【コロナ抗原検査キット販売】ドラッグストア協会「OTC化が適切」/「積極的に検査できる体制を国に働きかける」

【コロナ抗原検査キット販売】ドラッグストア協会「OTC化が適切」/「積極的に検査できる体制を国に働きかける」

【2021.11.25配信】さきごろウェブ広告などの規制が緩和されたコロナ抗原検査キットの販売のあり方について、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は「スイッチOTC化すべき」との見解を示した。より手軽に積極的に検査ができる体制が重要として、国にも働きかけたい考え。


周回遅れの対応、「なぜそうなってしまうのか。そこが分からない」

 11月24日の定例会見の中で、記者の質問に答えたもの。

 日本チェーンドラッグストア協会事務総長の田中浩幸氏はコロナ抗原検査キットの販売のあり方について、「協会としてはスイッチOTC化して、OTCとして販売しましょうと申し上げている。特例的に薬局で販売が可能となったことやウェブ広告の規制緩和など、できることが広がったのは歓迎すべきではあるが、それが十分かというとそういったところまではいっていないかもしれない」と述べた。

 協会会長の池野隆光氏は販売状況について言及し、従来販売してきた「研究用」と称した製品と、医療用製品は「量としては同じぐらい売れており、全体として2倍の販売量となっている」とした。

 「研究用」と「医療用」の製品で購入している人にどう違いがあるのかについては、「手軽に買えるかどうかが違うところではないか」と指摘した。「検査全般にいえることだが、あれとこれをしたら販売していいよといって、結局できないということがある。医療用でも理解したことの確認結果
の保存等が求められていることなどが、(生活者にとっても)躊躇する一つになっている可能性があるかもしれない」との感触を示した。

 その上で池野会長は、「薬局だけでなく店舗販売業など、どういう状態でも買えるのが一番いいと思う。登録販売者でも販売できるとなると全く変わってくると思う。検査をたくさんやることが一番重要。JACDSとしても積極的に検査が行えるような体制について、国に対しても働きかけていきたい」と話した。

 協会副会長の根津孝一氏も、これまでのコロナ関連の検査の状況について、「対応が周回遅れだ」との認識を示した。「生活者はもっと現実的。研究用の抗原検査キットは1年前に販売ピークがあった。そこから(今)行政が対応を出す。PCR検査もずっと前から並んででも検査を行っている様子があった。対応が周回遅れになっていて、なぜそうなってしまうのか。そこがよく分からない」と話した。

<編集部コメント>“生活者”のニーズと“専門家”の介入の必要度のバランスをどう取るのか

 会見の中で、根津副会長が「生活者は」と切り出したことは印象的だ。

 先行して販売されてきた「研究用抗原検査キット」と「医療用抗原検査キット」を混同することがないように行政は監視指導を強化する方針を示しているが、そもそもドラッグストアは研究用を販売したかったわけではなく、「手軽に検査をしたい」という生活者のニーズに足下の状況で応えたことが結果的に研究用の販売につながっていただけだ。ドラッグストアの対応は生活者のニーズを映し出しているといえる。医療用の薬局販売が認められた現在でも研究用が売れている事象も、池野会長が指摘する通り、生活者のニーズの表れだろう。

 抗原検査キットのOTC化に限らず、緊急避妊薬のOTC化を含めて、市販化の議論は常に「生活者のニーズ」と「専門家の介入の必要度」とのバランスの議論である。
 これまでの議論の経過を踏まえると、専門家の介入が重視されてきたことは明白だが、市民の声の高まりやドラッグストアの政治力の高まりが、これまでの様子に少しずつ変化を与える可能性があるだろう。
 その時に、「専門家の介入がなかった時の不利益」の議論はもちろん重要だ。一方で、体内への影響が低い体外診断薬は不利益は比較すると低い分類に入るのではないだろうか。服用要否に診断よりも本人の判断の方が大きい緊急避妊薬もその分類に入るだろう。

 また、市販化は専門家の不介入を意味するわけではなく、薬剤師や登録販売者といった専門家へのタスクシフトの意味合いもある。その意味では、ドラッグストア業界が資質向上に本腰を入れ始めていることも影響するだろう。日本医薬品登録販売者協会はさきごろ「登録販売者の倫理規程と業務マニュアル」を作成・公表しており、「セルフメディケーションを適切に支援する役割」の推進に注力している。さらには、JACDSは濫用のおそれのある医薬品の該当商品であることを知らせる「レジアラーム」システムの導入進展により医薬品販売ルールの遵守率向上といった成果も公表している。こうした実績づくりも今後の規制緩和に影響していくだろう。

この記事のライター

関連する投稿


【ドラッグストア協会】森副会長、「200店舗」などへの波及警戒/調剤報酬改定要望

【ドラッグストア協会】森副会長、「200店舗」などへの波及警戒/調剤報酬改定要望

【2025.03.26配信】日本チェーンドラッグストア協会は3月26日に定例会見を開いた。


【ドラッグストア協会】調剤額伸び率鈍化、「まだ併設出店意欲ある」/今後の伸び率維持に自信

【ドラッグストア協会】調剤額伸び率鈍化、「まだ併設出店意欲ある」/今後の伸び率維持に自信

【2025.03.26配信】日本チェーンドラッグストア協会は3月26日、定例会見を開いた。


【ドラッグストア協会】OTC類似薬の保険適用除外論議にコメント

【ドラッグストア協会】OTC類似薬の保険適用除外論議にコメント

【2025.03.26配信】日本チェーンドラッグストア協会は3月26日に定例会見を開いた。


【ドラッグストア協会】調剤額前年比8.4%増の1兆5205億円に/JACDSドラッグストアの実態調査

【ドラッグストア協会】調剤額前年比8.4%増の1兆5205億円に/JACDSドラッグストアの実態調査

【2025.03.26配信】日本チェーンドラッグストア協会は3月26日に定例会見を開いた。


【ドラッグストア協会】300店舗以上、敷地内薬局等への不利益解消を厚労大臣に要望

【ドラッグストア協会】300店舗以上、敷地内薬局等への不利益解消を厚労大臣に要望

【2025.03.26配信】日本チェーンドラッグストア協会は3月26日に定例会見を開いた。


最新の投稿


【規制改革WG】事前処方・調剤の質疑への回答公表/在宅医療における円滑な薬物治療の提供で

【規制改革WG】事前処方・調剤の質疑への回答公表/在宅医療における円滑な薬物治療の提供で

【2025.05.01配信】規制改革推進会議「健康・医療・介護ワーキング・グループ(第5回)」が5月1日、開催された。その中で令和7年3月14日に開催された「第2回健康・医療・介護 WG」に関する委員・専門委員からの追加質疑・意見に対する厚生労働省の回答を公表した。


【東京都薬務課】健康食品試買調査結果、79%が違反/効能効果の標榜に販売店のチラシなども注意

【東京都薬務課】健康食品試買調査結果、79%が違反/効能効果の標榜に販売店のチラシなども注意

【2025.04.30配信】東京都薬務課は4月30日に定例会見を開き、都が毎年行っている健康食品試買調査の結果を説明した。124製品中、98製品、79%に不適正な表示、広告が発見されたという。医薬品的な効能効果の標榜を禁止している薬機法違反も多いが、景品表示法、食品表示法、特定商取引法などの違反も見られる、都では複数の法律で規制されている健康食品を取り扱う事業者に向けて講習会を開いており、講習会参加なども生かして法令遵守に取り組んでほしいとしている。


【厚労省_疑義解釈(その24)】DX加算のマイナ保険証利用率について

【厚労省_疑義解釈(その24)】DX加算のマイナ保険証利用率について

【2025.04.28配信】厚生労働省は4月25日、診療報酬改定についての「疑義解釈(その24)」を発出した。「医療DX推進体制整備加算」の施設基準の1つであるマイナ保険証利用率について回答。4月については在宅患者を分母から引いて構わないとしている。現在は通常の外来患者がマイナ保険証を利用した場合のみが反映されているため。5月以降については、居宅同意取得型のオンライン資格確認によるマイナ保険証利用件数が社会保険診療報酬支払基金から通 知するマイナ保険証利用率集計に含まれる予定。


【日本薬剤師会】電子お薬手帳ビューワー、他職種への周知を依頼

【日本薬剤師会】電子お薬手帳ビューワー、他職種への周知を依頼

【2025.04.26配信】日本薬剤師会は電子おくすり手帳簡易ビューワーアプリ「e薬 SCAN」について、他職種への周知依頼を都道府県薬剤師会宛てに発出した。


【財政審】 後発薬調剤体制加算等、政策目標の達成状況を踏まえ「必要に応じ報酬体系の再編を」

【財政審】 後発薬調剤体制加算等、政策目標の達成状況を踏まえ「必要に応じ報酬体系の再編を」

【2025.04.23配信】財務省は4月23日に財政制度等審議会「財政制度分科会」を開催した。


ランキング


>>総合人気ランキング