日薬フォローアップ手引き、対象例に認知機能衰えやハイリスク薬

日薬フォローアップ手引き、対象例に認知機能衰えやハイリスク薬

【2020.07.20配信】日本薬剤師会は「薬剤使用期間中の患者フォローアップの手引き(第 1.0 版)」を策定し、都道府県薬剤師会長宛に通知した。どのような患者がフォローアップの対象になるのか、これまで分かりづらい面もあった。手引きでは、あくまで患者ごと、薬剤師の専門的判断によるとしつつも、フォローアップに留意する要素として、認知機能の低下で飲み忘れに懸念があるケースやハイリスク薬など副作用の発現に継続的に注意すべきなどのケースを挙げている。薬機法改正に対応したものではあるが、調剤料などの対物報酬が逓減していく中、対人業務の拡充の方途として、フォローアップを重視していく必要があるとの意向ものぞく。


【2020.07.20配信】
 日本薬剤師会は「薬剤使用期間中の患者フォローアップの手引き(第 1.0 版)」を策定し、都道府県薬剤師会長宛に通知した。
 どのような患者がフォローアップの対象になるのか等、これまで分かりづらい面もあった。手引きでは、あくまで患者ごと、薬剤師の専門的判断によるとしつつも、フォローアップに留意する要素として、認知機能の低下で飲み忘れに懸念があるケースやハイリスク薬など副作用の発現に継続的に注意すべきなどのケースを挙げている。
 薬機法改正に対応したものではあるが、調剤料などの対物報酬が逓減していく中、対人業務の拡充の方途として、フォローアップを重視していく必要があるとの意向ものぞく。

 今般の薬機法法改正で、「患者の当該薬剤の使用の状況を継続的かつ的確な把握」が義務化された。日本薬剤師会は、服薬フォローはこれまでの調剤指針にもあった概念としながらも、「現在の取り組みにおけるある種の曖昧さや個々の薬剤師の資質による差についての指摘があったことは否めない」として、手引き作成の背景を説明している。
 

患者例としてハイリスク薬服用者

 フォローアップを「検討する上での要素」として、以下を挙げている。
 使用薬(ハイリスク薬 他)
 併用薬(要指導医薬品、一般用医薬品、医薬部外品を含む)
 積極的に摂取している食品や嗜好品(健康食品、酒・タバコ 他)
 アレルギー歴(医薬品、食品 他)、副作用歴
 疾患(原疾患、既往歴、合併症及び他科受診で加療中の疾患を含む)
 臨床検査値(腎機能、肝機能 他)
 薬剤等の使用状況(残薬の状況を含む)
 薬剤使用中の体調の変化
 年齢・性別
 ⾝⻑・体重
 妊娠・授乳状況(女性)
 職業
 生活の特性
 患者特性(薬識・認識力、生活機能 他) 等

 また、「注意を要すると考えられる患者例」として、以下を挙げた。
・薬剤が適切に使用されていることを、次回来局時まで継続して確認しておく必要があると考えられる場合。(例:治療有効域が狭い(あるいは有効域と中毒域が接近している)薬剤で、患者の生活環境から飲み忘れ等の懸念がある。治療において⻑期的なアドヒアランス維持が重要となる薬剤で、認知機能の低下から飲み忘れ等が頻繁に発生する懸念がある、身体機能の低下からデバイスが正しく扱えることに継続して注意する必要がある。等)
・患者の身体状態から、副作用の発現等に継続的に注意する必要があると考えられる場合。(例:腎機能の影響を受ける薬剤で、原疾患・合併症等から副作用の発現に特に注意を要する。特定の要素において副作用の発現頻度が増すことが知られている薬剤であり、今後の状態の変化に注意を要する。抗悪性腫瘍剤など、初回投薬時においては特に注意を要し、またその後も患者の身体状態等から継続的に副作用の発現に注意を要する。等)
・患者の生活習慣、生活像に係る情報等を踏まえ、定期的な状況の確認が必要な場合。(看護人・介護人や患者の生活環境の変化により、薬物療法の継続に問題が生じないか確認する必要がある。等)
これらを踏まえて検討した上で、薬学的知見に基づき実施する患者フォローアップ内容について患者等に説明し、理解を得るとともに連絡先を確認する。

確認手法はICTも選択肢に

 患者への確認方法としては、「一般的に、患者等に確認を行う手段としては、対面(来局・訪問)のほか、電話やファックス等が挙げられる」としつつも、「最近では、電子お薬手帳や SNS など ICTの活用も進んでいる」とICTの活用も選択肢にしている。
 あくまで、確認方法の選択では、「目的に照らして適当か」「双方向性が維持されているか」が重要としている。
 ⻑期的なアドヒアランス維持が中心である場合には、ICTの活用(「忘れずに服用できていますか?」「使用する上で問題等はありませんか?」といったメッセージを患者等の端末に発信し、患者等から回答を得る等)も選択肢として考えられるとしている。

患者や疾病、使用薬剤の特性に合わせて判断を

 上記のような事例は示しつつも、① 個々の患者の特性、② 罹患している疾病の特性、③ 当該使用薬剤の特性に合わせて、適切に患者フォローアップを行うことが重要であることはいうまでもない。
 手引きでも、総合的な判断が必要と指摘しており、「例えば、ハイリスク薬に該当するといった情報のみに基づいて機械的・一律に判断するものではないことに留意する」とする。

 また、患者への説明方法に関しても懸念を示しており、「法律で決まった、実施するよう指導された等の非本質的な説明は薬剤師としての責務を放棄し、信頼を失墜させる行為であるので厳に慎むこと」と念を押している。

 手引きではそのほか、「患者当への確認事項の例」、「分析と評価」、「結果と対応」、「記録」、「処方箋医薬品以外の医療用医薬品、薬局製造販売医薬品、要指導医薬品、一般用
医薬品を販売する場合の販売後フォローアップの考え方」などもまとめている。

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