【薬剤師によるコロナワクチン接種】昭和薬科大学、シュミレーターで静注・筋注を実習/モデルカリキュラムの一環で2016年から

【薬剤師によるコロナワクチン接種】昭和薬科大学、シュミレーターで静注・筋注を実習/モデルカリキュラムの一環で2016年から

【2021.05.31配信】薬剤師がコロナワクチン接種の打ち手になるべきか否か、議論が進んでいる。こうした中、昭和薬科大学では2016年からシュミレーターで静注・筋注の実習を4年次に行っている。これは薬学教育モデルコアカリキュラムの項目の一環として同大学が取り組んでいるもの。人体への針刺しは現状では違法となるため、行ったことがある薬学生がいないことは当然だが、薬学教育の一部でこうした準備を行ってきたことは、今後の議論の行方にも影響するといえるだろう。


 昭和薬科大学では2016年から4年次学生全員を対象に、4年次前期に臨床前事前実習の一つとして「採血・注射の基本的手技」を行っている。

 これは 薬学教育モデルコアカリキュラムの「F 薬学臨床 薬物療法の実践 《処方設計と薬物療法の実践》:4. 皮下注射,筋肉内注射,静脈内注射・点滴等の基本的手技を説明できる.及び 薬学実務実習に関するガイドライン 実施内容(例示)」の項目にある「皮下注射、筋肉注射、静脈内注射、点滴注射などの基本的手技を、シミュレーターなどを利用して学習する。」に基づいた実習となる。

 看護学部で使われている教科書や教材をもとに注射を打つことに関することだけでなく、採血や注射の目的に関する知識(一般的な医学知識)を講義。 

 そのうえで、下記のような採血・注射の基本的手技に関する講義を80分間行う。 
<採血>
【採血の目的】 採血は検査の基本であり,わずかな侵襲で多くの情報を得られる.静脈採血により診断から治療効果の確認を行うことができる.
【採血法の種類】採血法には,静脈採血,動脈採血,毛細血管採血,混合静脈採血があり,目的に合わせて採血方法を選択する.
【静脈採血】 一般血液検査,血液培養など様々な目的で行われる.静脈採血に用いる血管は,上肢の橈側皮静脈,肘正中皮静脈,尺側皮静脈が最も用いられる.シリンジを用いる場合と,ホルダーを用いた真空管採血を行う場合がある.
【細血管採血】針で皮膚を穿刺し,そこからにじみ出てくる血液を採取する方法 毛細血管に富んでいる指先の手掌側,足底,耳介などが選択される. 頻回に採血が必要な自己血糖測定や,血管の穿刺が難しい新生児の採血などに用いられる.

<注射>
【注射の目的】注射とは,皮膚や筋肉,静脈に針を穿刺して薬物を投与する方法である.薬剤を直接体内に投与するため,吸収性を考慮することなく,最も早く血中濃度が上昇し,即効性を期待できる.
【注射の投与法】注射には大きく分けて皮内注射,皮下注射,筋肉注射,静脈注射がある.薬剤の作用発現時間,持続性,薬剤自体の適応や難易度などから状況に応じて投与方法を決定する.

******
 実際の実習では60分程度。
 DVDによる説明ののち、実技はシュミレーターをもちいてまずは教員が模範手技を見せる。 
 その後、学生はシュミレーターで静注・筋注1回ずつシュミレーターを用いて実習する。もちろん人には打てない。

 また、患者自身が行うインスリンの自己注射手技、血糖値の自己測定の実習も行っている。

******

感染症医の青木眞氏がブログで昭和薬科大学の取り組みを紹介

 「レジデントのための感染症診療マニュアル」などの著書を出していることでも知られる感染症医の青木 眞氏は、自身のブログでこうした薬学部の取り組みを取り上げている。
https://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/af1266af80cb927bfa81424850f08f5e?fbclid=IwAR3A9pogJXZR8yjKEHVOtWcui2kS38dGl7t8Uw98QjSC0iCLjDr9OEoRiio

この記事のライター

関連する投稿


【日薬代議員】 奈良、唯一の選挙で後岡氏(44)が当選/5月には会長選に挑む

【日薬代議員】 奈良、唯一の選挙で後岡氏(44)が当選/5月には会長選に挑む

【2024.04.15配信】令和6年3月28日に投開票された日本薬剤師会代議員選挙で、奈良県薬では44歳の後岡伸爾氏が当選した。今回の代議員選挙では唯一、選挙を行っての決定となった。


【日病薬】武田会長、改定の「薬剤業務向上加算」、第8次医療計画を後押しするもの

【日病薬】武田会長、改定の「薬剤業務向上加算」、第8次医療計画を後押しするもの

【2024.02.17配信】日本病院薬剤師会は2月17日に臨時総会を開いた。挨拶した武田泰生会長は今回の診療報酬改定にも触れ、薬剤業務向上加算については、「新任薬剤師の研修体制の構築や、出向を通してシームレスな薬物治療をつなぎ、第8次医療計画を後押しするものと期待している」と評価した。


【昭和薬科大学】理事長に渡部一宏氏が就任/薬剤師によるワクチン接種のキャンペーン活動で知られる

【昭和薬科大学】理事長に渡部一宏氏が就任/薬剤師によるワクチン接種のキャンペーン活動で知られる

【2023.05.14配信】昭和薬科大学は5月11日に開催された第249回評議員会及び第 1003 回理事会において役員改選を行い、新役員を選任した。理事長には渡部一宏氏が就任する。任期は令和5年5月11日から令和8年5月10日。


【コロナワクチン接種】薬剤師の貢献を振り返る/飯能地区薬剤師会(埼玉)の事例から

【コロナワクチン接種】薬剤師の貢献を振り返る/飯能地区薬剤師会(埼玉)の事例から

【2021.12.10配信】3回目の接種に向けて準備が進むコロナワクチン。1回目、2回目の接種では初めての事態に自治体や医療従事者の中でも戸惑いがあった。そのような中、接種会場への協力等の薬剤師の参画に対しては、高い評価があった。飯能地区薬剤師会(埼玉)の取り組みから振り返る。


【米国薬剤師の役割でセミナー開催】全米州薬局協会連合州政策担当部長のAllie Jo Shipman氏が登場/主催・真野俊樹氏

【米国薬剤師の役割でセミナー開催】全米州薬局協会連合州政策担当部長のAllie Jo Shipman氏が登場/主催・真野俊樹氏

【2021.08.17配信】8月20日(金)9時〜、真野俊樹氏(多摩大学大学院教授)が主催するWEBセミナーが開かれる。テーマは「米国薬剤師の役割とその重要基盤COVID-19を踏まえて」。数十名規模でインタラクティブな質疑応答が可能なセミナーとなっている。料金は1万6000円。申し込みはPeatixより。https://digital-health-now-4.peatix.com/


最新の投稿


【緊急避妊薬のスイッチOTC】承認取得/あすか製薬、販売元は第一三共HC

【緊急避妊薬のスイッチOTC】承認取得/あすか製薬、販売元は第一三共HC

【2025.10.20配信】あすか製薬ホールディングスは10月20日、子会社のあすか製薬が緊急避妊薬「ノルレボ」の製造販売承認を取得したと公表した。承認取得を受け、第一三共ヘルスケアが同品の販売元として、発売に向けた情報提供体制の整備を進めるという。


【厚労省_疑義解釈】保険薬局との「特別な関係」で/総合入院体制加算及び急性期充実体制加算施設基準

【厚労省_疑義解釈】保険薬局との「特別な関係」で/総合入院体制加算及び急性期充実体制加算施設基準

【2025.10.20配信】厚生労働省は10月20日、令和6年度診療報酬改定に関する「疑義解釈(その30)」を発出した。総合入院体制加算及び急性期充実体制加算の施設基準においては、病院が特定の保険薬局との間で不動産取引等その他の特別な関係があれば、当該保険薬局の所在する建物内に診療所が所在している場合でも、「特定の保険薬局との間で不動産取引等その他の特別な関係がない」に該当しないとした。


【日薬・NPhA・JACDS】「安心を守る」薬剤師の役割で共同広告

【日薬・NPhA・JACDS】「安心を守る」薬剤師の役割で共同広告

【2025.10.16配信】公益社団法人日本薬剤師会(日薬)、一般社団法人日本保険薬局協会(NPhA)、一般社団法人日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)の3団体は、「国民の健康維持・増進を支援する」ため、薬剤師の役割と機能を広く発信する共同広告企画を実施する。


【ジェネリック学会OTC分科会】生活習慣病薬のスイッチOTC化の推進で提言書公表

【ジェネリック学会OTC分科会】生活習慣病薬のスイッチOTC化の推進で提言書公表

【2025.10.13配信】日本ジェネリック・バイオシミラー学会のOTC医薬品分科会(分科会⾧・武藤正樹氏)はこのほど、活習慣病薬のスイッチOTC化の推進で提言書を公表した。10月11日に盛岡市で開催された「日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会 第19回学術総会」「OTC医薬品分科会」のシンポジウムの場で示したもの。シンポジウムは日本OTC医薬品協会当の共催。


【日本薬剤師会】地域連携薬局「基本的な考え方」で質疑/奈良県薬・後岡会長

【日本薬剤師会】地域連携薬局「基本的な考え方」で質疑/奈良県薬・後岡会長

【2025.10.11配信】日本薬剤師会は10月11日、都道府県会長協議会を開催。質疑の中で地域連携薬局の「基本的考え方」について質問が出た。奈良県薬剤師会会長の後岡伸爾氏が質問した。