薬価専門部会で事務局は、論点として「薬価改定が毎年実施されることとなっている現状等を踏まえ、『薬剤流通の安定のため』に設定されている調整幅について、どう考えるか」と示した。
業界団体のヒアリングでは、卸連会長の鈴木賢二氏が医薬品を安定的に供給できるようにするためには、医薬品流通関係者による流通改善ガイドラインの遵守の徹底が必要との考えが述べられた。さらに「薬価制度においては安定供給の維持を重視し、財政論に偏重すべきではない」と指摘された。
調整幅に関し、全国健康保険協会理事長の安藤伸樹氏は、「卸連からは調整幅をこれ以上
下げないでくださいと聞こえた。調整幅だけでなく、薬価制度そのものにおいてこういう形であればいいとお思いのことあれば教えてほしい」と述べた。
これに対し卸連の折本健次氏は、「調整幅については下げてもらっては困るというよりも、上げていただきたい状況」と述べた。
背景として、コロナ禍の2020年度の大手卸6社の営業利益率は0.4%まで急減していることを挙げた。「さらに悪化する懸念を持っている」とした。
中間年改定である2021年度薬価改定では予算ベースで4300億円が削減されており、通常年改定の削減額の目安とされる5000億円にも遠くない額が削減されており、折本氏は「2倍のスピードで薬価が落ちると感じている」と述べた。
さらに調整幅以外の見直しとして、「仕切価にリベート・アローアンスを転嫁しようという前提であるところ、7月の流改懇では転嫁されていたが、結果として仕切価は0.3値上がりして原価が上がっていた。流改懇ではスペシャリティファーマが多かったことと、後発医薬品の供給停止で発伝ができなかったという要素があろうかと思うが11月中旬に(今期上期の卸)決算がどのようなものになるのか、さらに悪化することを懸念している。赤字の卸が出てくることも考えられる。こういった環境の中で調整幅議論よりも、安定供給のための流通のためには薬価調査の透明性の担保がまずもって重要。そのための単品単価契約ならびに単品単価に伴う交渉が実態としてできているのかという質問が多くあるので、経済課に11月中旬までにアンケートを提出することになっている。それを踏まえて本来のきちんとした薬価調査の中での薬価制度、あるいは未妥結減算制度の見直しというものがはかられないと調整幅の議論だけでは卸の経営状況では大変厳しいということ」と述べた。
全国健康保険協会理事長の安藤伸樹氏は、「調査をやっているということなので、その結果をみて見極めたい」と述べた。
調整幅の議論をめぐっては、健康保険組合連合会理事の松本真人氏が「2年改定でも毎年改定でも乖離率は同じようなことに不可思議な点がある」と懐疑的な意見も聞かれた。
日本医師会常任理事の城守国斗氏は、調整幅は「必要なことには変わりない」と述べるとともに、後発医薬品の安定供給のために流通経費が増加していることにも理解を示した上で、「引き下げたり変動させたりすることは難しいと思っている」と述べた。
日本薬剤師会常務理事の有澤賢二氏は調整幅に関して、「後発医薬品や中間年改定の影響がどこまで出ているのか見えない状況。薬剤安定流通のために設定している調整幅を変更すべきではないと考えている。平時であってもこの設定は必要だ」と述べた。

【中医協薬価専門部会】調整幅の引き上げ視野か/単品単価取引精度向上へ未妥結減算制度見直しにも言及
【2021.11.05配信】厚生労働省は11月5日に中央社会保険医療協議会薬価専門部会を開き、調整幅のあり方についてが議題に上がった。日本医薬品卸売業連合会(卸連)薬価問題検討委員会担当理事の折本健次氏は、「調整幅は上げていただきたい状況」と述べた。中間年改定だった2021年度改定では「新型コロナウイルス感染症特例」として薬価の削減幅を0.8%分緩和されていた。同様の特例が診療報酬と同時改定となる2022年度改定でも設けられるかどうか注目される。また、卸連からは単品単価取引の精度向上を求める意見があり、関連して未妥結減算制度に見直しが必要と言及される場面があった。
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