進む「タスクシェア」で薬剤師の存在感薄い【イケアキの医療制度深読み】

進む「タスクシェア」で薬剤師の存在感薄い【イケアキの医療制度深読み】

【2021.01.26配信】保険薬局に勤務しています池下暁人と申します。SNSなどでは「イケアキ」の通称で発信させていただいています。なんと今回、ドラビズon-lineさんで【イケアキの医療制度深読み】と題して、気になる医療政策の動向と私見を寄稿させていただけることになりました。しかも私なりの内容、書き方、タイミングで大丈夫とのこと。どんだけドラビズさん寛大なんや・・・。たまたま勉強会で“タスクシェア”について何気なく発言したのですが、それがもとで今回のお話をいただきましたので人生何があるか分かりません。そういう縁もあって、今回は『タスクシェア、薬剤師は“負け”…?』というテーマで寄稿したいと思います。


 みなさん、“タスクシェア”という言葉は聞いたことはありますでしょうか。直訳すると「作業の分担(共有)」になります。

 以前から医師の長時間労働が社会問題化していて、それを解決していく中でタスク(医師の仕事)をシェア(コメディカルに分担)できないか、と検討されてきました(厚生労働省「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会」)。

 2020年12月23日時点における議論の整理では、薬剤師部分は以下のようになっています。ほぼこの内容で決定になるかと思いますし、これら全て現行法で出来るという解釈なので、1月18日に開会した通常国会への提出予定法案に薬剤師の項目は入っていません。

 検討会資料には下記の文言はありますが・・・。

職種毎に推進するもの
ⅲ)薬剤師
〇手術室・病棟等における薬剤の払い出し、手術後残薬回収、薬剤の調製等、薬剤の管理に関する業務
〇事前に取り決めたプロトコールに沿って、処方された薬剤の変更(投与量・投与方法・投与期間・剤形・含有規格等)
〇効果・副作用の発現状況や服薬状況の確認等を踏まえた服薬指導、処方提案、処方支援
(参考:https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000720006.pdf

 今回の検討会、実は薬剤師の代表は入ってないんですよね。なぜ入っていないか明確な理由は不明ですが、おそらく「必要ない」と判断されたのでしょう。(悲しーッ)

 タスクシェアには賛成・反対含め色んな意見があるかと思いますが、このような重要な検討会には是が非でも参加して欲しかったなと思っています。

 少し話は変わりますが、私が今回のコロナ禍で感じたのは「薬局ができること少な!」って事でした。
 もちろん、薬局が患者と医療機関の橋渡しに重要な役割を担ったり、地域住民への医療リテラシー向上に貢献したことはアンケート調査などからも判明(※下記資料参照)していますが、個人的にはもっと薬局が出来ることを増やせたら色々な貢献ができるのかな、と感じています。

コロナ禍では薬局は感染予防などの啓発を行った(日本保険薬局協会調査、2020年6月)

 いずれにせよ今回のタスクシェア検討では私含めしっかりアクションを取れなかったですし、(勝ち負けではないかもしれませんが)あえて勝敗をつければ今回は「負け」になってしまうんじゃないかな~と勝手に思っています。

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イケアキ(池下 暁人 いけした あきと)
2003年に薬剤師免許取得後、個店薬局、DgS、国立病院機構を経て、2017年から診療報酬改定などに関わる。
もっと薬剤師が医療制度に興味持たないとな~とか思いながら日々活動中。
Twitterアカウント@AkitoIkeshita
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