【地域連携薬局要件】「月30回以上の医療機関の連絡」に疑義照会は含まれず

【地域連携薬局要件】「月30回以上の医療機関の連絡」に疑義照会は含まれず

【2021.01.30配信】厚生労働省医薬・生活衛生局総務課は、地域連携薬局の要件に関する通知を発出した。地域連携薬局の要件である「月30回以上の医療機関の連絡」に疑義照会は含まれないなどとしている。


 1月29日に、局長通知「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行について(認定薬局関係)」を出した。

 この中で、「座つて情報の提供及び薬学的知見に基づく指導を受けることができる」の要件に関しては、やむを得ない場合には、必ずしもあらかじめ椅子を備え付けておく必要はないとした。利用者が座って相談を受けられることが可能であることが認識できる工夫がされていればよいという。

 「間仕切り等で区切られた相談窓口その他の区画並びに相談の内容が漏えいしないよう配慮した設備」の要件については、単にパーティションを設置すれば良いというものではなく、相談できるスペースを十分確保するなど、情報提供や服薬指導の内容等が他の利用者に聞き取られないよう配慮することを求めている。

 「地域包括ケアシステムの構築に資する会議への参加」の会議例として、「地域ケア会議」や「介護支援専門員が主催するサービス担当者会議」、「地域の多職種が参加する退院時カンファレンス」などを挙げた。

 「月平均 30 回以上の医療機関への連絡」要件の例としては、「ア 利用者の入院に当たって情報共有を行った実績」「イ 医療機関からの退院に当たって情報共有を行った実績」「ウ 外来の利用者に関して医療機関と情報共有を行った実績」「エ 居宅等を訪問して情報提供や指導を行い、その報告書を医療機関へ提出して情報共有を行った実績」を挙げた。さらにア~エはいずれかのみではなく、満遍なく実施することが望ましいとした。
 また、当該薬剤師の主体的な情報収集により連絡したものであることが必要で、医療機関から行われる利用者の検査値等のみの情報提供や、利用者の情報を含まない施設等に係る情報提供、服用中の薬剤に係るお薬手帳への記載及び薬剤師法(昭和 35 年法律第 146 号)第 24 条に基づく疑義照会は、本規定における報告及び連絡させた実績には含まれないとした。

 通知では上記以外の要件についても解説されている。
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000731165.pdf

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 地域連携薬局の要件は、あるべき薬局の姿を時間をかけて議論されてきた「患者のための薬局ビジョン」の内容に準じて設定され、それを目指すことが社会における薬局のポジション向上につながるであろうことは前提として理解できる。

 その上でいえば、今回の地域連携薬局を目指していくことが、全体の底上げになるのか、という点においては疑問も残る。

 仮に「月30回以上の医療機関への連絡」のない薬局が、地域や患者から求められる薬局ではないかといえばそうではないだろう。
 「月30回以上」のように、一定の“量”を求めていくと、母数の処方箋枚数の多寡が要件を満たすのに有利に働く可能性もあり、規模の大きな薬局が評価されるという状況も想定される。
 薬局の中には処方箋枚数は多くなくとも、セルフメディケーションや地域の人の生活相談に乗っている薬局もあるだろう。こうした薬局は地域連携薬局を目指すことが難しく、どこか“取り残された”気持ちを抱くのではないだろうか。薬局は今後、「専門医療機関連携薬局」「地域連携薬局」「健康サポート薬局」などの名称を使えるようになるが、そのどれでもない薬局は“その他の薬局”となるのか。こうなってくると、“薬局”そのこと自体の価値がむしろ毀損されていくのではないかという思いも湧いてくる。
 
 国が目指すのは「底上げ」ではなく、「切り捨て」なのだろうか。
 いまある薬局を生かしていくことこそ重要な政策であることを考えると、今突き進む道が本当に正しいのか、立ち止まって考えてみることも必要だと感じる。

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