敷地内薬局について
敷地内薬局のテーマについては、スギ薬局杉浦氏が自社で3店舗あり、反対ではないからこそやってきたことに触れた上で、「ただし鳴り物入りで決まったものであることを踏まえる必要がある」との言葉を添えた。患者、医療機関を含め関係者から支持の得られるような価値を提供できるかが重要との視点を示した。
中部薬品の佐口氏は、「法律を遵守した形であれば問題ない」との見解を示した上で、「先端的な薬局を生み出し、専門薬剤師を育成できるなら1つの形態として良しではないか」と述べた。「念頭に置いているのは国民・患者にとってどうかというシンプルな発想だ」ともした。
愛知県薬剤師会の岩月氏は、医療保険などの観点から問題を指摘。「医療は相互扶助だ。敷地内薬局では(家賃等)かなりの金額が提示されており、その費用が回収できるほどの関係性があるのかと思われた段階で私はダメだと思っている。処方が間違っていたら間違っていると言ってくれるのかと患者さんが不信感を持ったら、その時点でダメ。医薬分業全体がそう思われる。そうならないためには誘致する側・出店する側も透明にしなければいけない。責任がとれる独立性を私たちは担保しなければいけない」と述べた。
調剤業務の一部外部委託について
外部委託については杉浦氏は「1つの拠点で責任を持つという考えはその通り。一方でその労力・安全性・経済性などの観点でほかで行っても担保できるのであれば、責任を決めた上でやっていければいいのではないか」と指摘した。
佐口氏は「安全と責任が明確化できればアリだと思っている」とし、「薬剤師が休息している夜間に自動的にお薬がつくられているのはよい。ただし提供する時に情報や真心を添えることは重要」と述べた。「雇用問題については影響が大きいため徐々に変えていく方がいい」とした。
岩月氏は、2点を指摘。1つ目は対物を充実させるために情報の交換があるという視点。「正確で個別化した調剤をするためには事前に患者さんの情報のやりとりをしなければいけない」とした。2つ目は記録と責任の明確化。「開封した人・保存状況など、記録と責任の所在の明確化の議論が不可欠」とした。
チェーン薬局と地域の薬局が連携を強めていくためにはどのような方策があるか
今後、チェーン薬局と地域の薬局が連携を強めていくためにはどのような方策があるかについては、杉浦氏は「多職種連携において当たり前のように言われる“顔の見える関係”を創ることが大切であり、お互いの立場を理解し、普段から話せる関係になれることが大切ではないか」と語った。
佐口氏は「連携をしなければ、地域住民や患者を救えない事象に直面した時、本当の連携が生まれる。そのためには、日ごろから、患者第一の理念を薬剤師同士で共有することが重要である」と指摘した。
岩月氏は「地域の医薬品提供に係るニーズを把握し、それぞれの個店薬局やチェーン薬局が持つ機能や特性をお互いに理解したうえで、役割分担を考えることが重要。夜間や休日対応、医薬品の融通等々、全国一律ではなく地域の実情を鑑みた薬剤師免許保持者同士としての意見交換の場が必要」とした。
愛知県薬剤師会会長・岩月進氏:
調剤業務の一部外部委託に関しては一般的に「対人業務」の充実が目的とされる中、岩月氏は「対物業務を充実させるため」に情報の交換があるという視点を提示した
スギ薬局副社長の杉浦伸哉氏:
自身も愛知県薬剤師会の理事である杉浦氏は、チェーン薬局と地域の薬局が連携を強めていく方策について、「多職種連携において当たり前のように言われる“顔の見える関係”を創ることが大切であり、お互いの立場を理解し、普段から話せる関係になれることが大切ではないか」と語った
中部薬品代表取締役専務の佐口弥氏:
チェーン薬局と地域の薬局が連携を強めていくことについて「連携をしなければ、地域住民や患者を救えない事象に直面した時、本当の連携が生まれる」と、その重要性を指摘した
後半には企業説明会も/地域密着薬局からの参加はなし
後半の企業説明会では地域の薬局に無料での参加を募集したが、地域の薬局からの参加はなかった。
スギ薬局は、杉浦伸哉氏が愛知県薬剤師会の理事であり、「まだまだお叱りを受けるレベルかと思うが、今後も関わっていきたい」とした。その上で、グループの活動に関しては、スギメディカルで他職種との関係性をつくっていく事業を行っているとした。それによりスギ薬局の企業価値の向上ももちろんだが、地域の薬局とともに地域をつくっていきたいという思いも込めているとした。
中部薬品では同社店舗の処方箋枚数平均が68枚/日、薬剤師数が4人/店であるとし、医療情報検索サービスによるドラッグストア平均の同23枚、同1.7人よりも多いとした。店舗当たりの薬剤師が多いため、「希望による休暇」が取りやすい体制にもつながっているとした。そのほか有休で年間14日を最低休むことを徹底しているとした。「休みを取ることが薬剤師が生き生きと働くために重要と考えている企業だ」と説明した。