【日本保険薬局協会】敷地内薬局「常軌を逸したような大変な引き下げ」/24年度調剤報酬改定の答申で

【日本保険薬局協会】敷地内薬局「常軌を逸したような大変な引き下げ」/24年度調剤報酬改定の答申で

【2024.02.15配信】日本保険薬局協会は2月15日に定例会見を開いた。


 会見の冒頭、協会会長の三木田慎也氏は、前日にあった2024年度診療報酬・調剤報酬改定の答申に関して言及。敷地内薬局の評価に対しては「常軌を逸したというような大幅な引き下げ。ただただ驚きを持って見ている」などと述べた。賃上げ対応についても困惑している経営者が多いとした。

 三木田会長はまず賃上げ対応について、「2月14日に答申がされたが、驚きを持っている。今日も常任理事会を開催して、常任理事からは改定の評価、感想を承った。意見が大変出ていて一本化するのはなかなか難しいというような状況だった。今年の賀詞交歓会の時に、賃金手当について手当てされるということで大変ありがたい話をいただいたなというふうに思っておりましたが、蓋を開けてみると評価されているところもある一方で、地域支援体制加算のマイナスというところもあり、結果的にはなかなか賃上げをどうやって実現するんだろうという困惑の経営者が多かったなという印象だ」と述べた。

 評価できる部分としては、「医療DXや連携強化加算、在宅など、評価を組み入れていただけたかなというふうに考えております」とする一方、地域支援体制加算の引き下げに言及。「いかんせん、地域支援体制加算の減額がすごく大きい。私ども協会会員の皆さんは日々、地域のために在宅や夜間対応など努力をして相当数地域のために汗をかいて努力をしている会社が多い。それに比して減額幅が大きくなったことによって、トータルとして大きなマイナスになるというような減算を速報値ではあるが出されている会社もある。この辺は昨日の今日なのでまだ完璧ではないが各社ともそれぞれシュミレーションを行っている状況」(三木田会長)とした。

 その上で、敷地内薬局に対する評価にも言及。「付け加えるならば、やはりこれは避けては通れない敷地内薬局に対する評価だ。これは大変驚きをもって見させていただいた。残念なのは、立地によって結果的に現場の薬剤師が患者さんや地域のために努力をしている、このことの評価がまったくどこかに行ってしまって、結果、敷地内薬局であるがためにこの減額幅も、ちょっと常軌を逸するというか、大変な大幅な引き下げというようなことだった。ただただ驚いているというところだ」(三木田会長)と述べた。

 医療関係者からのコメントにも触れた。「全日本病院協会の猪口雄二会長のコメントも(報道で)読ませていただいたが、そもそも論が必要ではないかというような意見具申もある。おそらく敷地内薬局を出店をしている会社にとっては患者さんとの連携、あるいは医療機関との連携に資するということで出店をされてるというところだが、結果、できる限りの、どう言ったらいいのか、徹底した引き下げ、これ以上ないぐらいのところまでというような感じだ。行政には当然、裁量権もおありになるんでしょうが、かなりの引き下げだったなという印象だ。協会の意見としては今後取りまとめて、今後の対応も含めて行っていきたいというふうに考えている」(三木田会長)と述べた。

「良いこととダメなことを明確にお示ししていただく方が我々としてはありがたい」

 記者から「さきほど医療関係者からの“そもそも論が必要”という意見が出ていることに触れられていたが、会長としてそのことをどのように受け止めているのか。今後、改定の点数の話ではなく、そもそも論に移る側面もあると思うが、協会はこれまで“是非論は協会内で議論していない”としてきたが」と質問が出ると、三木田会長は次のように述べた。

 「そもそも論というより、診療報酬の中でこれだけのことをやるということは、合法であったことなのに、“どうなの”という問題提起だ。だったら、もともとそこに規制なりをかけるということだ。おそらく、そもそも論、根本的な議論を、というのはそこだと思う。合法でできる状態にしておいて、それを出来上がったものに対してこのような評価をするというのは行政としての判断としてどうなのかなと。かなり本音の部分だが、願わくば良いこととダメなことを明確にお示ししていただく方が我々としてはありがたいなと思う」(三木田会長)。

 敷地内薬局をめぐっては中医協で1号側委員、2号側委員双方から厳しい対応を求める声が出ていた。

 2023年12月27日の中医協では、支払い側委員である健康保険組合連合会理事の松本真人氏は「2年前にも同じことを指摘致しましたが、敷地内に薬局を要する機関については実質的に院内処方と同様に取り扱うべきです」と言及。「資料の31ページを見ますと、特別調剤基本料を算定する薬局の9割で特別な関係にある医療機関からの処方箋が8割を超えております。これは薬局の独立性という観点で問題ですが、裏を返せば薬局と医療機関の一体性が示されているということですので、利用実態としては院内処方に近い実態にありますので、処方箋料を処方箋料と同程度の水準まで減額することが考えられます」と指摘していた。

 松本氏は加えて、「ただ、以前にも発言しましたが敷地内薬局がいわば既成事実化していることを踏まえますと、医療機関が薬局を誘致する背景を含めまして、令和8年の改定に向けて、少し根本的な議論をした方が良いと感じております。27ページでも一部紹介がありますが、医療経済実態調査の結果からも敷地内薬局は医薬品等と土地建物賃借料が突出して高いにもかかわらず、令和3年から4年にかけては利益率が増加しているということがわかっております。また保険財政に影響があることなので、今後参考のために森委員からもさきほどご指摘ございましたけれども、流通改善の検討状況について事務局に教えていただきたいというふうに思います」と述べていた。

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