スイッチ化で土日の販売が増加/ネット販売は禁止
ドイツでは、2015年3月から緊急避妊薬がスイッチOTC化されたという。
アッセンハイマー氏は、緊急避妊薬のOTC薬供給は女性の保護、女性の人権に関わる重要な問題として、国民の健康を守る薬剤師として、「これからどんどん関わっていかなければいけないテーマだと思っていると話した。
日本では2017年から議論は上がっているが、なかなか実現には至っていない状況については、「解禁まで薬剤師・薬学生は事前に知識を勉強しておくことが重要」との認識を示した。
ヨーロッパではフランスでは1999年にはスイッチ化されていたため、ドイツのスイッチはヨーロッパの中では遅い方だったという。
ドイツでは成分は2種類で、レボノルゲストレルと酢酸ウリプリスタール。
スイッチ化後の販売推移では、2015年から2018年にかけて処方薬も含めた全体の販売金額が伸びている。全体の処方薬の比率は年を追うごとに小さくなっている。希望者が直接薬局で購入することが増えていることが分かる。
スイッチ前後の曜日ごとの販売数量変化では、土曜・日曜の販売数量が伸び、逆に月曜日・火曜日の販売数量が減少しているという。週末に求めたくても月曜日まで待っていたものがOTC化によって土日にも購入することができるようになったことを示していると考えられる。
価格は23ユーロ、「日本はずいぶん高い」
同氏はスイッチ化の最大のメリットとして、避妊失敗から服用までの時間を短くすることができることを挙げる。それを可能にしているのがドイツの輪番制の24時間医薬品供給体制だ。真夜中だろうと、地域でどこかの薬局が開いているという。
一方で薬局の課題も多くあるという。スイッチ化から7年目ではあるが、万全の体制には至っていないとした。
例えば、服薬後の避妊法などの充分な説明ができているか。すでに排卵しているケースなど場合によっては子宮内に装着する銅付きIUDで受精卵の着床を妨げる方法を推奨するなど、必要であれば医師の受診を促す。そういったケースの判断と指導については専門医から薬局への苦言もあるという。
ドイツでは緊急避妊薬のネット販売は禁止されているという。違法販売サイトを見つけた場合は当局に通報し、サイト抹消などの対応をしてもらっているという。違法販売者のチェックも薬剤師の使命として行っているという。
レボノルゲストレルの価格はオリジナル製品でも23ユーロ(1ユーロ130円換算で3000円)で、日本の価格は「ずいぶん高価」と感じているとした。23ユーロは学生でも購入できる価格帯とした。
「販売の時は、毎回緊張する」
同氏は「販売から7年目を迎えたが、販売の際は、毎回緊張する」と話した。「きちんと必要な情報が伝えられているか、その情報に基づいて行動を促せているかなど、心配になる」と話す。特に難しいケースが低用量ピルを服用している人が飲み忘れたケースで、飲み忘れから何時間経過しているかなどの状況によって緊急避妊薬を必要とするか否かの判断が難しいとした。
使用者以外の購入に関しては電話等で本人に連絡し、状況を判断する。また、14歳未満の場合は保護者の同意が必要となる。
最も多い購入事例は、コンドームがはずれた、破れたというケースだという。
非常に稀ではあるが、性犯罪に巻き込まれたことが疑われるケースがあるという。コンドームが破れた、などの理由の時とは様子がだいぶ違うケースがあるという。そのような場合には「いつでも薬剤師も相談に乗れる」ことや産婦人科医への相談も可能であることを伝えるようにしているという。
講演では、緊急避妊薬のテーマに続いて、ドイツの薬局の構造について説明があった。
これは緊急避妊薬の 24時間対応にも関連するが、ドイツでは規模の大小や立地に関わらず、「1つの薬局はなんでもできる」という。品揃えにも差がなく、薬局機能も標準化されているという。
背景にはドイツは完全医薬分業であることがあるという。病院では外来患者の処方箋は扱えない。これによって薬局に品物が集中される一方、薬局が対応をしなければ患者は医薬品が入手できないとした。
さらにドイツの薬局には相談を受ける個室を備えている。
個室があるという「構造」と、24時間輪番制などの「機能」の両面は、緊急避妊薬のスイッチOTCの後押しになっていると考えられるとした。

日本コミュニティーファーマシー協会代表理事の吉岡ゆうこ氏

緊急避妊薬のスイッチによって土日の販売が伸び、月曜日の販売が減少した。週末に求めたくても月曜日まで待っていたものがOTC化によって土日にも購入することができるようになったことを示していると考えられる