【経済同友会】オンライン服薬指導で意見/「オンライン服薬指導の割合を1割以下とする制限撤廃を」

【経済同友会】オンライン服薬指導で意見/「オンライン服薬指導の割合を1割以下とする制限撤廃を」

【2021.12.15配信】経済同友会(代表幹事:櫻田 謙悟氏=SOMPOホールディングスグループCEO 取締役 代表執行役社長)は12月10日、「オンライン診療・オンライン服薬指導に関する意見」をまとめ公表した。この中でオンライン服薬指導に関しては、オンライン服薬指導の割合を1割以下としている制限の撤廃などを求めている。


 オンライン診療・服薬指導をめぐっては、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて現在は時限的・特例的に初診から可能となっている。診療報酬上の取り扱いや薬機法の施行規則改正等の議論が迫っていることから、経済同友会では「オンライン診療を新たな診療概念として確立させ、オンライン服薬指導を普及促進する観点から改めて意見を公表する」としている。

 「オンライン診療・オンライン服薬指導に関する意見―新たな診療概念としての確立と普及促進に向けた不断の改革を求める―」は、以下の通り。

はじめに
 経済同友会では、医療分野におけるデジタル技術の活用により、患者の利便性と経済社会全体の生産性を向上する観点から、オンライン診療とオンライン服薬指導を一気通貫で実現する規制・制度改革を求め、2019 年4月 23 日に意見を公表した。さらに、2020 年3月 17 日には、オンライン診療・オンライン服薬指導の普及推進に関連し、新型コロナウイルス感染症への速やかな対応と中期的な改革の方向性を示した意見を公表してきた。
 その後、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、2020 年4月 10 日付で厚生労働省より事務連絡「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」が通達されたことで、初診からのオンライン診療・オンライン服薬指導が時限的・特例的に可能となった。併せて、対象疾患や実施方法、施設基準の制限も緩和され、現在に至るまで同様の措置が継続している。
 厚生労働省の「オンライン診療に関する指針の見直しに関する検討会」では、2021 年6月に閣議決定された規制改革実施計画に基づき、初診からのオンライン診療の恒久化・制度化に向けた具体的な検討が行われている。同様に、オンライン服薬指導についても、これまでの対応を踏まえて実施要件が見直される予定である。他方、オンライン診療・オンライン服薬指導のさらなる普及促進には、診療報酬上の課題が存在しており、中央社会保険医療協議会で検討される 2022 年度の診療報酬改定が重要となる。
 そこで、今回の指針および診療報酬改定を重要な契機と捉え、オンライン診療を新たな診療概念として確立し、オンライン服薬指導と併せて普及促進する観点から、あらためて以下の意見を述べる。

(1) オンライン診療における診療報酬上の要件の緩和
 診療方法は、国家資格を有する各医師が医師としての良心に従い、患者に対して適切な医療を提供するために、エビデンスに基づき、自らの裁量で判断・決定すべきである。
 上記の考えに基づき、「初診から3か月間、毎月対面診療が必要」、「3か月ごとに対面診療が必要」などの診療報酬上の要件を緩和し、原則として、医師と患者の同意のもと、対面とオンラインを自由に組み合わせることを可能にすべきである。
 また、オンライン診療の実施は距離的要件によって制限されるべきではない。オンライン診療から対面診療への切り替えが発生する場合でも、対面診療との連携を担保できる実施体制(連携先の医療機関が紹介先として確保されているなど)を整えることで、距離に囚われることなくオンライン診療を実施可能とすべきである。
 さらに、オンライン診療が離島やへき地の医療に活用されてきた経緯を踏まえ、医師が相対的に少ない地域においては、一層の活用が可能となる運用ルールを検討すべきである。

(2) オンライン診療を確立した診療報酬体系の構築
 オンライン診療時の診療報酬は、初診・再診料、医学管理料を対面診療時と同一にすべきである3。また、オンライン診療の対象疾患が限定されぬよう、オンライン診療料が算定できる疾患の制限を撤廃するとともに、指導・管理において検査や処置、身体診察を必ずしも必要としない疾患に係る医学管理料はオンライン診療の加算対象に認めるべきである。まずは普及を優先し、その上で、中長期的なエビデンスの蓄積に応じ、過剰な診療等の是正を図ることが望ましい。そのため、自らの症状に応じて対面・オンライン各々のメリットを患者が享受できる診療報酬体系の構築を進めるべきである。
なお、前述の通り、診療方法は医師の裁量によって判断されるべきことから、1か月あたりのオンライン診療の割合を1割以下とする現行の施設基準要件は撤廃すべきである。

(3) オンライン服薬指導に係る調剤報酬の見直し
 オンライン服薬指導に関しては、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律(薬機法)の施行規則・通知の改正を予定しており、初回からの実施や診療方法の制限が撤廃されるなどの取り組みが進められつつある。しかし、オンラインによる診療から服薬指導までの一気通貫での提供を普及促進するためには、対面を原則とする基本的な考え方の見直しに加え、服薬指導計画の策定を必須とする要件を除外すべきである。また、調剤報酬上のルールについても、オンライン服薬指導の割合を1割以下とする制限を撤廃し、対面による服薬指導と同一水準にすべきである。
 処方箋の取り扱いについて、コロナ禍における特例措置では、医療機関から薬局にメールや FAX で送信し、後に原本を患者に郵送するという対応が行われていた。利用者本位・患者本位の医療の実現を図るとの政府方針を踏まえれば、原本主義に立ち返ることなく、特例措置の終了後も同等の取り扱いとすべきである。
 なお、処方箋の電子化に関して、患者の処方・調剤情報を他の医療機関等が参照できる電子処方箋システムの構築が進められている。患者の本人確認手段であるマイナンバーカードの普及は急務であり、健康保険証との一体化を機に、一層の普及に取り組むべきである。

おわりに
 繰り返しとなるが、患者の利便性と経済社会全体の生産性の向上につながるオンライン診療・オンライン服薬指導の普及促進には、診療報酬上の要件の撤廃や診療報酬・調剤報酬における対面との同等水準化が不可欠である。
 今後、オンライン診療・オンライン服薬指導がさらに普及すれば、医師・医療施設の偏在や医療に対するニーズの増加などの課題を抱える地域医療への貢献のほか、慢性疾患の患者に対する定期的な状態の確認や薬の処方を少人数で効率的に行うなど、医師の働き方改革の加速も期待できるだろう。
近年では、企業理念に基づいた健康経営の実践として、社内向けのオンライン診療・オンライン服薬指導を行う企業も現れている。企業の生産性向上を支える従業員の健康管理は極めて重要な経営課題であり、働く個人にとって利便性の高い医療の提供は、従業員の生活の質向上にも寄与することができる。このような医療ネットワークが各地域や社会全体に広がることで、早期治療・継続治療が浸透すれば、健康保険の財政にもプラスの効果をもたらすことになる。
 わが国の社会生活環境を豊かにするために、成長力を強化する経済・社会のデジタル化への対応は喫緊の課題である。さまざまな課題に直面している医療分野においても同様に、技術革新に即した不断の取り組みを求める。

編集部コメント/非効率を含む医療を地域で実施する視点は

 かねてから、「オンライン完結」の実現を求める産業界側と、地域包括ケアシステムに象徴される地域密着型を志向する医療関係者側には意見の違いがあったが、診療報酬改定議論の大詰めを控えて、産業界側の要望の声は大きくなっている。
 12月6日に開かれた規制改革推進会議「医療・介護ワーキング・グループ」でも、厚労省の改正案に委員から異論が噴出したとされている。
■当メディア関連記事
https://www.dgs-on-line.com/articles/1282

 医療だけでなく、介護や障害を持った人への福祉領域も含めて、労働人口が減少する我が国では地域の課題は大きくなりつつある。その中にあって、「医療だけ」を切り出して効率化し、地域から切り離すことは本当に理にかなっているのか。オンラインやデジタルは活用しつつも、地域で目配りのできる一定の配慮はあってよいのではないだろうか。端的にいえば、効率的・非効率的な部分を含めて地域で活動するところに、それなりのリソースが巡ってくるべきではないだろうか。国民的な議論が必要だ。

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