【薬剤師養成懇】薬剤師会山本会長、「文科省として薬学部入学定員を減らす方針か」/夏までの結論を強く求める

【薬剤師養成懇】薬剤師会山本会長、「文科省として薬学部入学定員を減らす方針か」/夏までの結論を強く求める

【2022.02.14配信】厚生労働省は2月14日、「第21回 新薬剤師養成問題懇談会」を開いた。この中で日本薬剤師会会長の山本信夫氏が数多く発言し、文科省として入学定員を減らす方針なのかどうかを問いただす場面があった。文科省では今夏に「薬学部教育の質保証に係る調査に関するとりまとめ」の公表を予定しており、そこでの方針明確化を求めたもの。2021年6月に厚労省の検討会では入学定員に関して「対応策を実行すべき」と明記した一方、文科省の2021年12月の中間とりまとめでは「方策を検討する必要があるのではないか」との表現にとどまっている。こうした温度差への憤りが背景にあると考えられる。


文科省「審議中であり結論は申し上げられない」

 文科省は2021年12月24日に「薬学系人材養成の在り方に関する検討会」「薬学部教育の質保証専門小委員会」を開催し、「薬学部教育の質保証に係る調査に関する中間とりまとめ」を公表していた。

 この中で、「国としても、適切な入学定員規模・入試倍率を維持しやすくする方策を検討する必要があるのではないか。大学と自治体が連携する取組や偏在対策に資する定員枠に係る方策を検討すべきでないか」と記載していた。

 こうした流れに対し、日本薬剤師会の山本信夫会長は、「文科省さんの認識としては薬学部の増設なり薬科大学の増設ということが大きな影響を与えたという認識はないという理解でよろしいですか」と質問した。

 これに対し、文科省は「さまざまな複合的な課題があると認識をしておりますので、定員や退学率などさまざまな課題が今回得られたということで、課題を複合的に考えていく必要があるということで検討を行っていきたいと思っております」と回答した。

 重ねて山本会長は、「6月でしょうか、(文科省で)とりまとめられたときに、当然出てくる答えは定員については減らしていくべきだという結論が出るというふうに理解してよろしいですか」と質問した。

 これに対し文科省は「調査研究を今、進めているというところでございます。中間まとめでも国としても適切な入学定員規模、入試倍率を維持する方策について検討する必要があるのではないかということも記載しています。審議中でありますので結論は申し上げられません。ただ大きな論点として検討しています。最終とりまとめに向けて、引き続き検討していきたいと思っています」と述べた。 

 山本会長は「また来年になってしまいますので、そうならないよう、ぜひ答えを出していただきたいと思います」と述べ、夏の最終とりまとめで結論を導き出すことを求めた。

 また、山本会長が厚労省の見解を求めると、厚労省は「需給の推計におきまして将来的には供給が過剰になるというのが今回の結果となっておりますので、現状は適当ではなく適切な定員規模のあり方を検討していただきたいと考えております。そのための方法として文科省におかれましても取り得る方法を持って適した定員規模の設定をお願いしたいと考えております」と回答した。

 山本会長は、「ボールは文科省にわたっていると理解いたしました」と述べた。

 入学定員に関しては、日本薬剤師会副会長の田尻泰典氏も「定員を削減する以外に手はないと普通なら考えますがいかがですか」と、文科省の考えを聞いた。

 これに対し文科省は「入学者選抜のあり方、それから教員の体制、情報公開などを含めて複合的に考えていきたいと思っている」と答えた。 

編集部コメント/今夏の文科省とりまとめに大注目

 日本薬剤師会の山本信夫会長自ら、文科省へ強い要請の姿勢を見せたことから、今夏の文科省のとりまとめが重要な意味を持ってくると考えられる。

 現実的な見方を述べれば、入学定員は大学にとって“収入”に直結するため、議論は簡単ではないと考えられる。また、薬局業界では、輩出される薬剤師数増加を好ましく受け取る声があるのも事実だ。

 ただし、入学しても退学が高い比率であったり、通常年限で国家資格試験に合格できない学生が過半という薬学部もあるなど、問題が浮上する中で、問題の先送りは好ましくないといえる。
 薬学部の定員の議論は医学部定員には一定の規律があることを背景にしており、今後、地域包括ケアの中で地域に貢献するタスクシェア・シフトを実現するにあたっても鍵となるとみられる。
 そう考えると、入学定員の一定の制約は長期的な目線では大学、産業界、学生の共通の課題ともいえるのではないだろうか。

この記事のライター

関連する投稿


【姫路獨協大学】薬学部医療薬学科の学生募集を停止/令和7年度入学者募集から

【姫路獨協大学】薬学部医療薬学科の学生募集を停止/令和7年度入学者募集から

【2024.04.02配信】姫路獨協大学(兵庫県姫路市)は4月1日、薬学部医療薬学科の学生募集を停止すると公表した。


【日薬】薬学部定員抑制の“例外区域“の告示案にパブコメ提出/「定員抑制の制度化の趣旨と齟齬」

【日薬】薬学部定員抑制の“例外区域“の告示案にパブコメ提出/「定員抑制の制度化の趣旨と齟齬」

【2023.08.09配信】日本薬剤師会(日薬)は薬学6年制課程の定員抑制の例外区域に関する基準の告示案に関して、パブリックコメントを提出した。8月9日の定例会見で明らかにした。定員抑制の制度化の趣旨と齟齬があるなどとしている。8日付けでは、都道府県薬剤師会会長宛てに連絡を発出し、意見提出を報告するとともに、都道府県薬で意見提出する場合には参考にしてほしいとしている。日薬では今後、文科省をはじめ関係機関に要請していく方針。


【日本薬剤師会】文科省の薬学部定員抑制“例外12県”に「容認し難い」/会員へパブコメの積極提出呼びかけ

【日本薬剤師会】文科省の薬学部定員抑制“例外12県”に「容認し難い」/会員へパブコメの積極提出呼びかけ

【2023.07.21配信】日本薬剤師会は7月21日に定例会見を開き、文科省中央教育審議会で薬学6年制課程の定員抑制の例外区域を設ける告示案が了承されたことについて、「当会としては容認し難い」とし、会員に対してパブコメの積極的な提出を呼びかける通知を発出したことを説明した。


【厚労省】地域ごとの薬剤師偏在指標を策定/不足最大は福井、次いで青森、富山/主に病院で不足

【厚労省】地域ごとの薬剤師偏在指標を策定/不足最大は福井、次いで青森、富山/主に病院で不足

【2023.03.29配信】厚生労働省は3月29日、「第13回薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」を開催。その中で最も薬剤師が不足している都道府県は福井県で偏在指標は0.74だった。偏在指標は小さいほど不足している状態。次いで青森県 は0.78、富山県0.80だった。今後は指標を目安として地域ごとで薬剤師確保計画が策定される見込み。


【薬学部_国試ストレート合格率】私立大ランキング/トップ5は明治薬科大学、北里大学、東京理科大学、星薬科大学、慶應義塾大学

【薬学部_国試ストレート合格率】私立大ランキング/トップ5は明治薬科大学、北里大学、東京理科大学、星薬科大学、慶應義塾大学

【2023.01.25配信】文部科学省は、薬学部における修学状況等 2022 年度調査結果を公表した。 https://www.mext.go.jp/content/20230120-mxt_igaku-100000059_01.pdf


最新の投稿


【医薬品情報把握システムの検討活発化】薬剤師会“アクションリスト”実践へ/MSNW「LINCLEちいき版」を全国の都道府県薬へ提案中

【医薬品情報把握システムの検討活発化】薬剤師会“アクションリスト”実践へ/MSNW「LINCLEちいき版」を全国の都道府県薬へ提案中

【2025.08.08配信】日本薬剤師会が公表した「地域医薬品提供体制強化のためのアクションリスト」。このうちの1つの事項である「地域の医薬品情報の把握・共有の取組」。この実践へ向けて情報共有のためのシステム選定の動きも活発化してきた。こうした中、メディカルシステムネットワーク(MSNW)では、もともと地域薬剤師会と共に開発を進めてきた「LINCLEちいき版」の提案を強化している。すでに10以上の都道府県薬剤師会への提案を進行中だという。


【厚労省】保険調剤「確認事項」公表/2枚処方箋で投薬期間上限を超えるなど不適切事例

【厚労省】保険調剤「確認事項」公表/2枚処方箋で投薬期間上限を超えるなど不適切事例

【2025.08.08配信】厚生労働省はこのほど、保険調剤「確認事項」(令和7年度改訂版)を公表した。2枚処方箋を受け付けることにより、投薬期間上限を超えるなどの不適切事例を指摘している。


【東京都薬務課_危険ドラッグ】オピオイド受容体に働く成分を新規指定/水際対策の一環

【東京都薬務課_危険ドラッグ】オピオイド受容体に働く成分を新規指定/水際対策の一環

【2025.07.30配信】東京都薬務課は7月30日、定例会見を開き、7月3日に危険ドラッグに指定した成分について説明した。指定した3成分はいずれも興奮、陶酔又は幻覚作用等を有する。すでに厚労省でも医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律に規定する大臣指定薬物に指定され、令和7年7月13日をもって施行された。


【ドラッグストア協会】濫用防止薬に関わる業界販売ガイドライン、年内省令発出後の公表予定

【ドラッグストア協会】濫用防止薬に関わる業界販売ガイドライン、年内省令発出後の公表予定

【2025.07.29配信】日本チェーンドラッグストア協会は7月29日に定例会見を開き、改正薬機法で定める指定濫用防止医薬品の販売に関する業界ガイドラインに関して、年内をメドとする省令発出後に公表する見込みであることを説明した。


【ドラッグストア協会】参議院選挙結果報告/「本田顕子氏を本気で応援した」

【ドラッグストア協会】参議院選挙結果報告/「本田顕子氏を本気で応援した」

【2025.07.29配信】日本チェーンドラッグストア協会は7月29日に定例会見を開き、参議院選挙の結果報告をした。


ランキング


>>総合人気ランキング