大阪府薬は、意見書の中で「女性にとって望まない妊娠を防ぐことは、自分自身を守る権利である」として、「その手段の一つとして心身ともに負担の少ない緊急避妊薬のOTC化には賛成である」と記載。賛成の立場を明確にした。
受け皿となる薬局の現状については、「薬局では2020年よりオンライン診療における調剤にはすでに実績があり、スイッチOTC医薬品を扱う素地は十分である」との認識を示した。
薬剤師による対面販売体制の維持を求める
一方で、さらなる体制整備の必要性も指摘した。背景には、現状はオンライ診療が前提となっており、スイッチOTC化によって「薬剤師の責任の質が変わる」ことを挙げた。
具体的には女性にDVなどの際の連絡先を確実に情報提供することや、薬剤師の対面販売体制の維持などが必要だとした。医薬品のリスク区分に関しても、変更しない必要があるとした。
詳細は以下の3つを記載した。
1、医薬品の副作用・相互作用、精神的ケア、避妊の成否など当該女性自身では、判断・対応できないことが多いため、販売後のフォローアップ、産婦人科への受診勧奨、事故やDVの際の連絡先を薬剤師が確実に情報提供する体制
2、入手が簡便になることによる悪用や乱用を防止する観点から、適切な知識・情報を会得した薬剤師の対面販売体制の継続(今までのスイッチOTC化医薬品のように薬剤師が介在しないリスク区分への変更について反対する)
3、若年層の使用も想定されることから、確実な避妊方法を含めた教育のさらなる徹底の強化体制
編集部コメント
「薬剤師による対面販売の維持」などの意見は、受け止め方によっては薬剤師の既得権益維持の意見と指摘する声もあるかもしれない。あるいは、女性が自分のことを自分で決められる権利の視点からは、アクセスの妨げになるという意見もあるかもしれない。しかし、スイッチ検討会議でも性教育の現状や各国に比して特異的な我が国の避妊方法の状況について触れられてきたように、我が国の女性の中の知識には濃淡があることが想定され、それを医療界が心配していることは本音でもあるのではないだろうか。こうした中にあっては、知識が豊富である人、そうでない人の双方の安全安心に配慮した制度設計が、ステップとしては我が国では現実的であると指摘できる。大阪府薬の意見は、まさにそういった女性層の中の“困難な状況”にいる女性も取り残してはいけないという意識に基づいているのではないだろうか。
いずれにせよ、スイッチOTC化となれば薬局薬剤師は受け皿となるにもかかわらず、当該の薬局薬剤師が「どう考えているのか」の情報発信が多いとはいえないことは心許ない。その中で、大阪府薬の意見表明には社会的な立ち位置への意識の高さを感じる。そして、その意識は今後の災害時、感染症蔓延時、医療計画など、薬局・薬剤師の存在感の全てにつながっていくものではないだろか。