので責任意識が希薄となります。また、受託者側の経営的な状況により、品質の確保・維持ができない場合ですとか、受託者側の都合が優先される事態となるとか、また、撤退するということも考えられます。昨今の後発医薬品メーカーの不祥事と同様な事態が起こり得るのではないかと考えております。さらに委託者側には今までにないリスクが発生します。一つは、薬剤師による指示を細部までしっかりと行き届かせるために、受託者が間違いなく薬剤を調製するための細部まで伝わる精度の高い指示書の作成が必要となります。また、今申した指示書の作成もそうですし、調製した薬剤の移動、そういった今までと違う作業が増えることにもなります。委託に伴う手順が増えますので、当然エラーリスクの発生可能性も増加することになります。受託者側にも今までにないリスクが発生します。一つは、受託者の側には複数の組織から異なるオーダーが来ますので、当然作業が複雑化します。また、指示を誤って解釈する可能性がありますので、先ほどの話のとおり、精度の高い指示を受ける必要がありますが、指示の解釈を間違うということは十分あり得ると思います」(橋場氏)

 加えて、一包化については、ミスは起こるため監査が最も重要な工程であり、監査を委託することはほころびを生じると指摘。
 「こちらは一包化調剤ですけれども、一包化の調剤は1人ずつ、1回ごと処方も異なりますし、患者個々の状況に合わせてきめ細かく行われます。このように全ての工程でミスが起こるリスクがあります。どんな分包機を使用しても、このミスやエラーは起こります。したがって、最後の調剤薬監査が最も重要であり、監査が薬剤の調製の一連の流れの中で最も重要な工程と考えられます。もし、この紫で示しました作業を委託した場合には、これまで言わせていただいた繰り返しとなりますけれども、受託者側の作業を信じた上での監査、このようなことになるのは否めません。したがいまして、監査にほころびが生じるように考えられます。日本は、数十年も前から既に一包化が根づいている。この辺は海外と明らかに違って、世界に類を見ない状況となっています。日本の薬局は、それぞれ実情に合った機器を導入して調剤の質の向上に努めてきています。個々の患者の状況や特性に合わせたきめ細かい一包化で薬物療法の質を上げてきています。個々の薬局それぞれが状況に応じた機器を導
入することで、薬局が医療安全面での質を高めることになります。外部委託した場合は、その質の向上が止まることになります」(橋場氏)

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