【零売】“医師の処方あり”以外に“保健衛生が脅かされる事態”を条件に/厚労省議論まとめ案

【零売】“医師の処方あり”以外に“保健衛生が脅かされる事態”を条件に/厚労省議論まとめ案

【2023.09.04配信】厚生労働省は9月4日、「第8回医薬品の販売制度に関する検討会」を開催し、これまでの議論のまとめとして「議論のまとめについて(案)」を提示した。この中で、「処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売のあり方」、いわゆる零売については、“医師の処方あり”以外に“保健衛生が脅かされる事態”を条件にする方向を示した。


 まとめ案では、「(1)医薬品販売区分及び販売方法の見直し」の中の、「①処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売のあり方」について、「やむを得ない」場合を規定する方向を示した。
 【医療用医薬品は、医療において医師の処方箋や指示により使用されることを前提として承認された医薬品であるため、一般の者の需要に応じて医師の診断を経ずに販売されると、医薬品の適正使用が十分に確保されないおそれがある。医療用医薬品の役割及び規制の実効性に鑑み、医療用医薬品については処方箋に基づく販売を基本とした上で、リスクの高い医療用医薬品(従来の「処方箋医薬品」)を除き、例外的に「やむを得ない場合」に薬局での販売を認めることとして法令上規定してはどうか】と記載した。

 「医療用医薬品」については法令上規定がなかったため、【「医療用医薬品」の定義を法令上明記すること等としてはどうか】ともした。

 「やむを得ない場合」については、以下の条件を具体案として示した。
(1)次の①、②をいずれも満たす場合
①医師に処方され服用している医療用医薬品が不測の事態で患者の手元にない状況となり、かつ、診療を受けられない場合
②OTC医薬品で代用できない、もしくは、代用可能と考えられるOTC医薬品が容易に入手できない場合(例えば、当該薬局及び近隣の薬局等において在庫がない等)
(2)社会情勢の影響による物流の停滞・混乱や疾病の急激な流行拡大に伴う需要の急増等により保健衛生が脅かされる事態となり、薬局において医療用医薬品を適切に販売することが国民の身体・生命・健康の保護に必要である場合

 さらに上記「やむを得ない場合」における販売に当たっては、次の要件を課すことを想定する。
(1)原則として継続して処方箋を応需する等、当該患者の状況を把握している薬局が販売すること(旅行先等通常利用している薬局の利用が難しい場合等の例外的な場合を除く。なお、例外的な場合に販売を行う薬局は、通常利用している薬局(必要となった医薬品を調剤した薬局)に連絡を取り、連携を図ること)。
(2)一時的に(反復・継続的に販売しない)、最小限度の量(事象発生時には休診日等で行けない、当該疾患で通常受診している医療機関に受診するまでの間に必要な分、最大で数日分等)に限り販売すること。
(3)適正な販売のために購入者の氏名、販売の状況等を記録すること。

 そのほか、次のような留意事項も示した。

 (1)の場合は受診している医療機関に情報提供すること。

 ○上記の要件に基づく販売は、処方箋の継続的な応需等、薬局が患者との関係性に基づいて対応する業務であり、一般消費者向けに医療用医薬品が販
売可能である点を薬局の特色として強調する内容の広告については不適切であることから、やむを得ない場合の医療用医薬品の販売を行うことに関する広告は制限すべき。

○現在は処方箋医薬品に指定されていない医療用医薬品のうち、用途等により副作用のリスクが高いもの等一部品目については、個別にリスクを分析・評価した上で、リスクの高い医療用(従来の「処方箋医薬品」)として分類を見直すことについて検討する必要がある。

編集部コメント/コロナ禍の医療用アセトアミノフェン供給の役割は“維持”

 前回の「やむを得ない場合」の記述では、コロナ禍で零売が機能を果たした医療用アセトアミノフェンの供給が妨げられることになるのではないか、との指摘が出ていた。
 今回の案では(1)以外に(2)を追加。物流の停滞・混乱や疾病の急激な流行拡大など、「保健衛生が脅かされる事態」についても零売は認められるとの方針を示したことで、“コロナ禍のアセトアミノフェン”供給などの事例は維持されたといえるだろう。

この記事のライター

関連するキーワード


零売

関連する投稿


【日本薬剤師会山本会長】零売の議論、「落ち着いて対応を」

【日本薬剤師会山本会長】零売の議論、「落ち着いて対応を」

【2023.09.16配信】日本薬剤師会は9月16日、都道府県会長協議会を開催した。


【零売】「医師からの処方」ありを前提に、“紛失”など対象に/「やむを得ない場合」を法令規定へ

【零売】「医師からの処方」ありを前提に、“紛失”など対象に/「やむを得ない場合」を法令規定へ

【2023.08.04配信】厚生労働省は8月4日、「第7回医薬品の販売制度に関する検討会」を開催し、「処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売」、いわゆる零売の追加論点を議論した。事務局は資料で、「やむを得ない場合」について法令で位置づける方向を示した。やむを得ない場合については、「①医師に処方され服用している医療用医薬品が不測の事態で患者の手元にない状況となり、かつ、診療を受けられない場合」であり、かつ、「②一般用医薬品で代用できない、もしくは、代用可能と代用可能と考えられる一般用医薬品が容易に入手できない場合(例えば、当該薬局及び近隣の薬局等において在庫がない等)」を要件とすることを提示した。


【零売】日薬山本会長、「規制するか否かの議論は本質を見誤っている」/総会会長演述で

【零売】日薬山本会長、「規制するか否かの議論は本質を見誤っている」/総会会長演述で

【2023.06.24配信】日本薬剤師会は6月24日に定時総会を開いた。その中の会長演述で、山本信夫氏は零売の問題に触れた。厚労省の医薬品販売制度に関する検討会について、「闇雲にいわゆる零売を規制するか否かという議論は本質を見誤ったものと言わざるを得ません」と述べ、零売そのものの規制は望ましくないとの意向をにじませた。販売方法についての局長通知に準拠していない販売をまずは指導すべきとの意向も示唆し、「準拠せずに販売することを放置」していると問題提起している。さらに政策提言の“共用薬”について触れた上で、「必要以上の規制が設けられるような事態とならぬよう」、「積極的に意見を主張していかなくてはなりません」と述べた。


【日本薬剤師会総会】不適切な零売、今年度中にも対応へ/岩月常務理事「来年という話ではない」

【日本薬剤師会総会】不適切な零売、今年度中にも対応へ/岩月常務理事「来年という話ではない」

【2022.06.27配信】日本薬剤師会は6月25・26日の両日に第100回定時総会を開いた。この中で26日の一般質問で、零売に関する質疑があった。


【埼玉県薬剤師会青年部】日本零売薬局協会理事長の服部雄太氏招きZOOM意見交換会

【埼玉県薬剤師会青年部】日本零売薬局協会理事長の服部雄太氏招きZOOM意見交換会

【2021.09.16配信】埼玉県薬剤師会青年部は9月10日、零売専門薬局「セルフケア薬局」の展開で話題となっている日本零売薬局協会理事長でGOOD AID株式会社代表取締役薬剤師の服部雄太氏を招き、ZOOMで意見交換をした。「近隣の医療機関とはどのように関係性を構築しているのか」「人口が多くはないところに需要はあるのか」「副作用救済制度との関係は」など、参加した若い世代の薬剤師からは活発な質問が出た。(サムネイル画像は埼玉県薬剤師会のブログよりhttps://ameblo.jp/spakaicho/entry-12697286545.html)


最新の投稿


【厚労省】“研究用”抗原検査キット、薬機法で取り締まりの方向/該当性判断の上

【厚労省】“研究用”抗原検査キット、薬機法で取り締まりの方向/該当性判断の上

【2024.07.25配信】厚生労働省は7月25日に「厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会」を開催し、体外診断用医薬品の特性を踏まえた制度の見直しについて議論した。その中で「研究等の医療以外の用途を標榜する試薬の提供業者への対応」を議題とした。


【日薬】オーバードーズ問題でマニュアル作成を検討中

【日薬】オーバードーズ問題でマニュアル作成を検討中

【2024.07.24配信】日本薬剤師会は7月24日、都道府県会長協議会を開催した。


【厚労省】処方箋保存期間の検討を提示/薬局検討会

【厚労省】処方箋保存期間の検討を提示/薬局検討会

【2024.07.19配信】厚生労働省は、現在3年間となっている処方箋の保存期間について見直す方針を示した。「第7回薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会」で提示した。診療録の保存期間が5年となっている中、電子処方箋については処方箋を調剤済みとなった日から5年間保存するサービスを提供しているなどの環境変化を挙げている。今後、制度部会で議題とする方針。


【コンソーシアム】大阪市から調剤外部委託で4社8薬局が確認通知受領を公表

【コンソーシアム】大阪市から調剤外部委託で4社8薬局が確認通知受領を公表

【2024.07.19配信】薬局DX推進コンソーシアムは7月19日、大阪市から調剤業務一部委託事業の確認通知を受け取ったと公表した。


【日本保険薬局協会】健康サポート薬局と地域連携薬局「違いない」/厚労省検討会に意見書

【日本保険薬局協会】健康サポート薬局と地域連携薬局「違いない」/厚労省検討会に意見書

【2024.07.19配信】日本保険薬局協会は7月19日に開かれた厚労省「第7回 薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会」で意見書を提出した。「健康サポート薬局、地域連携薬局、地域支援体制加算届出薬局が描く薬局像は、小異こそあれ、分立させるほどの違いはない」とした。


ランキング


>>総合人気ランキング