【緊急避妊薬のスイッチOTC】ドイツの薬局での販売実態/日本コミュニティーファーマシー協会がセミナー

【緊急避妊薬のスイッチOTC】ドイツの薬局での販売実態/日本コミュニティーファーマシー協会がセミナー

【2021.07.01配信】日本コミュニティーファーマシー協会は6月19日に、オンラインセミナーを実施した。「ドイツの薬局の構造・設備的部分&緊急避妊薬(OTC)販売6年を迎えて」と題し、ドイツ在住でセントラルファーマシー開設者であるアッセンハイマー慶子氏が講演した。(サムネイル写真はアッセンハイマー慶子氏)


スイッチ化で土日の販売が増加/ネット販売は禁止

 ドイツでは、2015年3月から緊急避妊薬がスイッチOTC化されたという。

 アッセンハイマー氏は、緊急避妊薬のOTC薬供給は女性の保護、女性の人権に関わる重要な問題として、国民の健康を守る薬剤師として、「これからどんどん関わっていかなければいけないテーマだと思っていると話した。

 日本では2017年から議論は上がっているが、なかなか実現には至っていない状況については、「解禁まで薬剤師・薬学生は事前に知識を勉強しておくことが重要」との認識を示した。

 ヨーロッパではフランスでは1999年にはスイッチ化されていたため、ドイツのスイッチはヨーロッパの中では遅い方だったという。

 ドイツでは成分は2種類で、レボノルゲストレルと酢酸ウリプリスタール。

 スイッチ化後の販売推移では、2015年から2018年にかけて処方薬も含めた全体の販売金額が伸びている。全体の処方薬の比率は年を追うごとに小さくなっている。希望者が直接薬局で購入することが増えていることが分かる。

 スイッチ前後の曜日ごとの販売数量変化では、土曜・日曜の販売数量が伸び、逆に月曜日・火曜日の販売数量が減少しているという。週末に求めたくても月曜日まで待っていたものがOTC化によって土日にも購入することができるようになったことを示していると考えられる。

価格は23ユーロ、「日本はずいぶん高い」

 同氏はスイッチ化の最大のメリットとして、避妊失敗から服用までの時間を短くすることができることを挙げる。それを可能にしているのがドイツの輪番制の24時間医薬品供給体制だ。真夜中だろうと、地域でどこかの薬局が開いているという。
 
 一方で薬局の課題も多くあるという。スイッチ化から7年目ではあるが、万全の体制には至っていないとした。

 例えば、服薬後の避妊法などの充分な説明ができているか。すでに排卵しているケースなど場合によっては子宮内に装着する銅付きIUDで受精卵の着床を妨げる方法を推奨するなど、必要であれば医師の受診を促す。そういったケースの判断と指導については専門医から薬局への苦言もあるという。


ドイツでは緊急避妊薬のネット販売は禁止されているという。違法販売サイトを見つけた場合は当局に通報し、サイト抹消などの対応をしてもらっているという。違法販売者のチェックも薬剤師の使命として行っているという。
 
 レボノルゲストレルの価格はオリジナル製品でも23ユーロ(1ユーロ130円換算で3000円)で、日本の価格は「ずいぶん高価」と感じているとした。23ユーロは学生でも購入できる価格帯とした。

「販売の時は、毎回緊張する」

 同氏は「販売から7年目を迎えたが、販売の際は、毎回緊張する」と話した。「きちんと必要な情報が伝えられているか、その情報に基づいて行動を促せているかなど、心配になる」と話す。特に難しいケースが低用量ピルを服用している人が飲み忘れたケースで、飲み忘れから何時間経過しているかなどの状況によって緊急避妊薬を必要とするか否かの判断が難しいとした。

 使用者以外の購入に関しては電話等で本人に連絡し、状況を判断する。また、14歳未満の場合は保護者の同意が必要となる。

 最も多い購入事例は、コンドームがはずれた、破れたというケースだという。

 非常に稀ではあるが、性犯罪に巻き込まれたことが疑われるケースがあるという。コンドームが破れた、などの理由の時とは様子がだいぶ違うケースがあるという。そのような場合には「いつでも薬剤師も相談に乗れる」ことや産婦人科医への相談も可能であることを伝えるようにしているという。

 講演では、緊急避妊薬のテーマに続いて、ドイツの薬局の構造について説明があった。
 これは緊急避妊薬の 24時間対応にも関連するが、ドイツでは規模の大小や立地に関わらず、「1つの薬局はなんでもできる」という。品揃えにも差がなく、薬局機能も標準化されているという。
 
 背景にはドイツは完全医薬分業であることがあるという。病院では外来患者の処方箋は扱えない。これによって薬局に品物が集中される一方、薬局が対応をしなければ患者は医薬品が入手できないとした。

 さらにドイツの薬局には相談を受ける個室を備えている。
個室があるという「構造」と、24時間輪番制などの「機能」の両面は、緊急避妊薬のスイッチOTCの後押しになっていると考えられるとした。

日本コミュニティーファーマシー協会代表理事の吉岡ゆうこ氏

緊急避妊薬のスイッチによって土日の販売が伸び、月曜日の販売が減少した。週末に求めたくても月曜日まで待っていたものがOTC化によって土日にも購入することができるようになったことを示していると考えられる

この記事のライター

関連するキーワード


緊急避妊薬 スイッチOTC

関連する投稿


【東京都薬剤師会】市販緊急避妊薬の「産婦人科医等との連携リスト」関与の方針

【東京都薬剤師会】市販緊急避妊薬の「産婦人科医等との連携リスト」関与の方針

【2025.11.07配信】東京都薬剤師会(都薬)は11月7日に定例会見を開いた。その中で、市販化の見通しとなった緊急避妊薬の販売条件となる「産婦人科医等との連携体制」のリストについて、都薬としても関与していく方針を示した。


【緊急避妊薬のスイッチOTC】承認取得/あすか製薬、販売元は第一三共HC

【緊急避妊薬のスイッチOTC】承認取得/あすか製薬、販売元は第一三共HC

【2025.10.20配信】あすか製薬ホールディングスは10月20日、子会社のあすか製薬が緊急避妊薬「ノルレボ」の製造販売承認を取得したと公表した。承認取得を受け、第一三共ヘルスケアが同品の販売元として、発売に向けた情報提供体制の整備を進めるという。


【ジェネリック学会OTC分科会】生活習慣病薬のスイッチOTC化の推進で提言書公表

【ジェネリック学会OTC分科会】生活習慣病薬のスイッチOTC化の推進で提言書公表

【2025.10.13配信】日本ジェネリック・バイオシミラー学会のOTC医薬品分科会(分科会⾧・武藤正樹氏)はこのほど、活習慣病薬のスイッチOTC化の推進で提言書を公表した。10月11日に盛岡市で開催された「日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会 第19回学術総会」「OTC医薬品分科会」のシンポジウムの場で示したもの。シンポジウムは日本OTC医薬品協会当の共催。


【日薬】緊急避妊薬のスイッチ化でパブコメ提出/「賛成」

【日薬】緊急避妊薬のスイッチ化でパブコメ提出/「賛成」

【2025.09.25配信】日本薬剤師会は9月25日、定例会見を開き、緊急避妊薬のスイッチOTC化に関して、パブコメを提出したことを説明した。


【PPI】国内初のOTCを発売/エーザイ「パリエットS」

【PPI】国内初のOTCを発売/エーザイ「パリエットS」

【2025.06.02配信】エーザイは6月2日、国内 OTC 医薬品として初めて製造販売承認を取得したプロトンポンプ阻害薬(PPI)である「パリエットS」を発売した。


最新の投稿


【ドラッグストア協会】かかりつけ薬剤師「在籍年数」延長に反対

【ドラッグストア協会】かかりつけ薬剤師「在籍年数」延長に反対

【2025.12.06配信】日本チェーンドラッグストア協会は12月5日に定例会見を開き、調剤報酬改定への要望を説明した。かかりつけ薬剤師指導料の要件見直しについても要望した。


【ドラッグストア協会】敷地内薬局「ただし書き」撤廃でも、「新規開局に限定を」

【ドラッグストア協会】敷地内薬局「ただし書き」撤廃でも、「新規開局に限定を」

【2025.12.06配信】日本チェーンドラッグストア協会は12月5日に定例会見を開き、調剤報酬改定への要望を説明した。敷地内薬局について、施設基準において「ただし、当該保険薬局の所在する建物内に診療所が所在している場合を除く」という「ただし書き」を削除すべきとの意見が出ていることに対し、撤廃でされたとしても新規開局に限定すべきといった要望を表明した。


【ドラッグストア協会】敷地内薬局「連座制導入」なら「薬局事業撤退せざるを得ない」

【ドラッグストア協会】敷地内薬局「連座制導入」なら「薬局事業撤退せざるを得ない」

【2025.12.05配信】日本チェーンドラッグストア協会12月5日に定例会見を開き、調剤報酬改定要望をを表明した。その中で、敷地内薬局「連座制導入」なら薬局事業から撤退せざるを得ないなどと、強い抵抗感を示した。


【日薬】森副会長「基本料1の議論、手をつけること考えていない」

【日薬】森副会長「基本料1の議論、手をつけること考えていない」

【2025.12.03配信】日本薬剤師会は12月3日に定例会見を開いた。その場で中医協委員である副会長の森昌平氏は調剤基本料1を取り上げた議論に対して、日薬としては「対応は全く考えていない」と言及した。


【日薬】調剤報酬改定、「まずは薬局の維持を」

【日薬】調剤報酬改定、「まずは薬局の維持を」

【2025.12.03配信】日本薬剤師会(日薬)は12月3日に定例会見を開き、中医協での調剤報酬改定の議論について言及した。


ランキング


>>総合人気ランキング