【コロナで業務を大転換した薬局】「今、目を向けるべきは“外”ではなく組織の“中”」

【コロナで業務を大転換した薬局】「今、目を向けるべきは“外”ではなく組織の“中”」

本当にスゴい薬局はメディアにあまり出たがらない。「実行」に忙しいからである。コロナ下の大転換期にあっては殊更そうだった。そんな「メディアに出たがらないスゴい薬局」の最近の業務改革の現状を聞く機会を得た。確実に訪れるであろう薬局の収益構造変化。そこに対応するために、薬剤師の業務を「作業労働」と「知的労働」に明確に分ける。そして、薬剤師を「知的業務」にだけ就かせる。収益の柱である「薬剤の取り揃え」は「作業労働」として薬剤師には関わらせない。その結果、薬剤師に残った業務のほとんどは、「薬局の外」にいることだった。以下、談話形式でお伝えする。


薬剤師が作業労働をしている限り収益構造変化に対応できない

 メディアに出る機会はこれまであまりなかった。メディアに露出しても処方箋が増えるわけでもなく、業界の中のポジションアップにも興味がないからだ。

 しかも、ここ何カ月かは薬局の内部改革に時間を集中的に使う必要があった。

 どういうことかというと、コロナで何をすべきかがはっきりとしていた。そのことを3カ月間という期間を区切って集中的に行った。

 コロナで受診抑制があることは分かり切っていた。薬局の収益減に置かれたのは、おそらくどこの薬局も同じであろう。

 コロナを経験した薬局がやるべきなのは、「薬局内の改革」だった。

 多くの人は売り上げを増やさなければいけないのだからと、外に意識がいく。

 しかし、収益構造の変化が起きてくるので、内部改革をしっかりやらない限り、変われない。そう感じていた。

 当社が行ったのは薬剤師の配置換え、業務フローの変化、収益の比率の変化、そのあたりを全部変えた。

 この3カ月間をかけて、その改革が終わったところ。かなり変わった。薬剤師の動き方が変わった。

 具体的に何が変わったかというと、とどのつまり薬剤師がどこで収益を上げるかという話になる。

 薬剤師がアクションを起こすことで収益化するということは間違いのないところ。

 ということは、薬剤師が作業労働をやっている間はだめ。

 薬剤師の業務を全て因数分解して、「作業労働」なのか、「知的労働」なのかに分けた。

 薬剤師が攻撃ができる、つまり収益が上げることができる薬局の体質にしないとだめなわけだ。

 そうなると、薬剤を取り揃えるような調剤は、お金を生んではいるが、分類としてはほぼほぼ「作業労働」に区分される。ここには、薬剤師の労力は割かない。そういうふうに変えた。

 そうなると、薬剤師は結果的に薬局の外で活動をしている。もしくは、薬局の中でも収益を生む活動をしている。急激な行動変容をさせた。

 とても大変なことだったが、この3カ月でやった。

 これをやらないと、うまくいかなくなることが、目に見えていたからだ。

 どこかで時間を創出しなければ、薬剤師が収益を生む方に攻撃する時間も生まれない。

 この根源的な問題を、薬局は解消しなければいけない。この問題が根深いと感じる。

 目の前の「作業労働」から、まずは引き離さないと、目の前のことに気が集中してしまい、目の前の業務をこなす結果になってしまう。

 「薬局の外」とは何か。在宅、居宅が典型だ。コロナ下でも在宅の需要は減らず、むしろ増えた。多職種カンファレンスには、当社の薬剤師がほぼ全員が出ている状況になった。

フォローアップはオート化で一般化すべき

 在宅以外に、薬剤師がすべき知的労働は何か。
 
 中心はフォローアップだと思う。
 
 ただし、フォローアップは急いで取り組んではいけないと思う。
 
 なぜなら、業務量をいたずらに増やすことになりかねないからだ。 
 
 そうではなくて、服薬フォローを一定程度オート化する仕組みを作るべきだ。
 
 いろいろ調べてみると、例えば病院が書いているインシデントレポートは、どうやら機械が自動的に作成しているようだ。ヒトは、その機械が作った内容に間違いがないかをチェックしている。
 
 そういうプラットフォームが薬局のフォローアップでも不可欠だ。
 
 フォローアップ以外でも外部に対して情報共有するもの、例えばポリファーマシーであったり、トレーシングレポート、がんのレジメン共有とか、そういったものは結局、手間のかかることだから、フロー化して、簡単にしないと“一般化”しないと思っている。つまり、一般の薬剤師ではできないと思う。それを構築するためにも時間とお金が必要だと思う。
 
 そちらに投資をしていくことになる。その予定を当社でもしている。
 
 一般化していくことが重要なのであって、やっている薬剤師が優越感に浸っているようでは広がらない。

 (薬局経営者 談)

【編集部より】この記事が「参考になった」と思った方は、新規登録からの会員登録で、メディア運営にご協力ください。

この記事のライター

関連するキーワード


薬局 コロナ 業務変革

関連する投稿


【一般用抗原定性検査キット】コロナ“第11波”で薬局入手困難に

【一般用抗原定性検査キット】コロナ“第11波”で薬局入手困難に

【2024.08.29配信】新型コロナウイルス感染症の“第11波”ともいわれる感染拡大で、一般用抗原定性検査キットが不足している。日本薬剤師会は厚生労働省に対し、不足解消に向けた措置を要望した。


「薬局」の倒産数、コロナ禍が落ち着き減少へ/2022年度は15件/東京商工リサーチ調べ

「薬局」の倒産数、コロナ禍が落ち着き減少へ/2022年度は15件/東京商工リサーチ調べ

【2023.05.23配信】東京商工リサーチは5月23日、「調剤薬局」の倒産件数の調査結果を公表した。コロナ禍で過去最多となる23件を記録した2021年度からは減少し2022年度は15件だった。同社は「今後はオンライン化で淘汰が加速も」と分析している。


【オンライン医療相談や診察】コロナ5類後の継続意向は56.8%/内閣府調査

【オンライン医療相談や診察】コロナ5類後の継続意向は56.8%/内閣府調査

【2023.04.20配信】内閣府は4月19日、「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」を公表した。これまでにも公表しているもので前回は2022年7月22日の公表。今回は「オンライン医療相談や診察」のコロナ5類後の継続意向は56.8%だった。


【厚労省】コロナ5類移行に伴う調剤報酬の取り扱いで事務連絡発出/オンライン服薬指導の“0410通知”のコロナ特例は令和5年7月31日で終了

【厚労省】コロナ5類移行に伴う調剤報酬の取り扱いで事務連絡発出/オンライン服薬指導の“0410通知”のコロナ特例は令和5年7月31日で終了

【2023.04.03配信】厚生労働省は3月31日、事務連絡「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて」を発出した。調剤報酬関連では、コロナ患者への調剤に関わるものでは「在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料1」(500 点)を継続するほか、店頭でのコロナ薬調剤では「服薬管理指導料」について2倍とする内容を記載。また高齢者施設においても「在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料1」が算定できる内容。加えて、オンライン服薬指導については、いわゆる“0410通知”の特例を令和5年7月 31 日をもって終了するとした。


【パキロビッド®パック】3月22日から一般流通へ/国購入分は3月28日までの発注で配分終了

【パキロビッド®パック】3月22日から一般流通へ/国購入分は3月28日までの発注で配分終了

【2023.03.15配信】厚生労働省は3月15日、事務連絡「新型コロナウイルス感染症における経口抗ウイルス薬(パキロビッド®パック)の薬価収載に伴う医療機関及び薬局への配分等について(その2)(周知)」を発出。これまで国による購入・配分としていた同剤について3月22日から一般流通が開始されることに伴い、国購入分の配分は3月28日15時までの発注をもって終了とするとしている。


最新の投稿


【厚労省_一般用薬乱用防止事業】登録販売者会がオブザーバー参加

【厚労省_一般用薬乱用防止事業】登録販売者会がオブザーバー参加

【2024.10.22配信】日本医薬品登録販売者会(略称:日登会、会長:横山英昭氏=コスモス薬品社長)は、一般用医薬品の乱用防止事業にのワーキングスループにオブザーバー参加する。


【ドラッグストア協会】医薬品“声掛け”キャンペーン実施

【ドラッグストア協会】医薬品“声掛け”キャンペーン実施

【2024.10.21配信】日本チェーンドラッグストア協会は10月18日に会見を開き、10月から年末にかけて、医薬品情報提供の「声掛け強化」キャンペーンを実施するとした。協会・業務執行理事の貞方宏司氏(サンドラッグ代表取締役社長CEO)が説明した。


【病院薬剤師会】薬剤師以外へのタスクシェア検討へ

【病院薬剤師会】薬剤師以外へのタスクシェア検討へ

【2024.10.19配信】日本病院薬剤師会は10月19日に地方連絡協議会を開催した。


【ドラッグストア協会】衆議院選の推薦、比例は「ほぼ公明党」

【ドラッグストア協会】衆議院選の推薦、比例は「ほぼ公明党」

【2024.10.18配信】日本チェーンドラッグストア協会は10月18日に定例会見を開いた。


【ドラッグストア協会】顧問に磯部総一郎氏が就任/OTC薬協理事長と兼務

【ドラッグストア協会】顧問に磯部総一郎氏が就任/OTC薬協理事長と兼務

【2024.10.18配信】日本チェーンドラッグストア協会は10月18日に定例会見を開いた。


ランキング


>>総合人気ランキング