「“やりたい!!”と思ったら、突っ走ってしまうのが欠点なんです」――。自身の短所をそう語る小黒氏。熱意ある活動を報じる機会もあったメディアからすると、むしろ長所のように受け止めていたので意外だった。
医師や看護師が多く所属する日本褥瘡学会で理事を務め、「褥瘡・創傷専門薬剤師」の認定資格創設に奔走した。最近では日本在宅薬学会の来年の学術大会の組織委員長として名前が取り上げられた。
活動の根底にあるのは「患者の役に立ちたい」という強い思いだ。在宅医療に関わる中で、患者や家族が自宅で最期まで過ごしたいという気持ちを持っているなら、全力でそれを支えたいと寄り添ってきた。そういった関わりの中で薬剤師のやりがいを何よりも感じる。「患者さんのためを思った行動が、社会のためになり、自分を高めることにつながる」――。自身の講演スライドによく記載する言葉だという。まさに小黒氏のこれまでを言い得ている言葉だ。
プライベートでは離婚を経験。20年近い付き合いとなる今のパートナーとは、「それぞれの子供が全員結婚したら再婚するかもね」と話し合うほど信頼関係で結ばれている。薬局の共同経営者としても、プライベートでも小黒氏を信頼し理解し支えてくれている相手だと語る。経営面では“突っ走ってしまう”小黒氏とのバランスをとってくれると感謝の念を示す。
地元・群馬県薬では平成30年から常務理事を務める。支部の高崎薬剤師会の理事になったのはその2年後。薬剤師会や学会での人事では、軋轢を感じることもあったが、「理解してくれる人も必ずいた」という。小黒氏の熱心な活動が周囲との対話によって薬剤師の将来のためになると捉える人が増えてきた。
思い描く薬剤師像についても「患者第一」。日本在宅薬学会でも理事を務めることから調剤の外部委託に賛成とみられがちだが、本人は「賛成でも反対でもないが、自分はやらない」との意見。「“モノ”の業務はそんなに簡単ではない。きちんと服薬するための個別最適化のひとつだ」と考える。一方で、「自分が思わないような地域事情によって、その制度があって助かったということが将来的にあるのかもしれない」という。
ただ、OTC薬のネット販売解禁と市販薬濫用との関係や、Amazonファーマシーの登場などには、「薬は対価を払って、もらうだけのもの」として伝わっていってしまうのではと危惧する。「かかりつけ」の意義をどう伝えていけるのか。小黒氏の模索は続く。
【小黒佳代子氏 略歴】
(おぐろ・かよこ) [群馬] 58歳 ※年齢は2024年6月14日時点
昭和63年 3月 昭和薬科大学薬学部卒業
昭和63年 4月 順天堂大学医学部付属順天堂医院入職
平成14年 2月 (株)タカラメディカ入社
平成17年10月 イムノエイト(株)入社
平成20年 8月~現在 (株)ファーマ・プラス専務取締役就任
<薬剤師会関係役職歴>
平成30年 6月~現在 群馬県薬剤師会常務理事
令和 2年 6月~現在 高崎市薬剤師会理事