【財政審】調剤報酬の適正化の文言、ほぼなし/「春の建議」

【財政審】調剤報酬の適正化の文言、ほぼなし/「春の建議」

【2024.05.21配信】財務省の財政制度等審議会が5月21日に開かれ、“春の建議”となる「我が国の財政運営の進むべき方向」を公表した。その中で調剤報酬の適正化に関わる文言はほぼ書き込まれなかった。


 今回の「建議」をみると、「薬局」「調剤」が明示的に記載されたのは、セルフメディケーション推進に関連する事項のみだった。

 「セルフメディケーションの推進」として、「軽微な不調は自ら直すセルフメディケーションは、国民の利便性向上に資するほか、診療や調剤に係る医療費を含めた合計の自己負担額で見ると OTC 薬を購入した方が安くなるケースもあることを踏まえ、推進していく必要がある」との記載の中で「調剤」は1箇所のみ。
 これに続く文言である「国民の利便性向上に資する医薬品のスイッチ OTC 化を進め、薬局で自ら購入できる医薬品の選択肢を増やしていく必要がある」の中で、「薬局」の記載が1箇所あったのみだ。

 一方、診療報酬本体としては、今後の課題としては、「データに基づく政策策定に資するよう、医療機関の経営状況の継続的な把握や医療統計の充実」や、「診療実態に医療機関によって大きな差があるとの指摘等も踏まえた、生活習慣病や他の疾病の管理の在り方」、「診療所と病院の医師の偏在是正について引き続き検討すべき」として、主に医療機関へ焦点が当たっている。

 また、薬価についても紙幅を割いている。令和7年度(2025 年度)改定では、既収載品の算定ルールについて、全て適用すべきとされている。そのほか、費用対効果など経済性の勘案・患者本位の治療や、医師数の適正化及び偏在対策を含めた医療提供体制について多く言及している。

 

 過去の「春の建議」での調剤報酬に関する記載を振り返ると、前年の令和5年度の「春の建議」では、薬局数の増加やいわゆる門前立地などを問題視し、多剤・重複投薬調整機能への期待や、リフィル処方箋の提案の仕組みなどが記載されていた。

 さらに、前年の令和4年度の「春の建議」では、「医療機関の近隣に立地し、当該医療機関からの処方箋を応需するいわゆる門前薬局が多く、医療機関の敷地内に開設される同一敷地内薬局まで登場している。また、大手調剤チェーンが医療機関の門前等に進出してシェアを拡大する中、20 店舗以上を経営する薬局の割合が増加し、全薬局数の約4割に上っている。さらに、受付回数が最大となる医療機関からの集中率が 90%を超えている薬局が全薬局の約3分の1を占めている」ことなどが記載されていた。また、「調剤技術料に占める調剤基本料、調剤料及び薬学管理料の割合も過去 10 年間でほとんど変化がなく、対物業務から対人業務への構造転換を図る姿勢が見えない」などの問題提起がされていた。

 ここ数年で、ここまで「春の建議」に調剤報酬関連が記載されないことは珍しいといえる。

この記事のライター

関連するキーワード


財政審 調剤報酬

関連する投稿


【日本薬剤師会】財政審の改革提言に反論、「薬局増えても調剤報酬増えない」

【日本薬剤師会】財政審の改革提言に反論、「薬局増えても調剤報酬増えない」

【2025.11.05配信】日本薬剤師会は11月5日に会見を開いた。この中で、同日公表された財政制度等審議会(財政審)財政制度分科会の提言に対し反論した。


【日本薬剤師会】「調剤管理料は表面的な業務ではなく調剤の根本に関わる評価」/財政審に反論

【日本薬剤師会】「調剤管理料は表面的な業務ではなく調剤の根本に関わる評価」/財政審に反論

【2025.05.28配信】日本薬剤師会は5月28日に都道府県会長協議会を開いた。この中で財務省「財政制度等審議会」から公表された、いわゆる「春の建議」の内容について見解を示した。


【日本薬剤師会】「過密地域への薬局開設について財務省の目がいった」

【日本薬剤師会】「過密地域への薬局開設について財務省の目がいった」

【2025.05.28配信】日本薬剤師会は5月28日に都道府県会長協議会を開いた。この中で財務省「財政制度等審議会」から公表された、いわゆる「春の建議」の内容について見解を示した。


【財政審】「薬局数の集約化・適正化は喫緊の課題」/調剤報酬の項で

【財政審】「薬局数の集約化・適正化は喫緊の課題」/調剤報酬の項で

【2025.05.27配信】財務省の財政制度等審議会は5月27日、いわゆる“春の建議”として「激動の世界を見据えたあるべき財政運営」をまとめ公表した。


【財政審】OTC類似薬の保険適用の在り方、「新たな選定療養」として薬剤費自己負担の案

【財政審】OTC類似薬の保険適用の在り方、「新たな選定療養」として薬剤費自己負担の案

【2025.04.23配信】財務省は4月23日に財政制度等審議会「財政制度分科会」を開催した。


最新の投稿


【税制大綱】セルメ税制、薬局製造販売医薬品を一部対象に

【税制大綱】セルメ税制、薬局製造販売医薬品を一部対象に

【2025.12.19配信】自民党と日本維新の会がまとめた税制大綱が公表された。セルフメディケーション税制について期限延長と対象の変更等を記載。薬局製造販売医薬品についても、税制の対象となる一般用医薬品等と同じ成分を有効成分として含有するものを対象に加える。


日本初のOTC緊急避妊薬「ノルレボ」新発売/第一三共ヘルスケア

日本初のOTC緊急避妊薬「ノルレボ」新発売/第一三共ヘルスケア

【2025.12.18配信】 第一三共ヘルスケア株式会社(本社:東京都中央区、社長:内田高広氏)は12月18日、日本初となるOTC緊急避妊薬「ノルレボ」(要指導医薬品)を2026年2月2日(月)に発売すると公表した。価格(メーカー希望小売価格)は1錠 6800円(税込み 7480円)。


【厚労省】長期収載品の選定療養「患者負担2分の1以上」提案/中医協

【厚労省】長期収載品の選定療養「患者負担2分の1以上」提案/中医協

【2025.12.17配信】厚生労働省は12月17日に中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開き、長期収載品の選定療養についてを議題とし、「患者負担2分の1以上」を提案した。


【保険薬局協会】地域加算「基本料1」と「それ以外」で点数・実績要件統一を/次期改定要望

【保険薬局協会】地域加算「基本料1」と「それ以外」で点数・実績要件統一を/次期改定要望

【2025.12.11配信】日本保険薬局協会は12月11日に定例会見を開き、会長の三木田慎也氏が次期調剤報酬改定の要望事項を説明した。調剤基本料に紐づいて区分のある地域支援体制加算について、「基本料1」と「それ以外」での要件や点数を統一することを求めた。


【病院薬剤師会】診療報酬改定議論「期待」/転所時評価などの要望反映で

【病院薬剤師会】診療報酬改定議論「期待」/転所時評価などの要望反映で

【2025,12.10配信】日本病院薬剤師会(日病薬)は12月10日に定例会見を開き、厚労省中医協で議論の進んでいる次期診療報酬改定について、期待できるとの見方を示した。日病薬が要望事項に挙げていた転所時の情報共有への評価などが俎上にのっていることなどを評価した。


ランキング


>>総合人気ランキング