【薬学生向けイベント】愛知県薬・岩月会長の講演など/企業と薬剤師会の双方の意見に触れる機会に

【薬学生向けイベント】愛知県薬・岩月会長の講演など/企業と薬剤師会の双方の意見に触れる機会に

【2024.02.04配信】薬剤師業界メディアのドラビズon-lineは2023年12月17日、名古屋市内で薬学生向けイベントを開催した。愛知県薬剤師会の岩月進会長に講演を依頼したほか、地元の有力ドラッグストア企業であるスギ薬局副社長の杉浦伸哉氏、中部薬品専務の佐口弥氏に登壇いただき、企業と薬剤師会の双方の意見に触れる機会とした。テーマとしては敷地内薬局や調剤業務の一部外部委託について聞いた。中部地方の薬剤師が中心ながら、約40名の薬学生が参加した。社会に出る前の早い時期から社会情勢の変化が薬剤師にどのような影響をもたらすかの視点を薬学生が持つことは、薬剤師業界の振興にも不可欠ではないだろうか。何らか正解を求めるものではない。


敷地内薬局について

 敷地内薬局のテーマについては、スギ薬局杉浦氏が自社で3店舗あり、反対ではないからこそやってきたことに触れた上で、「ただし鳴り物入りで決まったものであることを踏まえる必要がある」との言葉を添えた。患者、医療機関を含め関係者から支持の得られるような価値を提供できるかが重要との視点を示した。

 中部薬品の佐口氏は、「法律を遵守した形であれば問題ない」との見解を示した上で、「先端的な薬局を生み出し、専門薬剤師を育成できるなら1つの形態として良しではないか」と述べた。「念頭に置いているのは国民・患者にとってどうかというシンプルな発想だ」ともした。

 愛知県薬剤師会の岩月氏は、医療保険などの観点から問題を指摘。「医療は相互扶助だ。敷地内薬局では(家賃等)かなりの金額が提示されており、その費用が回収できるほどの関係性があるのかと思われた段階で私はダメだと思っている。処方が間違っていたら間違っていると言ってくれるのかと患者さんが不信感を持ったら、その時点でダメ。医薬分業全体がそう思われる。そうならないためには誘致する側・出店する側も透明にしなければいけない。責任がとれる独立性を私たちは担保しなければいけない」と述べた。

調剤業務の一部外部委託について

 外部委託については杉浦氏は「1つの拠点で責任を持つという考えはその通り。一方でその労力・安全性・経済性などの観点でほかで行っても担保できるのであれば、責任を決めた上でやっていければいいのではないか」と指摘した。

 佐口氏は「安全と責任が明確化できればアリだと思っている」とし、「薬剤師が休息している夜間に自動的にお薬がつくられているのはよい。ただし提供する時に情報や真心を添えることは重要」と述べた。「雇用問題については影響が大きいため徐々に変えていく方がいい」とした。

 岩月氏は、2点を指摘。1つ目は対物を充実させるために情報の交換があるという視点。「正確で個別化した調剤をするためには事前に患者さんの情報のやりとりをしなければいけない」とした。2つ目は記録と責任の明確化。「開封した人・保存状況など、記録と責任の所在の明確化の議論が不可欠」とした。

チェーン薬局と地域の薬局が連携を強めていくためにはどのような方策があるか

 今後、チェーン薬局と地域の薬局が連携を強めていくためにはどのような方策があるかについては、杉浦氏は「多職種連携において当たり前のように言われる“顔の見える関係”を創ることが大切であり、お互いの立場を理解し、普段から話せる関係になれることが大切ではないか」と語った。

 佐口氏は「連携をしなければ、地域住民や患者を救えない事象に直面した時、本当の連携が生まれる。そのためには、日ごろから、患者第一の理念を薬剤師同士で共有することが重要である」と指摘した。

 岩月氏は「地域の医薬品提供に係るニーズを把握し、それぞれの個店薬局やチェーン薬局が持つ機能や特性をお互いに理解したうえで、役割分担を考えることが重要。夜間や休日対応、医薬品の融通等々、全国一律ではなく地域の実情を鑑みた薬剤師免許保持者同士としての意見交換の場が必要」とした。

愛知県薬剤師会会長・岩月進氏:
調剤業務の一部外部委託に関しては一般的に「対人業務」の充実が目的とされる中、岩月氏は「対物業務を充実させるため」に情報の交換があるという視点を提示した

スギ薬局副社長の杉浦伸哉氏:
自身も愛知県薬剤師会の理事である杉浦氏は、チェーン薬局と地域の薬局が連携を強めていく方策について、「多職種連携において当たり前のように言われる“顔の見える関係”を創ることが大切であり、お互いの立場を理解し、普段から話せる関係になれることが大切ではないか」と語った

中部薬品代表取締役専務の佐口弥氏:
チェーン薬局と地域の薬局が連携を強めていくことについて「連携をしなければ、地域住民や患者を救えない事象に直面した時、本当の連携が生まれる」と、その重要性を指摘した

後半には企業説明会も/地域密着薬局からの参加はなし

 後半の企業説明会では地域の薬局に無料での参加を募集したが、地域の薬局からの参加はなかった。

 スギ薬局は、杉浦伸哉氏が愛知県薬剤師会の理事であり、「まだまだお叱りを受けるレベルかと思うが、今後も関わっていきたい」とした。その上で、グループの活動に関しては、スギメディカルで他職種との関係性をつくっていく事業を行っているとした。それによりスギ薬局の企業価値の向上ももちろんだが、地域の薬局とともに地域をつくっていきたいという思いも込めているとした。

 中部薬品では同社店舗の処方箋枚数平均が68枚/日、薬剤師数が4人/店であるとし、医療情報検索サービスによるドラッグストア平均の同23枚、同1.7人よりも多いとした。店舗当たりの薬剤師が多いため、「希望による休暇」が取りやすい体制にもつながっているとした。そのほか有休で年間14日を最低休むことを徹底しているとした。「休みを取ることが薬剤師が生き生きと働くために重要と考えている企業だ」と説明した。

この記事のライター

関連するキーワード


薬学生

関連する投稿


【薬学生】韓国留学生支援で提携/メディセレ

【薬学生】韓国留学生支援で提携/メディセレ

【2025.09.22配信】日本の薬剤師国試予備校と、日本への留学を支援している韓国の学院が提携した。提携したのは日本の薬剤師国試予備校のメディセレと、韓国から日本への医療系進学を支援している江南スカイ語学院。9月11日に「韓国人留学生サポートのための教育提携」の調印式を行った。


【薬学生】薬局就職者、奨学金利用率は平均上回る39.7%/日病薬

【薬学生】薬局就職者、奨学金利用率は平均上回る39.7%/日病薬

【2025.06.25配信】日本病院薬剤師会は6月25日に定例会見を開き、薬学生の4・5・6年生を対象した調査を行った。その結果、奨学金を利用している学生は33.8%。就職活動終了者921人のうち奨学金の活用者は320人(34.7%)だった。うち、保険薬局への就職者では奨学金の利用率は39.7%で平均を上回っていた。


【日本病院薬剤師会】薬学生リクルートコーナー実施/3月の日本薬学会年会で

【日本病院薬剤師会】薬学生リクルートコーナー実施/3月の日本薬学会年会で

【2025.02.27配信】日本病院薬剤師会は2月26日に定例会見を開き、薬学生向けのリクルートコーナーの実施について説明した。今年3月に開かれる日本薬学会第145年会(福岡)で出展する。昨年12月の会見でも開催を報告していたが、今回、完成した薬学生向け案内チラシを公表。独立行政法人国立病院機構(NHO) や、複数の大学医学部附属病院の出展も決定している。


【薬学生向けイベント開催】12月17日(日)@オンライン/スギ薬局、中部薬品の経営陣登壇!★参加者全員にAmazonギフト3000円分プレゼント!

【薬学生向けイベント開催】12月17日(日)@オンライン/スギ薬局、中部薬品の経営陣登壇!★参加者全員にAmazonギフト3000円分プレゼント!

【2023.10.14配信】薬局・ドラッグストア向けのWEBメディアを運営する株式会社ドラビズon-lineは12月17日(日)17:00〜18:30、オンラインにて薬学生向けのイベントを開催する。名古屋駅近辺の会場にてリアル参加も可能。スギ薬局、中部薬品など東海地方で展開する有力企業が参加。経営陣から直接、ビジョンや今後の展望などを聞くことができるのが大きな特徴。また、「地域に密着した薬局の情報を知る場がない」という薬学生の声から、薬剤師会で活動されている地域薬局にも参加いただくイベントとなっている。長い薬剤師キャリアを考える上で、“一生モノ”になる出会いのイベントを目指している。


【夏の就活中の薬学生必見】調剤報酬、薬局企業ランキングTOP10! 4社はドラッグストア企業 

【夏の就活中の薬学生必見】調剤報酬、薬局企業ランキングTOP10! 4社はドラッグストア企業 

【2022.08.29配信】ドラビズon-lineでは、調剤報酬に関わる企業ランキングを作成した。クリエイトSDホールディングスやクスリのアオキホールディングスなど、22年5月期決算を反映している。各社公表資料のほか、独自調査・取材などを基にしている。


最新の投稿


【保険薬局協会】地域加算「基本料1」と「それ以外」で点数・実績要件統一を/次期改定要望

【保険薬局協会】地域加算「基本料1」と「それ以外」で点数・実績要件統一を/次期改定要望

【2025.12.11配信】日本保険薬局協会は12月11日に定例会見を開き、会長の三木田慎也氏が次期調剤報酬改定の要望事項を説明した。調剤基本料に紐づいて区分のある地域支援体制加算について、「基本料1」と「それ以外」での要件や点数を統一することを求めた。


【病院薬剤師会】診療報酬改定議論「期待」/転所時評価などの要望反映で

【病院薬剤師会】診療報酬改定議論「期待」/転所時評価などの要望反映で

【2025,12.10配信】日本病院薬剤師会(日病薬)は12月10日に定例会見を開き、厚労省中医協で議論の進んでいる次期診療報酬改定について、期待できるとの見方を示した。日病薬が要望事項に挙げていた転所時の情報共有への評価などが俎上にのっていることなどを評価した。


【基本料1問題】大阪府薬に続き都薬も「断じて反対」表明

【基本料1問題】大阪府薬に続き都薬も「断じて反対」表明

【2025.12.07配信】東京都薬剤師会(都薬)は12月5日に定例会見を開き、中医協で規模の小さな薬局が該当することが多い「調剤基本料1」の除外範囲を拡大するとの議論について言及。特に大阪府と東京都に該当地域のある「特別区」が名指しされていることについて、都薬会長の髙橋正夫氏は、「大阪府薬が会見で“絶対に許さない”と表明されているが、都薬も同じ考えだ」と話した。


【ドラッグストア協会】かかりつけ薬剤師「在籍年数」延長に反対

【ドラッグストア協会】かかりつけ薬剤師「在籍年数」延長に反対

【2025.12.06配信】日本チェーンドラッグストア協会は12月5日に定例会見を開き、調剤報酬改定への要望を説明した。かかりつけ薬剤師指導料の要件見直しについても要望した。


【ドラッグストア協会】敷地内薬局「ただし書き」撤廃でも、「新規開局に限定を」

【ドラッグストア協会】敷地内薬局「ただし書き」撤廃でも、「新規開局に限定を」

【2025.12.06配信】日本チェーンドラッグストア協会は12月5日に定例会見を開き、調剤報酬改定への要望を説明した。敷地内薬局について、施設基準において「ただし、当該保険薬局の所在する建物内に診療所が所在している場合を除く」という「ただし書き」を削除すべきとの意見が出ていることに対し、撤廃でされたとしても新規開局に限定すべきといった要望を表明した。


ランキング


>>総合人気ランキング