日本チェーンドラッグストア協会はこれまで、調剤報酬改定の議論に対して意見表明などを行ってきた。昨年1月には調剤報酬専門委員会(関口周吉委員長)を立ち上げ、同年5月に「2024 年診療報酬に向けた要望」を、その後12月には「特別調剤基本料の薬局を有する開設者の体制評価(イメージ)に対する意見」をとりまとめ国に提出(同時に公表)していた。
このほど、令和6年度度調剤報酬改定に関する中央社会保険医療協議会の答申が示されたことから、これまでの協会要望も踏まえた協会の見解を示した。
見解の文書ではまず、敷地内薬局の“グループ一律引き下げ”が見送られたことを歓迎するとの考えを示した。
また歓迎している点として、在宅の評価、連携強化加算の増額を挙げた。在宅推進のための適切な評価や連携強化加算の増額などは協会要望の数多くが実現したとし、これについては歓迎するとした。一方、「ただし、連携強化加算については、災害時に果たす重大な役割に鑑みなお一層の評価が必要である」と付け加えている。
また疑問の残る点として、「地域支援体制加算の一律減額」を指摘。「地域支援体制加算について要件の厳格化に加え一律大幅な減額措置が講じられたことは、国が推進する地域包括ケアシステムの構築に逆行するものであり、まことに遺憾である」とした。「今回の措置は加算取得率の高いチェーン薬局への打撃となることは間違いなく、他の薬局に先駆けて意欲的に地域支援体制の構築に取り組んできた立場からは、到底納得できないものである」とした。加えて、「地域医療連携に不可欠な、在宅の推進を始めとする高機能薬局の今後の展開・普及に深刻なマイナスの景響が予想され、政策的にも得策とは考えられない」とした。
「賃上げ原資に対する不公平な取扱い」として、「地域支援体制加算の減額分が(7点)は賃上げ原資とされる調剤基本料の増額分(3点)を上回るため、地域支援体制の構築に取り組んできた薬局にとっては、賃上げ原資の補填がない結果となっている。薬剤師等への賃上げが国の方針として示されていることからみて、このような結果は公平性の観点からは看過しえないものである」とした。
「グループ規模による差別的評価の取扱い」も指摘。次のように指摘した。「そもそも薬局は個別に機能に応じて評価されるべきであり、当協会ではグループの規模による差別的な取扱いと、これに関連する調剤基本料の区分と地域支援体制加算の連動の廃止を昨年来要望してきた。いまだ実現していないばかりか、中央社会保険医療協議会で議論もされていないことは、まことに遺憾である。特に地域支援体制加算については、早急に調剤基本料の区分に関係のない一元的な要件とする必要がある」とした。
さらに、「医療経済実態調査の集計バイアス」を指摘。協会では、医療経済実態調査の調査対象薬局は1/25の無作為抽出で行われる一方で、専門医療機関連携薬局は全数が調査対象となっているにもかかわらず、集計分析において補正の形跡はなく、そのためグループ規模別の平均値等においてバイアスのある集計となっていることが懸念されるとの意見を表明してきた。しかし、「これまでのところ何の説明もない」とし、「薬局を対象とする医療経済実態調査とその集計分析は調剤報酬の議論の前提となるものであり、その透明性と公平性の担保を強く求める」とした。
最後に「決定プロセスへの疑問」を挙げた。前述のような問題が出てくる根本原因について、「中央社会保険医療協議会の決定プロセスからチェーン展開する薬局事業者が排除されていることにある」とし、早急な是正を求めるものである」とした。
協会の関口周吉委員長は、決定プロセスについて会見で説明し、日本薬剤師会や日本保険薬局協会、日本チェーンドラッグストア協会の3団体で「意見を出し合う場」や、「中医協としての議論の流れなどを聞く時間」を設けたいとの意向を示した。この方針については協会の理事会でも決議されたという。