【日本薬剤師会】会長候補者記者会見を開催

【日本薬剤師会】会長候補者記者会見を開催

【2024.02.27配信】日本薬剤師会は2月27日、次期会長候補者による記者会見を行った。


 会長候補者記者会見では、立候補した3氏がまずは3分ずつのスピーチをした(記事掲載順は編集部でくじ引きを実施したもの)。

田尻氏「薬剤師としての専門性、それからビジョン、それを他の医療関係職種に臆することなく堂々と発言できる、そういう立場にする」

 田尻泰典氏(たじり・やすのり、福岡、写真左)は、次のように述べた。


 皆さんこんにちは。2月2日に、九州・山口の薬剤師会の統一候補推薦を得まして、立候補させていただきました。私がいったい何をしたいのかと申し上げると、簡単に言えばこれからの薬剤師どうするんだ、これからの薬局どうするんだ、それからこれからの薬剤師会ってどうあればいいのか。医療の中で何をするのか、国民のために何ができるのか、もうこれは原点だと思います。そこの部分について、これからどうしようかと考えた時に、やはり薬剤師が直面している環境というのは特にここ最近動きが早く、医薬分業制度はじめ、多くの課題によって、厳しく問われている。問題視とは言いませんけれど、問われている部分があろうかと思います。

 これらの課題は、私たち薬剤師および薬局に対し、前例のない大きな変革、薬局業務の大きな変革を迎えております。この変革期において、やはり薬剤師としての専門性、それからビジョン、それを他の医療関係職種に臆することなく堂々と発言できる、そういう立場にする。やはり今まで少し遠慮して、いつも品がいいな、薬剤師はと言われてきた部分がある。やはり、そういう意味ではどうなのかなと思う部分もありますので、そういうことも含めて国民の健康、それから医療への貢献、これに対する私たちの責任を果たすことの重要性、これがもう不可欠と思っております。
 これをしっかりと軸として考えていきたい。
 
 そのためにはいろんな政策というのは当然必要でしょうけれども、ここで申し上げても時間を消費するだけですので、ちょっとそれとは視点を変えた時に、今の日本の皆保険、もう赤信号が灯っていると思っています。これは皆さんも同じ思いがあろうかと思います。その中で薬剤師としてこの皆保険をいかに効率よくこれから運用していくか。国民皆保険の維持を目指す、その仕組みづくりというのをやはり私たち薬剤師の方から。なぜかというと、医療費の薬剤費が十兆円に届くぐらいの金額になっていますので、それの数パーセントを削減、いろんな方法があろうかと思いますけど、それについては手を付けていきたい。
 
 規制改革に関しては、一つは今までと違って、利用者目線でどうなのかということを基本に考えて、ただし医療安全をいかに責任を持って保つか、これは決して譲るわけにはいきません。

 最後になりますけれど、6年制の薬学を卒業した者が35〜36歳になろうと思います。現場で核になる、これから一番脂の乗り切った人達、その人達がやはり夢を持って将来のことに関しても語れるような、そういう環境を作って差し上げられたら、私が薬剤師会で数十年、いろんな部分で活動させていただいた恩返しになるのかなと思っています。
 ですから、そういう意味では、若手の薬剤をいかに発掘して、地域の事情も含めて吸い上げて、それを会の運営に反映させていきたいと思っています。
 私たちの専門性を生かして、患者さん一人ひとりに寄り添う薬剤師の姿を社会に示し、より良い医療の提供を目指してまいりたいと思います。以上です。

岩月氏「薬剤師に対する評価と、これに対する処遇を上げる」/行政職・学識経験者・メーカー・卸勤務者も含めるよう定款変更も視野

 岩月進氏(いわつき・すすむ、愛知県、写真中央)は、次のように述べた。


 改めまして、皆さん、こんにちは。愛知県薬剤師会で会長をしております岩月でございます。今回、東海ブロックの推薦を受けて、日本薬剤師会の会長選挙に立候補をするということになりました。

 まあ、やっていきたいことは、本当に山のようにたくさんありますけれども、端的に申し上げますと、医薬品供給体制という、この原則をいかに忠実に、誠意を持って、探究心を緩めることなく、どうやって自分たちを鍛え上げて、国民に提供していくのか。そういう意味では、まだまだ薬剤師会の仕事というのは、発展途上だろうなと思っています。

 これは何も調剤に限ったことではなくて、行政職ですとか、学識経験者でありますとか、あるいはメーカーや卸に勤めている薬剤師も押し並べて、薬剤師に対する評価と、これに対する処遇ですね、これをいかに上げていくのかということが日本薬剤師会の仕事だろうと思っています。
 ですから、開局に偏重した薬剤師会というのを、これはあの定款改定も含めてですね、かなり大幅な作業をしないとなかなかに実現しないことでありますけれども、これをやっていかなければいけないことなのだと思っています。

 2つ目に、例えば開局者、病院薬剤師もそうですけれども、いわゆる勤務者ですよね、我々薬剤師会というのは、ややもするとですね、弱小薬局の親父の集まり、みたいなイメージで見られることが多いんですけれども、さきほど申し上げた職域の拡大もさることながら、我々のこの開局に限って言うと、もう勤務者が7割を超えている現状ですから、言ってみれば経団連のオーナーの仕事と、労働組合のない薬剤師の連合の役割を果たす役割、両方をしないといけない、これも大きな課題だろうと思っています。
 どうやってそのハーモナイゼーションを取るのかというのは、これも難しい問題ですけれども、手をつけないでいるわけにはいかないということだと思います。

 調剤報酬、あるいはOTC医薬品の販売についてどうするのかということですけれども、具体策は時間がないので今ここでは申し上げませんけれども、大きくは先ほど申し上げたように、どういう仕事をして、どういう評価をしてもらえるのかいうことだろうと思っています。
 資格の取りにくさと責任の重さで報酬が決まっているというのが、いわゆる免許商売のお仕事だとすれば、例えば、夜は働きたくないからしないとか、休みの日はちゃんと休みたいと言っていると、世間の評価から応えられないということになると思いますから、そういったことを含めて、薬剤師のあり様というのは、これから自分たちで決めていく、人から言われてやるんではなくて、自分たちが決めてやっていくんだという覚悟は大変必要だろうと思っています。

 最後に、学校薬剤師の働きですけれども、今も薬健康教育をやっていますけれども、これからの次世代のグッドカスタマーを作る、薬剤師の理解者を作っていくんだと、この視点が少し欠けていたようにも思いますので、これから学校薬剤師がそういった仕事に従事できるようにこの仕事も大事だなというふうに考えております。時間が参りましたので、以上、わたくしの所信を述べさせていただきました。ありがとうございました。

安部氏「医療計画と整合性の取れた公共性の高い地域医薬品提供計画の構築を目指す」


 安部好弘氏(あべ・よしひろ、東京、写真右)は次のように述べた。

 “
 安部好弘です。

 会長候補者として所信を述べさせていただきます。私は日薬の政策、及び事業の更なる充実に向けて、次にお示しする提言の実現を目指すため、会長職に求められる最終的な決断、説明責任、結果責任という極めて重い責任を担う覚悟をもって立候補いたしました。

 まず長期的な政策について簡単にご説明させていただきます。今年度はいわゆる医薬分業元年から50年の節目を迎えます。処方箋応需の体制整備は概ね、当初の目標を達成いたしました。次期の執行部では次の50年のリスタートとして、直近の2025年、そして2040年に向け、これまで積み上げてきた基盤を基により成熟した医薬分業の実現に向け、医療計画と整合性の取れた公共性の高い地域医薬品提供計画の構築を目指します。併せて国民・社会から薬剤師プロフェッションの絵姿が適切に評価されるよう、業務・職能・資質の向上を目指します。
 その実現に向けては必要な法整備、薬事、医療制度の構築を目指します。
 
 次に具体的な政策です、時間が限りがありますので、4つほどお話しさせていただきます。

 1つは、医薬品提供計画の構築に向け、第8次医療計画に盛り込んだ薬局・薬剤師の役割、そして薬剤師の確保対策など、その進捗状況の確認をし、かつ3年後の中間見直しに向けた調査研究を行います。
 2つ目。薬剤師の会員増強に向けては生涯研修の充実と、効率化のための支援体制を推進し、その基盤を元に生涯研修実績の評価、そしてその評価と薬剤師のキャリアのあり方の検討を致します。また卒業直後の若い薬剤師の入会促進を検討します。
 3つ目。調剤報酬・介護報酬の対応ですが、これまでの30年と異なる、インフレ経済下における調剤報酬改定のあり方、薬局経営に関する調査研究を行います。また薬剤給付と負担のあり方、医薬品安定供給、ドラッグロスなどの問題解決に向けた薬価制度のあり方について検討致します。
 4つ目になりますが、医薬品の販売制度の対応については、薬局薬剤師に求められるセルフメディケーション・セルフケア機能について、基礎的な役割を確保・推進します。また喫緊の課題として若年者のオーバードーズへの対応は、販売制度の遵守に止まらず、薬局薬剤師が身近な窓口になって、心の問題等の課題に貢献できるように取り組みます。
 最後になりますが2040年に向けては薬剤師薬局にとって、厳しい逆風が吹くことも想定されます。これまで日薬理事として務めた20年の経験を踏まえ、同僚役員や事務局諸氏と力を合わせ、その逆風を前進する圧力に変えて薬剤師の未来に向けて前向きに取り組んでまいります。わたくしのスピーチは以上でございます。

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