【日本薬剤師会_新理事の“横顔”④】小黒佳代子氏/「患者のための行動が、社会のためになり、自分を高める」

【日本薬剤師会_新理事の“横顔”④】小黒佳代子氏/「患者のための行動が、社会のためになり、自分を高める」

【2024.09.19配信】日本薬剤師会は岩月進新会長の下、6月30日の総会をもって新執行部を立ち上げた。本紙では、その中でも新たに理事になったメンバーに焦点を当てて取材、紹介する。第4回は小黒佳代子氏。


 「“やりたい!!”と思ったら、突っ走ってしまうのが欠点なんです」――。自身の短所をそう語る小黒氏。熱意ある活動を報じる機会もあったメディアからすると、むしろ長所のように受け止めていたので意外だった。

 医師や看護師が多く所属する日本褥瘡学会で理事を務め、「褥瘡・創傷専門薬剤師」の認定資格創設に奔走した。最近では日本在宅薬学会の来年の学術大会の組織委員長として名前が取り上げられた。
 
 活動の根底にあるのは「患者の役に立ちたい」という強い思いだ。在宅医療に関わる中で、患者や家族が自宅で最期まで過ごしたいという気持ちを持っているなら、全力でそれを支えたいと寄り添ってきた。そういった関わりの中で薬剤師のやりがいを何よりも感じる。「患者さんのためを思った行動が、社会のためになり、自分を高めることにつながる」――。自身の講演スライドによく記載する言葉だという。まさに小黒氏のこれまでを言い得ている言葉だ。

 プライベートでは離婚を経験。20年近い付き合いとなる今のパートナーとは、「それぞれの子供が全員結婚したら再婚するかもね」と話し合うほど信頼関係で結ばれている。薬局の共同経営者としても、プライベートでも小黒氏を信頼し理解し支えてくれている相手だと語る。経営面では“突っ走ってしまう”小黒氏とのバランスをとってくれると感謝の念を示す。

 地元・群馬県薬では平成30年から常務理事を務める。支部の高崎薬剤師会の理事になったのはその2年後。薬剤師会や学会での人事では、軋轢を感じることもあったが、「理解してくれる人も必ずいた」という。小黒氏の熱心な活動が周囲との対話によって薬剤師の将来のためになると捉える人が増えてきた。

 思い描く薬剤師像についても「患者第一」。日本在宅薬学会でも理事を務めることから調剤の外部委託に賛成とみられがちだが、本人は「賛成でも反対でもないが、自分はやらない」との意見。「“モノ”の業務はそんなに簡単ではない。きちんと服薬するための個別最適化のひとつだ」と考える。一方で、「自分が思わないような地域事情によって、その制度があって助かったということが将来的にあるのかもしれない」という。

 ただ、OTC薬のネット販売解禁と市販薬濫用との関係や、Amazonファーマシーの登場などには、「薬は対価を払って、もらうだけのもの」として伝わっていってしまうのではと危惧する。「かかりつけ」の意義をどう伝えていけるのか。小黒氏の模索は続く。

【小黒佳代子氏 略歴】

(おぐろ・かよこ) [群馬] 58歳 ※年齢は2024年6月14日時点
昭和63年 3月 昭和薬科大学薬学部卒業
昭和63年 4月 順天堂大学医学部付属順天堂医院入職
平成14年 2月 (株)タカラメディカ入社
平成17年10月 イムノエイト(株)入社
平成20年 8月~現在 (株)ファーマ・プラス専務取締役就任
<薬剤師会関係役職歴>
平成30年 6月~現在 群馬県薬剤師会常務理事
令和 2年 6月~現在 高崎市薬剤師会理事

この記事のライター

関連するキーワード


日本薬剤師会 新執行部

関連する投稿


【日薬】森副会長「基本料1の議論、手をつけること考えていない」

【日薬】森副会長「基本料1の議論、手をつけること考えていない」

【2025.12.03配信】日本薬剤師会は12月3日に定例会見を開いた。その場で中医協委員である副会長の森昌平氏は調剤基本料1を取り上げた議論に対して、日薬としては「対応は全く考えていない」と言及した。


【日薬】調剤報酬改定、「まずは薬局の維持を」

【日薬】調剤報酬改定、「まずは薬局の維持を」

【2025.12.03配信】日本薬剤師会(日薬)は12月3日に定例会見を開き、中医協での調剤報酬改定の議論について言及した。


【日本薬剤師会】財政審の改革提言に反論、「薬局増えても調剤報酬増えない」

【日本薬剤師会】財政審の改革提言に反論、「薬局増えても調剤報酬増えない」

【2025.11.05配信】日本薬剤師会は11月5日に会見を開いた。この中で、同日公表された財政制度等審議会(財政審)財政制度分科会の提言に対し反論した。


【日本薬剤師会】岩月会長が敷地内薬局めぐる議論にコメント

【日本薬剤師会】岩月会長が敷地内薬局めぐる議論にコメント

【2025.11.05配信】日本薬剤師会は11月5日に定例会見を開いた。その中で、岩月進会長が中医協での敷地内薬局をめぐる議論に対してコメントした。


【日本薬剤師会】新卒薬剤師会費無料キャンペーンで手順書発出

【日本薬剤師会】新卒薬剤師会費無料キャンペーンで手順書発出

【2025.11.05配信】日本薬剤師会は11月5日、定例会見を開き、新卒薬剤師会費無料キャンペーンに関して手順書を発出したと説明した。


最新の投稿


【保険薬局協会】地域加算「基本料1」と「それ以外」で点数・実績要件統一を/次期改定要望

【保険薬局協会】地域加算「基本料1」と「それ以外」で点数・実績要件統一を/次期改定要望

【2025.12.11配信】日本保険薬局協会は12月11日に定例会見を開き、会長の三木田慎也氏が次期調剤報酬改定の要望事項を説明した。調剤基本料に紐づいて区分のある地域支援体制加算について、「基本料1」と「それ以外」での要件や点数を統一することを求めた。


【病院薬剤師会】診療報酬改定議論「期待」/転所時評価などの要望反映で

【病院薬剤師会】診療報酬改定議論「期待」/転所時評価などの要望反映で

【2025,12.10配信】日本病院薬剤師会(日病薬)は12月10日に定例会見を開き、厚労省中医協で議論の進んでいる次期診療報酬改定について、期待できるとの見方を示した。日病薬が要望事項に挙げていた転所時の情報共有への評価などが俎上にのっていることなどを評価した。


【基本料1問題】大阪府薬に続き都薬も「断じて反対」表明

【基本料1問題】大阪府薬に続き都薬も「断じて反対」表明

【2025.12.07配信】東京都薬剤師会(都薬)は12月5日に定例会見を開き、中医協で規模の小さな薬局が該当することが多い「調剤基本料1」の除外範囲を拡大するとの議論について言及。特に大阪府と東京都に該当地域のある「特別区」が名指しされていることについて、都薬会長の髙橋正夫氏は、「大阪府薬が会見で“絶対に許さない”と表明されているが、都薬も同じ考えだ」と話した。


【ドラッグストア協会】かかりつけ薬剤師「在籍年数」延長に反対

【ドラッグストア協会】かかりつけ薬剤師「在籍年数」延長に反対

【2025.12.06配信】日本チェーンドラッグストア協会は12月5日に定例会見を開き、調剤報酬改定への要望を説明した。かかりつけ薬剤師指導料の要件見直しについても要望した。


【ドラッグストア協会】敷地内薬局「ただし書き」撤廃でも、「新規開局に限定を」

【ドラッグストア協会】敷地内薬局「ただし書き」撤廃でも、「新規開局に限定を」

【2025.12.06配信】日本チェーンドラッグストア協会は12月5日に定例会見を開き、調剤報酬改定への要望を説明した。敷地内薬局について、施設基準において「ただし、当該保険薬局の所在する建物内に診療所が所在している場合を除く」という「ただし書き」を削除すべきとの意見が出ていることに対し、撤廃でされたとしても新規開局に限定すべきといった要望を表明した。


ランキング


>>総合人気ランキング