【薬剤師の取り組み】S N Sアカウントを「性教育と薬物専門講師」にした薬剤師の活動

【薬剤師の取り組み】S N Sアカウントを「性教育と薬物専門講師」にした薬剤師の活動

【2021.03.08配信】緊急避妊薬を薬局で販売する議論がきっかけの一つではあると思う。薬局薬剤師の中に、「性」に関する相談能力を拡充しようとする動きがある。ヒルマ薬局(東京都板橋区)の比留間康二郎氏もその一人だ。S N Sのアカウントを「性教育と薬物専門講師」とし、学校への講演活動などを展開している。今回、比留間氏から活動への思いをご寄稿いただいた。その中に込められていたのは、難しいテーマだからこそ、悩んでいる若い世代に寄り添えることのやりがいではないかと思う(編集部)。


性教育は薬剤師のやることではない?

 え? 薬剤師が性教育? 性教育って薬剤師のやる範囲と違くない? 産婦人科医師がおるやん・・・。 他にやってる団体だってたくさんあるじゃん。 そんな教育自分も受けたことないしわからない・・・。自分の子供にさえ話したことないのに・・・。 性教育なんて恥ずかしくて出来ないよ・・・。 ましてや男性がやるなんて・・・。

 たくさんの方が性教育と聞いてそう思われたのではないかと思います。

 小学生や中学生・高校生が性教育を学ぶ環境は昔に比べたらかなり変化し始めています。わざわざ薬剤師がする必要もないのかもしれません。

 ですが・・・。私達の薬剤師法第1条を考えたときに公衆衛生の観点からも「今」、声を上げることが大事なのではないかと思いTwitter上で私は「性教育と薬物専門講師」という名前を記載しました。

 なぜ「今」なのか。性教育に前向きでない方の意見に「必要な子には個別で対応すればいい」という声をよくききますが、「必要だ」とどうしたらわかるのでしょうか。相談してきてくれた時が、必要な時? 本当にそうでしょうか。相談できずに悩んでいる子の方が沢山いるかもしれません。

もし緊急避妊薬を薬局だけでの受け渡しが可能になった場合、私達薬剤師が「性」に携わる機会が増える可能性が高まります。その時に私達薬剤師はきちんと相手を尊重して対応することが出来るでしょうか。 薬局に来た子だけに必要な情報を伝えておけばいいのでしょうか? ただお薬を渡すだけの場所になってはいけないと思うのです。

 様々な事情の中で、必要なところに繋げるハブに薬局がなっていかなければいけないと思っています。

性教育は「価値観教育」ではないか

 私が思う性教育って「人権教育」「価値観教育」 だと思っています。

 今はTwitterやYouTubeで簡単にいろんな情報を入手することができます。子供たちの環境変化もあります。昔のように「ザ•不良」という学生が少なくなってきて、暴力的な関わりが少なくなってきたのに対して、少し陰湿なイジメやSNSでの誹謗中傷的な心のいじめが増えてきているのも事実です。

 私が関わらせていただいた学校の校長先生の話では、昔のような不良生徒よりも不登校の生徒が増えてきたとおっしゃっていました。不登校になると正しい情報や体験の場が少なくなり、心の問題や家庭の問題が増えてきている。こうなった時に、間違った情報を鵜呑みにしてしまう可能性が高まります。

 だからこそ薬局の薬剤師が、学校薬剤師をしている薬剤師が立ち上がるべきだと思いました。

 たった1回でも情報に触れることで変わる人生があります。

 皆さんも体験や本、講演や人との出会いで人生変わった経験がありませんか。繋がれる場を増やしていくことが必要だと思うのです。

 薬剤師だから性教育なんて関係ない、ではなく薬剤師でも出来るということを、存在価値を出していく必要があるのかなと思っています。

 性教育は人権教育と先程述べましたが、最近ではLGBTQなどジェンダー的な性の多様性にも目を向けなくてはいけません。
 
 性教育というと女性の妊娠についてのテーマが大きくとりだたされるかと思いますが、同性愛での性感染症も大事な話題になります。

 緊急避妊薬があるように同性間でもPrEPによる性感染症の予防治療などもあります。
 
 私達薬剤師だからこそ伝えられる内容があると思い、性教育と薬物専門講師として活動しています。

小学校6年生や中学校3年生向けに講演活動

 小学校や中学校で特に環境が新しく変わる前の小学6年生や中学3生向けにお話させていただいています。

 講演後、自分の悩みを打ち明けてくれる子供もいます。「今まで誰にも話せなかった。」と。

 講演後に私のTwitterを見つけてくれてわざわざメールで悩みを打ち明けてくれた子もいました。

 この日の講演は自分の中では今までいろんな講演をしてきましたが、一番最悪な講演でした。「皆にきちんと自分の気持ちを伝えることが出来ただろか・・・。」「あーー、もっとあーすればよかったな・・・」「こんなことも考えてたのに伝えられなかった・・・」。終わってから頭の中は反省の嵐でした。

 でも、そんな講演でも伝わるものはあったらしく、その時のアンケートを読んで私自身が涙してしまいました。

 「男・女」の「・」の部分の○をしてくれた生徒もいました。自分を自由に表現する勇気をもてたのかなと思ったり。

 Twitterで相談してきてくれた子も、「自分がどうしたらいいのかわからない」「今日、先生の話を聞いてこういう悩みを打ち明けられる場所に出会えて私は幸せです」と言ってくれました。

 誰にでも話せないことはある。話せる子だけに焦点を向けてるだけではだめだ、と思いました。

 こうやって勇気を出して相談を持ち掛けてくれて、このようにどこにも行き場のない思いを持つ子供たちの力になれて、少しは自分も役に立つことが出来たのかなと思わせてくれました。

 それぞれの人にそれぞれの人生があって、その歩いてきた道を互いに尊重していける世の中になっていけたら私は素敵だなと思っています。

 性教育を通してたくさんの方と関わらせていただくようになり感じたことがあります。

 「貴方は素敵な人なんだよ」。私はこの想いを聴いてくださった方にこれからも伝えていきたいと思います。

もし興味があったら一緒に活動していきませんか?

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プロフィール
比留間 康二郎(ひるま こうじろう)

資格 薬剤師・ドリームマップファシリテーター
サプリメントアドバイザー

所属 有限会社 ヒルマ薬局 取締役 
一般社団法人 板橋区薬剤師会 理事
(地域災害・学生実習担当)

豊島区学校薬剤師会 学校薬剤師 
(池袋本町小学校 担当)
東京薬科大学 薬学部 非常勤講師
NPO法人 ポジティブフロムジャパン 理事

【略歴】
2004年 東京薬科大学薬学部薬学科 卒業
2004年 薬剤師免許取得
2004年 日本大学医学部付属板橋病院 にて研修生として勤務
2005年 国立成育医療センター 非常勤職員として勤務
2007年 有限会社 ヒルマ薬局 入社
2014年 有限会社 ヒルマ薬局 取締役 就任

■Twitterアカウント
https://twitter.com/hiruppypharmacy
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