【独自】ベンチャー、YOJOが拓く薬剤師の“場にとらわれない働き方”

【独自】ベンチャー、YOJOが拓く薬剤師の“場にとらわれない働き方”

オンラインで相談ができ、自分に合った漢方薬などが購入できる「YOJO」。同社の取り組みは、薬剤師の新しい働き方を拓く意味でも注目を集めている。顧客もオンラインで相談ができるが、相談を受ける薬剤師もリモートワークが可能で、全国どこに住んでいても同社の業務に就けるからだ。いわゆる“たんす薬剤師”の掘り起こしにもつながると考えられる。主にチャット機能を使っている点もリモートワークのしやすさにつながっており、勤務時間中の業務の可視化につながっている。これはリアル薬局におけるリモートワークのヒントにもなるのではないか。例えば多店舗展開する薬局企業では、服薬フォローの一定のやりとりまでをリモートワークする薬剤師が担当することなどが考えられる。


リモートの「下書き」を本社が「承認」

 医師である辻裕介氏が2018年12月に創業したYOJO Technologies。現在、オンライン相談を可能とする公式LINEの友達追加は1万5000人を超えた。
 
 同社が現在、顧客の一人一人の健康に寄り添ったサービス向上とともに推し進めているのが、優秀な薬剤師の採用と、薬剤師のリモートワークの環境整備だ。
 
 同社のサービスでは、2020年9月からは通話による相談機能も追加したが、ベースはチャットによる相談への回答だ。
 このチャットでの回答に、リモートで働く薬剤師は活躍することができる。
 顧客からの相談に対してチャット回答を「下書き」すると、それを見た本社に勤務する薬剤師である「承認者」が「承認」をすることで、顧客に実際に回答を送信する仕組みを取っている。仮に薬剤師の回答内容に修正が必要な場合は、「承認者」が修正内容に関してリモートワークの薬剤師にフィードバックする。

 「会話数や購入パターン、継続機能の使用率などを日々、解析しており、その解析内容などをリモートワークの薬剤師と情報を共有しやすいこともオンラインの一つのメリットだと思っています。リアル拠点の場合では、過去の履歴の集積・分析がしづらい面もあるのではないでしょうか。その意味ではYOJOのシステムでは解析に基づいた知見の共有がしやすくなっています」(辻社長)

「残業がない」こともリモートワークの利点

 現在は、リモートワークする薬剤師はパートタイムで、9時~18時と、13時~22時のシフト制となっている。
 辻社長は、「YOJOのシステムバージョンアップが速いため、キャッチアップするためには一定の勤務時間が必要との考えから、現在はシフト制をとっている」とした上で、将来的には短い勤務時間も可能にするなど、よりフレキシブルな勤務体制を目指したい考えだ。

 リモートワークする薬剤師はすでに10人を超えてきており、毎日のように薬剤師の応募があるという。
 チャットの時間以外に、「振り返り」の時間を設けるなど、サービス向上に向けた業務もあるが、リアル薬局に比べると、残業がない、移動時間がない、などのメリットが多くの薬剤師に受け入れられているようだ。
 リアルの薬局では、薬剤師がリモートワークすることは難しい環境がある。しかし、YOJO社のチャット多用と情報共有といったシステムを駆使することで、例えば多店舗の薬局の服薬フォローを、一人のリモートワークする薬剤師が一手に担うなどのモデルに生かすことができるのではないだろうか。

 一方、通話での相談に関しては、「顧客によって差がある」というものの、平均すると、顧客とのやりとりの全体の数パーセント未満という。
 辻社長は「コミュニケーションは顧客満足度を高めるために重要。積極的に会話が生じるようなシステムのつくりにしている」と話す。また、医薬品購入後の症状の程度を10段階で顧客から評価してもらう仕組みとなっており、効果の実感度合いに応じて別の医薬品への切り替えや、別の症状に対して追加でお届けすることも行っている。
 
 同社には、他社から「相談部分のアウトソーシングがYOJOにできないか」といった要望や、「ネットショップの満足度向上に向けて協業したい」などの声がかかっているという。
辻社長は、まずはYOJOのサービス向上を第一義のミッションとしつつも、こうした他社からの要請にも応えられるものには応じていきたい考えも示している。

効率化と満足度が両立できれば待遇向上に

 今後の展望に関して、辻社長は、「現在は一部、属人的に行っている業務も、できる限り自動化・システム化することで、さらに薬剤師の効率的な業務を実現したい。効率化と顧客満足度向上を両立できれば、それは薬剤師さんの給与といった待遇面にも反映できるはずだ」と話す。

 実際に、同社の1人の薬剤師は月間2000人程度の顧客に対応している。「将来的には100万人ぐらいのお客さまを数十人の薬剤師さんが対応し、一方で顧客の満足度は高いというサービスにまで育てていきたい」(辻社長)というビジョンを掲げる。漢方のカテゴリーにとらわれない、健康食品やOTC医薬品の取り扱いや、処方薬情報入力による飲み合わせチェック機能、オンライン服薬指導なども将来的には視野に入れる。

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 2019年末の薬機法改正により、必要に応じて薬局に義務化された服薬中の患者へのフォロー。かかりつけ機能を高めるものとしても期待されているが、一方で効率的で実効性のある実践が課題になっている。薬剤師の拘束時間が長くなれば生産性が低下するだけでなく、薬局の運営フローにひずみが生じかねない。ここに悩みを抱える薬局経営者は少なくないはずだ。こうした中、YOJO Technologiesのスキームは、リアル薬局の服薬フォロー普及のヒントにもなるのではないだろうか。

ZOOMで取材に答えた辻社長

【略歴】辻裕介●YOJO Technologies代表取締役、創業者、医師。
順天堂大学医学部卒業。ヘルスケア・フィットネスアプリのFiNCで事業開発。順天堂医院にて臨床と研究に従事した後、2018年12月同社設立

オンライン薬局「YOJO」は、LINEで心身の悩みを相談することで、薬剤師が体質に合った医薬品を無料で提案し、購入から配送・アフターフォローまでオンラインで完結することができるサービス。LINE友達追加は1万5000人を超えた

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