【独自】「ウエルシアHDが地域偏在する薬剤師の供給拠点に」/松本忠久社長インタビュー

【独自】「ウエルシアHDが地域偏在する薬剤師の供給拠点に」/松本忠久社長インタビュー

コロナ禍により薬剤師需給バランスが変化した。しかし、地域偏在の問題は尾を引きそうな情勢。こうした中、ウエルシアホールディングスの松本忠久社長は、「ウエルシアが地方への薬剤師供給拠点の役割を果たし、地域偏在の問題に貢献したい」との考えを示した。コロナ禍は「門前から身近な地域へ」という処方箋の流れを加速させ、同社の薬剤師採用の追い風となっていることも背景の一つだ。一方、地域の中核病院と連携したモデル的な店舗出店計画も進んでおり、高度医療の知識を習得した薬剤師を養成、その後、各地に配属するような流れも可能になる。およそ6000人の薬剤師を擁する同社が“薬剤師市場”に与える影響は小さくないだろう。


2021年4月入社薬剤師は過去最高の400人予定

 「薬剤師中途採用に要する期間が短くなりました。5分の1ぐらいの期間になったのではないでしょうか」

 率直な感触を話す松本社長。「コロナによって門前薬局よりも身近な地域の薬局に処方箋を持っていくという流れが加速し、門前薬局から当社に人材が流入してきていると思う」との見方を示す。

 同社では2021年2月薬剤師中途採用では、206人の採用にいたっている(2020年10月末現在)。

 一方、薬剤師の需給バランスが逆転したという指摘は多いが、地域遍在の状況に変わりはないという。松本社長は、「当社が地域への薬剤師供給拠点のような役割を果たし、地域偏在の問題に貢献できればと考えています」と話す。

 もちろん、同社では勤務地に関して従業員の意向優先だが、地方勤務を厭わない人も少なくないといい、何よりも全国的に展開する同社だからこそできる貢献として注力していきたい考えだ。

 2021年4月に同社に入社する新卒薬剤師は、過去最高となる400人となる見込みだ。

 同社の調剤併設率は関東や関西の都市部エリアでは90%近くまで到達しているという。今後は、地方の店舗でも調剤併設率が上昇し、処方箋調剤の役割としても地域での存在感が高まっていきそうだ。

 同社では薬剤師過剰時代にも生き残れる薬剤師養成を掲げており、現在、教育の場ともなれるような地域中核病院近くの大型薬局を準備中だ。月間処方箋枚数は1万枚も視野に、最新の調剤機器を導入予定。高度医療の知識も習得した薬剤師を養成し、全国に配置できるような流れも可能になると考えている。

 また同社ではコロナ拡大前から、調剤業務の機械化を推進してきた。
「調剤にかかわる薬剤師業務の71%は機械化できるという指摘もあります。機械化できるところは機械化を進めることで、より一層、薬剤師が店舗の“外”に出ていくことが可能になります。地域との関わりにより多くの時間を使うことができるようになるのです」(松本社長)
地域への貢献度を高めていきたい考えだ。

OTC市場の15%超を担う同社の役割

 松本社長が現職に就任したのは2019年3月。その後、数多くのプロジェクトを社内で立ち上げるなど、変革を急ぐ。過去の否定ではなく、専門性を持ちつつ総合的な拠り所となる “専門総合店舗”を目指すとのビジョンに立ち返り、常に現状を疑って見る目を怠らない。
 
 そうして立ち上がったのが「ものづくりチーム発足」や「医療開発部の立ち上げ」、「ヘルスケア売場機構改革」などだ。

 「ものづくりチーム」は、“ウエルシアらしさ”を探求するプライベートブランドを創る部署。20代など商品開発に経験の浅い社員も集めた。「失敗しても、それを経験とし、社内にものづくりの文化をつくっていきたいと考えています」と、松本社長は目的を話す。

 「医療開発部」は、医療機関の誘致業務を“内製化”したもの。これまでは、医療機関の開業案件に同社が参画することもあったが、同社とのタッグを“指名”する医師も少なくないことから、「それなら、最初から当社内で一緒にやらせていただいた方がスピード感を持ってお応えできるのではないかと考えました」(松本社長)。例えば郊外店では同社店舗の2階に医療機関に開業してもらうなどのコラボレーションがあるという。開業医と同社のタッグも増えていきそうだ。

 「ヘルスケア売場機構改革」では、「真にコミュニケーションを取る売場になっているか」を改めて問い直す。コミュニケーション力を重視した教育研修の拡充のほか、売り場でカウンセリングを行うスタッフをアシストするシステム提供も行う。気になっている症状から適切な成分などを導くものだ。

 「当社のヘルスケア売り上げは約1500億円です。1兆円といわれるOTC医薬品市場の中で15%をウエルシアが担っている計算になります。その役割や責任に応えられる売場を常に目指していきます」(松本社長)。

 そのほかにも社内の管理栄養士が、栄養士としての専門知識が生かせるプロジェクトなどが進行しているという。

 「OTCカウンセリングが得意なベテラン薬剤師や本来はドラッグストアの中で活躍の場が多いはずの管理栄養士など、社員の能力を生かし切れているのかどうか。組織の見直しも含め、検討していきます」(松本社長)

“5回目の社長”

 コロナ禍でも営業継続したドラッグストアは好業績になる見通しがある。

 松本社長は、「今期の利益はコロナ禍の社員の頑張りによるもの」との考えで、利益を社員にも還元していく方針だ。

 具体的には士気向上や求心力にもなると考えられるオリジナルユニホームを2021年4月にお披露目する計画。「ユニホームに関しては機能的であることはもちろんですが、社員に“かっこいい”“おしゃれ”“着たい”と思ってもらえるユニホームを目指しています」(松本社長)という。

 もう1つは、店舗の換気扇の見直しだ。コロナ対策としての空気入れ替えの重要性も踏まえ、一段、基準を上げた空気の入れ替えを行い、従業員が働いている時間の安心感をサポートしたい考えだ。ショッピングモール内や立地などで自社での入れ替えが困難な場合を除き、できる限り全店舗での“空気の環境”改善を目指すという。

 就任直後とは思えない施策の数々だが、それもそのはずで、同氏が“社長になる”のは5社目。

 サンドラッグ勤務後、いいのに入社し、いいので社長を務めた。合併で誕生したグローウェルホールディングスでは、グループ企業の寺島薬局社長を務め、ウエルシアグループでも上海合弁会社の董事、ウエルシア-BHG(シンガポール)社長などを歴任してきた。“社長業”の経験は豊富。

 一方、大胆さを感じさせる松本社長だが、実は“メモ魔”であるという。

 朝7時半ごろからオフィスに来て、毎日、前日会った人や話したことを書き留めているという。その量は1日A4用紙で1枚分にもなるという。

 「繊細さも持ち合わせているんですね」と聞くと、「臆病なだけですよ」という。1年前に行った店舗を再訪する時は当時のメモを見直すこともあるという。

 「話していたことに矛盾はないかなとか、目指していたことはどのくらい進んだかの確認にもなります」(松本社長)
 
 繊細さではなく、“計画性”なのかもしれない。
 計画性と大胆さを持ち合わせる松本社長の改革の成果に注目していきたい。

まつもと・ただひさ●1958年生まれ。1983年北陸大学薬学部卒業後、サンドラッグ入社。1991年いいの入社、2004年いいの社長。2006年合併によりウエルシア関東副社長、08年グローウェルHD(現ウエルシアHD)取締役。グループ企業の寺島薬局社長や上海合弁会社の董事、ウエルシア-BHG(シンガポール)社長などを歴任。2019年3月よりウエルシア薬局とウエルシアホールディングスの社長を務める

【編集部より】本インタビューは、薬学生向け「MIL NEXT VISION」との連動企画です。ぜひ、そちらもご覧ください。

「経営者を目指してほしい 自分の夢を形にすることができるから」松本忠久(ウエルシアホールディングス)

https://www.anycr.net/post/201215welcia

社長就任以来、社内改革の新施策を次々と打ち出してきたウエルシアの松本忠久社長。「薬剤師も薬学の専門家として成長するだけではなく、企業の経営者を目指してほしい」とメッセージを送ります。

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